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12/202

12.三連発!

「この部屋になります」

「ありがとうございます」


 私は、ケイイチロウ導師長に診察室まで案内された。私の後ろには護衛のエミリアが付いている。

 それから言うのを忘れていたけど、エミリアは私の一つ年上らしい。


 それにしても、ここが私の診察室か。

 結構広いなぁ。


 一応、ベッドは二つ。

 診察とかに使う用ね。

 H用じゃないよ!


 緊急時には、複数人がこの部屋に一度に運び込まれることもあるだろうし、これくらいのスペースは必要って判断なんだろうね。


「ラヤさんに一つ聞いていいですか?」

 こう聞いたのはケイイチロウ導師長。


「何でしょう?」

「どうしてラヤって名前なのかなって思いまして」


 うーん……。そう思うのは導師長だけじゃないよ。

 実は、私もそう思ったもん。何の意味でラヤって付けたのかなって?


「この名前は地球時代の名前ではありませんし、私がつけた名前でもないんです。実を言いますと、私は最初、こことは別の世界に堕天使様の手によって堕天使側の救世主として降臨したんです」

「堕天使に様付けですか?」

「私が今の人生に切り替わるきっかけをお与えくださったのは、元を辿れば全て堕天使様ですので」

「そうでしたか」

「実は、その時に、その堕天使様がラヤと名付けてくださいました」

「それで、ラヤの意味を御存じですか?」

「いいえ」

「こっちの世界では単なる名前で通ると思いますが、地球ではRajah……つまり王を意味するんです」

「へっ?」


 そうだったのかぁ!

 知らなかったよ。

 ってことは、私は知らずに王様を名乗っていたってこと?

 何たる中二病。穴があったら入りたい気分。


「つまり、その堕天使は、ラヤさんを降臨させた世界の王にしようと考えていたのではないですか?」

「ええと……そうかも知れません。でも恥ずかしい名前ですね。知りませんでした」

「まあ、こっちではRajahと発音しても王様の意味はありませんから大丈夫です」

「それだけが救いです……。それで、私は、その世界で呆気なく戦死して、その世界の女神リニフローラ様に、この世界に転生して先ず一万人を救うことを課題として与えられたんです」

「そう言うことですか。では、早速……と言いますか、引き続き患者を診ていただきましょう。ここには、私とラヤさんを含めて五人の導師がいます」

「私も導師なんですか?」

「治癒魔法を持っているのですから、もう、そう言うことになっています」

「はぁ……」

「だいたい、午後でしたら患者は全部で二百人くらい来るでしょう。これまで導師の数は、輪番で常時最低二人、多くて三人で回していました。今日の午後はラヤさんが加わりましたので四人体制になります。ですので、五十人くらいの患者が来ると思っていただければと思います」

「分かりました」

「ちょっと症状の重い患者が多くなると思いますが、よろしくお願いします」

「はい」

「では、私も患者を診なければなりませんので、これで」


 そう言うと、導師長は私の部屋を後にした。

 多分、私みたいに治癒魔法だけ使っていればイイって立場じゃないんだろうな。管理職だろうからね。忙しいんだと思う。


 そして、ここから順次、患者が私の部屋に通されてくる。

 記念すべき王都での一人目の患者さんは……。


「君がラヤちゃんか。イリヤが言っていた通りカワイイ系美人だね」

 国王陛下様だったぁ!


