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閑話2:最凶魔法が見たい!

 医院を開設して間もない頃だ。


「ねえねえ、これやらない?」


 そう私達に言いながら、ハルがトランプを持って来た。割とデザインが綺麗なんで、昨日、ハルが衝動買いしたやつだ。


 ただ、地球のトランプとはちょっと違う。

 各スート(マーク)のカードが1から13まであるのは同じなんだけど、スートが四種類じゃなく六種類あるんだ。

 スートは強い順に、黒、白、緑、赤、青、黄色。

 これは、黒龍、白龍、緑龍、紅龍、青龍、黄龍を指しているらしい。



 ただ、六体の龍には、本来、順列も優劣も無いらしい。この順列は、飽くまでもトランプをやる上で、人々が便宜的に決めたルールみたいなんだけどね。


 でも、多分、黄龍は怒っているだろうな。

 自分が最弱って勝手に言われているんだもん。



 それから、ジョーカーが二枚入っていた。そのうち一枚には、神々しく光り輝く龍の絵が描かれていた。

 当然、光龍の意味ね。


 実際には龍の姿じゃなくて、屈託のない少女の姿をしているんだけどね。

 その正体はハルだからさ。



 一方の、もう一枚のジョーカーなんだけど、これには赤黒くて邪悪な雰囲気に満ちた龍の絵が描かれていた。

 多分、このカードを作成した人がイメージした闇龍なんだろう。

 実際にはドピンクの大蛇だったけどね。



 あと、トランプのケースの中に同梱されていた解説の中には、黒龍、白龍、緑龍、紅龍、青龍、黄龍のことを六大龍王って書かれていた。

 こんな呼び名もあるってことか。

 つまり、ハルは龍王の上の存在ってわけだね。



 でも、なんか矛盾を感じるなぁ。

 六大龍王もハルも闇龍も、遥か昔の誰かが創作した話で、それが、いつの間にか逸話となって人々に伝承されて行ったわけでしょ?


 そして、伝承されて行くうちに、人々の想いが実体化して、この世界にハル達が誕生したって前にハルが言っていたし。



 だったら、六大龍王の絵は分かるんだけど、光龍と闇龍の絵は違くない?

 光龍は少女で、闇龍はドピンクの大蛇だよ?


 どっちも、ここに描かれているような龍じゃないよ!

 まあ、この辺を突っ込んだところで無意味だってことは分かっているけどね。



「それで、何をやるの?」

 と私が聞くと、

「だから、トランプ」

 と答えるハル。


 するとナツミが、

「それは私もラヤも分かっているけど、七並べとかババ抜きとかナポレオンとか、色々なのがあるじゃない?」

 と言ったんだけど、ハルからの回答は、

「何それ?」

 だった。

 ええと……、こっちこそ意味が分からないんだけど?



「こっちの世界では、トランプでどう言った遊びをするの?」

 こう私が聞いたら、ハルが、

「カップリングとかシークエンス、それから四十七士」

 と答えた。

 全然意味が分からない。



「ええと、カップリングって?」

「こうやって、全部のカードを裏返して広げて、適当に二枚めくるの。それで、ペアになっていたら自分の取り分になって、もう一回できる」


 つまり、神経衰弱ってことか。

 ゲーム名が違うだけで、やることは地球もこっちも似たようなモノってことだね?

 ハルの説明が続く。


「それから、シークエンスは、最弱のカードが2で、最強が1。それで、最初にカードを出す人が一枚にするかペアにするか、同じマークで三枚以上の連続にするかを決めて……」


 これって、基本的に大貧民と一緒だね?

 ただ、最強カードが2じゃなくて1に変わっているけどね。


「あと、四十七士は、役が低い方から順に、ワンペア、ツーペア、スリーカード……」


 これはポーカーか!

 でも、何で四十七士って言うんだろ?


「それでね。最強の役が、同じマークで10、11、12、13、1を揃えることで、これを全部足すと47だから四十七士って言うらしいよ」


 そうなんだ。

 でも、私やナツミからすれば、四十七士って、どう考えても赤穂浪士なんだけどね。



 まあ、それは置いといて。

 もしかすると七並べとかババ抜きとかナポレオンも、名称が違うだけで、この世界にもあるかもしれないね。


「その三つは全部分かるよ。私やナツミがいた世界にも同じ遊びがあったから。それじゃあ、三人でカップリング(神経衰弱)……」


 って私が言うと、ナツミがイヤな顔をしていた。

 神経衰弱はやりたくないんだね。

 仕方が無いな。


「……じゃなくて、シークエンス(大貧民)でもやる?」


 すると、ハルからの回答は、

「カップリングがイイ!」

 とのこと。


 どうやら、ハルとナツミの趣味は完全に逆行しているようだ。

 ナツミの眉間には、より一層大きなしわが寄っているよ。



 結局、ハルに押し切られて三人で神経衰弱をやったけど、ハルの圧勝。

 私もナツミも全然カードが取れなかった。


 一応、ズルが出来ないようにトランプには透視とかをさせない魔法がかけられているって話なんだけど……。



 でも、それは普通の魔法使いに対する措置だもんね。光龍レベルの魔力には絶対に対応出来ていないでしょ!

