57.戦力確保!
こっちからの依頼事項ってことで、ギルドの受付に行くと、
「あら、ラヤちゃん。丁度お願いしたい討伐案件があってね」
予想外だったけど、逆に私の方が依頼を持ち掛けられたよ。
「何でしょう?」
「北の森に、今度は大トラ魔獣が現れてね。討伐賞金は七千万Venだけど」
「明日ならできます。ただ、移動手段がありませんが」
「それは、こっちで手配するわ」
「分かりました。それで、ちょっと私の方からもお願いがありまして」
「何かしら?」
「置かせていただいたビラにも書いてありますけど、ギルドの前の道を南下して、丁度町を外れたところで来週から医院を開きます。重傷者を一件当たり一万Venで受け付けますので」
「そんなに安く?」
治療費の安さに驚いていたよ。
普通は、重傷者を治すんだったら、明らかに桁が違うもんね。
「はい。木曜と日曜は休業ですが、それ以外は受け付けていますので、是非、私のところに回していただければと思いまして」
「それは助かるわね。分かりました。承っておきます」
「よろしくお願いします。木曜と日曜は、もし、家の方にいれば急患は受付可能ですけど、いない場合もありますので」
「了解しました。それじゃ、明日は何時頃来られます?」
「九時くらいでイイですか?」
「分かりました。では、明日、改めてお待ちしております」
「それと、一昨日、ワイバーンを一匹倒したんですけど」
「討伐場所は、どちらになりますでしょうか?」
「ヘパイストス村です」
「分かりました」
「一応、こちらで査定できるかと思って持ってきました。ここに出してもよろしいでしょうか?」
「お願いします」
私は、アイテムボックスからワイバーンの死体を取り出した。
例によって、身体の方を出すのは一人じゃムリなんで、近くにいたスタッフに手伝ってもらったけどね。
「これになりますが」
「では、査定致します」
「ただ、今日はこれから用事がありまして……」
「それなら、明日の朝に査定結果も報告します」
「そうしていただけると有難いです。では、よろしくお願いします」
これで、ギルドの方で予定していた仕事を終了!
私は受付の方に会釈をすると、ギルドを出て行った。
そして、フルフラールのところへ。
何故かまだフランもいたけど。
「お待たせしました。じゃあ、行きましょうか」
「はい」
すると、フランが、
「じゃあ、俺が転移魔法で連れてってやるよ」
と言ってくれたんだけど、多分、昼食狙いな気がする。
別にイイけど。
「それじゃ、よろしくお願いします」
「了解!」
それにしても、行きがフユミの転移魔法で帰りがフランの転移魔法か。
移動時間が短縮されて、むしろラッキーと思うようにしよう。
そして、転移終了。
私の家の目の前に出てくれてありがとう。
ただ、私の家の両脇に、一昨日には無かった建物が建っていたからだと思う。フランが驚きの余り固まっていた。
それから、フユミの薬屋の小屋もだね。
「一昨日来た時は、こんなに建ってなかったけど?」
「ええと、この小屋がフユミさんの薬屋です」
「一昨日、ラヤちゃんと一緒にいた人の?」
すると、これを聞いてフルフラールが、
「フユミさんって、あの超S級薬師って言われる人?」
なんか目を輝かせていたよ。
「多分、そうだと思います。来週から店をこっちに移転するので」
「そうだったんですね。でも、フユミさんって格好イイですよね。治せなかった患者には絶対に薬代を請求しないって噂ですし、能力が高いだけじゃなくて、筋が一本通っているって言うか。なので、私の友達にも憧れている人が多いんです!」
へー。結構、ファンがいたんだね。
知らなかったよ。
たしかに元研究者だし、一般女性とは違った雰囲気があるよね。
でも、フルフラールは、この町に住んでいるわけじゃないし、その友達も、当然、この町の住人じゃないよね?