「はじめまして。ラヤと申します」

「さっきは急患を診ていたのかね?」

「はい。お待たせして済みません」

「いやいや。今、転移魔法使いにお願いして連れて来てもらったばかりだ。特に待たされてはいないよ」

「そ……そうですか?」

「色々大変だとは思うが、よろしく頼むよ」

「は……はい」

「それで、実は、数週間前から鳩尾の脇が痛くてな。ウィルキンソン子爵も同じ症状だったのを治してもらったって聞いてな」

「分かりました。では、診察します」


 私は、早速国王陛下の全身をスキャンした。

 正直、いきなり国王陛下が相手って、私も驚いたし緊張したけどね。


 たしかに胃潰瘍だけど……。でも、それだけじゃない。もっと下の方に、別の疾患もあるよ。しかも、イヤなヤツ。

 ここは、正直に言うべきだろうな。


「疾患は二つあります。一つ目は、ウィルキンソン子爵様と同じ病気です」

「そうか。それならウィルキンソン子爵の前例もあるし、簡単に治してもらえそうだな」

「はい」

「で、二つ目とは?」

「このところ、夜中にトイレに行ったり、残尿感があったりしませんか?」

「あるが、それがどうかしたのか?」

「尿を溜める器官のすぐ下に、小さなデキモノができています」

「なんと!」

「それも除去してよろしいでしょうか? そちらは、特に申告された症状ではありませんでしたので医療費はサービス致しますので」

「除去はしてくれ。ただ、医療費はキチンと払う」

「いえ。本人からの申告がなかった病気を勝手に治した場合は、医療費を請求してはイケナイはずですので」

「そうか……。そうだったな」

「どちらも、すぐに終わりますので。済みませんが、ベッドの上に横になっていただけますか?」

「ああ、分かった」


 国王陛下が、羽織っていたマントを脱いで付き人に渡し、ベッドの上に横になった。

 早速、私は国王陛下の胃の辺りに右手を置いて、

「(治癒魔法照射(ヒール)!)」

 五秒で胃潰瘍治療を終了。


「まず、お腹の痛みはどうなりましたでしょうか?」

「完全に消えたよ。楽になった」

「良かったです。では、次に参ります」


 問題は、むしろこっち。

 私は国王陛下の下腹部に右手を置いた。実は、国王陛下は前立腺癌だったんだ。


 そして、再び、

「(治癒魔法照射(ヒール)!)」

 十秒で病変部位のみを除去&消滅。


 別に前立腺を全摘出したわけじゃないし、完全に器官を元通りに復元できるからね。機能はキチンと保たれる。マジで便利な魔法だよ。

 これで問題無し。

 あと、念のため全身スキャンして……特に問題無し。


「終わりました」

「大丈夫なのか?」

「はい。では、医療費はウィルキンソン子爵様のご病気と同じ額だけお支払いいただきますので、あとは会計受付の方でよろしくお願い致します」

「分かった。どうもありがとう」

「お大事にしてください」

 一先ず、超大物患者の治療が終わってホッとした。



「では、次の方をお願いします」

 ここで、入ってきた二人目の患者さんは……。


「アナタがラヤちゃんね」

「は……はい!」

「これだけ可愛かったらイリヤが夢中になるのも無理ないわ。はじめまして」

 御后様だったぁ!


「は……はじめまして。ラヤです。よろしくお願いします」

「じゃあ、よろしくね。実は私、頭痛持ちでね。ほら、イリヤが頭の中に大きなデキモノができて大変だったじゃない!」

「はい」

「それで、私も心配になって」

「分かりました。では、ちょっと診させてください」


 と言うわけで、早速、診断魔法発動、全身スキャン!

 で、結果は、

「ラトケ嚢胞ですね」

 メアリさんの旦那さんと同じ病名だった。


「何それ?」

「ええと、頭の中に小さな器官に少し水が溜まっています。それを抜き取れば問題ありません」

「そうなの? もっと変な病気じゃない?」

「大丈夫です。基本的に、今回の疾患は良性ですのでご心配は要りません。では、治療します」

「お願いね」


 と言うわけで治癒魔法を発動!

 私は、御后様の頭に右手をかざした。この疾患なら、本当は、こんなポーズをする必要はないんだけどね。

 一応、振りだよ振り!


 それに、メアリさんの旦那さんほどヒドくは無い。

 炎症を起こしているとかも無いし、御后様自身も、特に寒がりになったとかダルくて仕方が無いとかまでは至っていないみたいだ。


 溜まった粘液を体外……と言うかその辺の路上に転移!

 さらに粘液が再びたまらないように処置して終了。あと、念のため全身を再スキャンして、特に問題無し。


「終わりました」

「そうなの?」

「万が一、また頭痛がするようでしたら診させていただきます」

「その時はお願いね」

「では、医療費は会計受付の方でよろしくお願い致します」

「分かった。ありがとう」

「お大事にしてください」

 二人目の超大物患者の治療が終わって、改めてホッとした。


 もう大丈夫だよね。

「次の方」

 そして、入ってきたのは二十歳くらいの身分が高そうな男性。

「イリヤが世話になったな」

「はい?」

「イリヤに先を越されるとはな。しかも、こんなカワイイ系美人を捕まえやがって! 正直嫉妬する。悔しいな」

「あのう……」

「俺はアナトリー。イリヤの兄だ」


 王家三連続かいぃぃ!

 多分、これで王族は終わりだよね。大物ばかりでこっちの胃に穴が開きそうだよ。


「で、どのような症状でしょうか?」

「ウィルキンソン子爵のところのドミトリーを診ただろ。あれと同じだよ」


 ええと、それって、つまり……。

 真正包茎かい!

 そんな情報交換もしているのか、ここの王族貴族は!

 しかも、早速ズボンとパンツを脱いで、私に懐かしいモノを見せ付けてくるよ。私もそれ、以前は付いていたんだよね。


「特に驚いたりしないんだな。見慣れてるのか?」

「まあ、経験はありませんが、見たことはあります。こんな仕事をしておりますので」


 これは半分嘘だけどね。

 以前は毎日、自分のをイヤでも見ていたから見慣れているんだもん。

 でも、仕事で見ているのも事実だしね。大ウソじゃないよ!


 それにしても……。

 うーん……。たしかに、まごうこと無き真正包茎。ちゃんと治してあげよう。

 ただ、私に見られて少し大きくなっていない?

 興奮しているだろ、コイツ!


「じゃあ、治します」

 っと言うわけで、治癒魔法で正常にしてあげた。その後、念のため全身スキャンしたけど特に問題無し。


「終わりました」

 アナトリーは、自分のジュニアの変身ぶりを見て、

「ありがとう! これで自信をもって妃選びができる!」

 と、まあ、大喜びだった。


 一先ず、大物の患者はここまで。

 この後は、今日のところは平民の患者しかいなかった。

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