 どう考えたって、人の魔法で光龍の魔力を押さえつけるなんて絶対に不可能だもん。

 多分、ハルは透視魔法を使っていたに違いないよ。


 …

 …

 …


 その翌日。

 この日は休院日。

 なので、私達は三人で久しぶりにハンター業に出た。要は、気分転換みたいなものだ。


 と言っても、休みは一日だけだから、日帰りで終わる仕事じゃないとマズいけどね。

 それで、私達は裏山に出る大蛇の退治依頼を受けて、すぐさま現場に急行した。勿論、移動手段はナツミの転移魔法だ。


 ちなみに、この依頼を取ってきたのもナツミね。

 でも、なんか大蛇って言うと闇龍を連想するな……。別にイイけど。



 現場に到着すると、私は探査魔法を発動した。

 すると、私達の百メートル後方に、それらしき生物を発見した。

 個体数は三体。


 私は、

「じゃあ、一人一体ずつ倒せばイイよね?」

 って二人に言ったんだけど、二人共、首を横に振った。


 そして、ナツミから一言。

「全部、ラヤにあげる」


 えっ?

 さらにハルからは、

「万が一、取り逃がしたら支援するけど、ここはラヤにお願いしたい」

 って言われた。

 マジで、これを全部私が一人でやるの?


 仕方が無い。

 私は、腹をくくって大蛇に近づいて行った。



 蛇は普通、音を立てると逃げるって言うけど、コイツ等は逆に近寄ってくるようだ。絶対に捕食する側でしかないって思っているんだろう。


 数分後に三体の大蛇と御対面。

 腹部の直径は一メートルにも達するよ。



 たしか、地球にも古代生物で、こんなのがいたって記憶しているけど。

 名前は、ティタノボアだったかな?


 なんか、この世界は異世界のくせに異世界っぽい魔物とか魔獣が少ないんだよね。

 巨大化したサーベルタイガーとか巨大化した熊とか、巨大化したワニガメとか。あと、トリケラトプスもいたっけ。

 翼竜がいるって聞いて、ワイバーンかと思ったらプテラノドンだったし。



 極々一部の例外を除いて、基本的に地球の生物の巨大化版とか、地球の古代生物ばっかりなんだよね?


 今回の大蛇も、地球の古代生物じゃない?

 別にイイけど。



 三体の大蛇が、一斉に私達に襲い掛かってきた。どう考えても、コイツ等からすれば私達は一口で飲み込める都合の良いエサだよね?

 しかも、三体分、数が揃っている。

 でもね。私は、コイツ等に負けないよ。


 だって、一言、

「死ね!」

 って私が唱えれば済む話だもん。

 殺人魔法は使えないけど、対象物が人じゃなければ使えるって分かったからね。



 この魔法を発動した直後、

「「「ぶちっ!」」」

 って音がしたかと思うと、三体の大蛇の首が飛んだ。


 この様子を見て、ハルが、

「ホントだ、凄い!」

 って言いながら、思い切り喜んでいたよ。



 頭を失って、三体の大蛇の胴体は踊り狂うかのように激しく動いていたけど、それも数分後には治まった。

 そして、この大蛇の死体をアイテムボックスに収納しようとしたんだけど、重くて私一人じゃ動かせなくてね。

 なので、そこはナツミとハルに手伝ってもらった。



 収納作業が終わると、ハルが私に、

「この魔法、見てみたかったんだ」

 と言って来た。


 続いてナツミからは、

「どんな魔法で闇龍を倒したか、ハルが気になっていてね。それで、三体ともラヤにお願いしたのよ」

 って言われた。



 そう言えば、闇龍の首を刎ねた時は、ハルは気を失っていたんだっけ。

 なので、ハルがこの魔法を見るのは、これが初めてってことか。


 ナツミは、エディアカラの世界で何回か見ているけど、ハルからすれば、一度でイイから最強状態の闇龍を一発で葬り去った強制魔法を、是非とも見ておきたかったってとこなんだろうね。

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