だとすると、そう言った話が地方まで伝わっているってことか。
それはそれで、スター的存在なんだね。
一方のフランだけど、
「あと、ラヤちゃんちの両脇のって何?」
って私に聞いて来たんだけど、身体は、まだ半分硬直しているっぽかった。
「両方テナントです。北側のテナントでは、将来的には家具屋でもやろうかなって思ってまして」
「家具屋?」
「はい。私の家のテーブルとか椅子とかも、全部魔法で出していますし」
「そうだったんだ!」
「あと、南側のが飲食店用です。やっぱり、一階のリビングダイニングを食堂として開放するのはセキュリティ上、マズいかなって思って、別の棟にしました」
「ええと、これらの建物もラヤちゃんが?」
「はい。それで、午後、役所の方が査定に来ます」
「それで役所に行っていたってことか」
今度は、これを聞いてフルフラールがフランに、
「ねえ、お兄ちゃん。話が全然見えないんだけど?」
って聞いたよ。
たしかに、私のバックグラウンドを知らないと想像し難い内容かも。
「つまりだな。この真ん中の家がラヤちゃんの家な」
「この大きいのが?」
「そう。この家も、この薬屋の小屋も、両脇のテナントも全部、ラヤちゃんが魔法で作り出したってこと」
「えっ?」
「しかも、一昨日俺達が来た時は、この小屋も両脇のテナントも無かったんだよ」
「それじゃ、一日かそこらで造ったってこと?」
「いや、もっと短いんじゃないかな。この家を建てたのだって数分って話だったし」
「へっ?」
今度はフルフラールが固まったよ。
ようやく状況が飲み込めたみたいだけど……。
一先ず私は、
「一旦、中に入って」
医院の方の扉を開けると、フランとフルフラールを待合室へと通した。
ちなみに、こっちの扉は、医院の開業時間帯は鍵魔法の対象外になる。
でないと患者が入って来られないからね。
そう言えば、一昨日来た時には、フランには、こっちは見せていなかったっけ。
フランは、
「へー。こうなっていたんだ」
と声に出していたよ。
早速、私はフルフラールに受付の方に入ってもらった。
色々と説明しなきゃならないからね。
その上で出来そうかどうか、考えてもらわないと。
「この椅子に座って患者の受付をしてもらうのと、カルテの出し入れ、それから患者さんからの支払い対応もお願いするけど」
「分かりました」
「それから診察券の発行とか……」
要は、バージェス世界でナツミがやっていたのと同じことをフルフラールにもやってもらうってこと。
フルフラールには、色々分からないことだらけだと思うけど、でも、最初から大忙しってことは無いと思うから。
一通りフルフラールに説明した後、私は二人を一階のリビングダイニングに通した。
この時、一番喜んでいたのは何気にフランだったけどね。
そして、テーブルに着くと、フランは、
「もしかして、お昼ご飯かな?」
と言いやがった。
そうです。ご名答!
大体、こう言って来るだろうと予想はしていたけどさ。
「何か食べたいものはあります?」
「じゃあ、この間、アクリジンが食べてたパスタ。あれを食べてみたい」
「フルフラールさんは?」
「ええと、何があるのでしょうか?」
「好き嫌いとかあはあります?」
「特にありません」
「じゃあ、一先ず、全員、パスタにしましょう。出ろ!」
私は、テーブルの上に三人分のパスタを出した。
トマトソースのヤツね。
それから、フォークも。
これを見て、フルフラールは、再び全身を硬直させていたよ。
「ええと、大丈夫?」
こう私が声をかけると、フルフラールは、ハッと気が付いた感じになって、
「ハンター適正に治癒魔法、建築に料理って。こんなムチャクチャなマルチスキル、見たことありません!」
と大きな声を張り上げたよ。
余程、驚いたんだね。
「なので、医院をやりながら昼には食堂、それから様子を見て余力があったら家具屋とかやろうかなって思って……」
「あとは、どうやって集客するかですね?」
「なので、ギルドにも医院の方のビラを置かせてもらったし、大怪我をしたハンターを回してもらうようにお願いしてきたんですよ」
「そうだったんですね。でも、もしかして、お兄ちゃんがラヤちゃん狙いなのって、この魔力が目当てなんじゃない? ヒモ生活を送りたいとか」
こう妹に言われてフランは、
「別にヒモ生活なんて……」
否定はしていたけど、なんか歯切れが悪かったよ。
多分、半分狙っていたんじゃないかな、ヒモ生活。
