偽善のメシア
自殺未遂を繰り返す少女がいた。しかし、なかなかあの世には行けない。
好きな作家がいたのだ。発売日に、いつも自殺を思い留まる。
未遂をして、軽度で終わる。未遂も出来ず終わる。それの繰り返しだった。
好きな作家がいる。それが、生きる意味となっていた。
作家は、メディアに一切露出しない。プロフィールも、一切口外しない。そんな人だった。
『超人気作家が長期間の休養を発表?』
少女は、絶望に陥った。涙を止める方法を、見失った。
水分は、みんな目から出た。水分は、ほとんど目が吸い上げていた。
母は、出版社に手紙を出した。娘は、危険な状態。それは、確実だったから。
会話もない。娘と母は一切会話していない。一方通行のキャッチボールだった。
『休まないでください。娘の希望が絶たれます』
そのような、内容の手紙だった。手紙は、間接的。でも、それしかなかった。
『連載などの忙しさでストレスが溜まり、体調不良になりまして』
そのような返事が、作家から来た。母は、返事が来て嬉しかった。でも執筆の復活は諦めかけていた。そんなとき、次の文章に救われた。
『メールをすることや、少し逢うことなら出来ますよ』
その言葉に、微笑んだ。娘の心が危ない。でも、逢えばかなり和らぐだろう。母は、涙を流していた。
メールをしていた。丁寧な文字で書かれた連絡先に。親切にしてくれている。それを感じ、母の心はあたたかくなった。
そして、娘と私とその作家で、会う流れになった。
母はそれから、小説を読み漁った。エッセイも全て読んだ。
そこで、初めて知った。その作家が、人を愛することが出来ないということを。
愛のある言葉を、発することが出来ないということを。娘はそれを前から知っている。そう思ったが、母は少しの不安を覚えた。
きっと、発信が出来ないだけだ。愛はある人だ。そう、母は自分に言い聞かせていた。
偽りの愛でもいい。出来るだけ優しい言葉をかけてほしい。
そして、仲良くして自殺を食い止めて欲しい。不安を取り除いて欲しい。そう伝えた。
「初めまして、こんにちは。優勇です」
「あっ、好きです。嬉しいです、逢えて」
「可愛いですね。すごく」
無理しているのは、誰もが分かった。でも、娘の表情は明るかった。
「褒めたことないので」
「うれしかったです」
「あの、僕に出来ることがあれば、何でも叶えますので」
「えっ?本当ですか」
「でも、優しさとか愛が芽生えない僕なので、期待しないでください。それと、僕は好きと言って貰った人には、心を許すタイプではありますから」
「愛は芽生えないでいいです。だから、ずっと私の側に居てくれませんか?」
「あっ」
「それで、ずっと私の悲しみを食べてくれませんか」
「あっ、はい」
母の目は、真っ赤だった。そして、三人はそれぞれ、違う微笑みをこぼしていた。