それは、さて置き、フルフラールには、追々メニューを色々と覚えてもらわないとならない。
それ以前に、働いてもらえるかどうかが先だけど。
「先ず、フルフラールさんに、私のところで働くつもりがあるかを再確認したいんですけど?」
「是非、やらせていただきます!」
「ありがとう。それと、フルフラールさんには賄いで昼食を出しますけど、基本的に夕飯も賄いとして出そうと思ってます」
「イイんですか? でも、その分、給料から引かれたりしません?」
「しませんってば。食堂の方は、少し遅れて開店するつもりです。先ず、医院の方に慣れてもらって、それから食堂の方も、どんなメニューにするかを決めて、それからです。あと、実際に店で出すモノを食べていないとお客さんに説明できないでしょうから」
ナツミは元々地球人だったから、私のメニューを普通に説明できたけど、フルフラールは地球人じゃないからね。
一応、教育が必要なんだよ。
「それで、実際に食べて味を知ってもらうってことですか?」
「そうです。それと、私とフユミさんだけじゃ、この町の人達の趣味が分からないので」
「もしかして、フユミさんも一緒に食堂もやるんですか?」
「はい。ここに一緒に住んでいただく交換条件ってことで」
「ここに住まわれてるんですか!」
「そうですけど」
「うわー。凄い!」
タダで賄いが食べられることよりも喜んでいるよ。
余程、フユミへのリスペクトが強いんだね。
「ただ、私が出せるのは、私の故郷の食べ物だけなので」
「どこの国出身ですか?」
「ええとね。異世界出身で」
「またまた冗談を」
「本当なのよ。信じられなければ、それで構わないけど。それで、私には、この世界の人達の好みを完全には把握できないから、フルフラールさんにもメニューとか、何を主体とした食堂にするかを決めるのに入っていただきたいんです」
「それって、店の方針を決める作業ってことですよね?」
「そうです」
「そんなところに私が入ってもイイんですか?」
「是非お願いします。あと、住むところなんだけど、ここに住み込みは可能ですか?」
「でも、住み込みまでさせていただいてイイんですか?」
「二階に三部屋余ってますので。もし住み込みされるのでしたら朝食も出します」
「喜んで住まわせていただきます!」
「ただ、急患が来た時の受付とかもお願いするけど」
「分かりました」
一先ず、これで戦力を確保できた。
フユミが帰ってきたら説明しないとだね。
少しして、
「ピンポーン!」
呼び鈴が鳴った。役所の査定の人が来たみたいだ。
「フランさんとフルフラールさんにも、ちょっと同行をお願いできますか?」
「イイけど、何で?」
「役所の査定ですけど、それが終わったら、すぐに支払い手続きに役所に行きたいんです。それで……」
「俺の転移魔法を使いたいってことか?」
「済みませんけど」
「その代わり、夕飯も食わせてくれ!」
「はいはい」
でも、タダで昼食も食べさせたんだけどなぁ。
まあ、イイか。
「はーい」
私が家の扉を開けると、たしかに、そこには先日、家の査定をしてくれた役所の方が来ていた。
「ラヤさん、またですか?」
「はい。またです」
「物件は、この家の北側と南側の二つと言うことでよろしいですね?」
「はい」
「それと、小屋を建てられたんですね?」
「それも、何か手続きが必要でしょうか?」
「いいえ。ただ、こんな短期間で、これだけ建てたことに純粋に驚いているだけです」
「そうですか」
「では、査定をします」
「よろしくお願いします」
その役所の方は、前回と同じように右手を水平に上げて目を閉じると、何やらブツブツ言い出したよ。
魔法で計測しているわけだけど。
査定は、各五分くらい。
合わせて十分くらいで終わったっぽい。
「ええと、北側が三百十平方メートル、南側が三百二十二平方メートルですね。小数点以下は、それぞれ繰り上げになります。ですので、登録料は合計で三千百六十万Venになります。では、査定証明書と登録用書類を渡しますので、これを持って役所の方で手続きしてください。それから手続き費用として、それぞれ一万Venが別途かかりますので、合計で三千百六十二万Venをご用意ください」
そして、カバンの中から書類を出すと、前回同様、何やらペンで記入して、それを私に差し出した。
私は、それを受け取ると、急いでアイテムボックスに収納した。
無くすと困るもんね。




