表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/46

第十四話:彼女は奏で、彼は選ばれる

アマネのヒロイン力の高さよ

 

 盗賊団を退けてから暫くそのままのペースで公道を走っていた商団は、徐々に速度を落として、やがて止まった。


「どうしたんだ?」


 気になったから、馬車を操っている男の人に理由を聞いてみる。


「今日はここで休息を取るんだ、このままのペースで行っても着く前に夜になるからな。そうすると危険だから、商団の間で使われているこの場所で野宿するんだ」


 成程、確かに辺りを見回してみると、既に野宿の準備に取り掛かっているな。


「あんたらのおかげで盗賊団に襲われなくてすんだんだ、準備は俺らに任せてゆっくり休んでくれ」

「そんな、悪いですよ」

「気にすんなっての兄ちゃん!それに連れの嬢ちゃんはもう休む気満々みたいだぜ?」


 自分達だけ休むのは良くないと思って断ろうとしたが、ネルがもうぐだぐだモードに突入していたのを見て、溜息しか出なかった。

 それを見た男の人は豪快に笑いながら準備を勧め始める。


「そうだよリクト、休むのも大事」

「お前、相変わらずだな」

「うん、私はぶれない」


 本当、尊敬するよそこは。

 さて、俺は周囲の見回りにでも行ってきますか。


「あれ?何処に行くの?」

「見回りに行ってくる、すぐ戻るよ」

「ん、行ってらっしゃい」


 アマネとネルに見送られながら見回りに出る事にする。

 今回も何かある可能性が無いとは言いきれないからな。きちんと見回りしないと





 ☆ ☆ ☆



 リクト君は本当に真面目だなぁ、私なんて初めて馬車に乗ったせいか、少し疲れちゃったのに。

 それに、今日はリクト君やネルちゃんの役に立てた。私でも二人の役に立てたって事が分かったんだ。

 それが凄く嬉しいな。


「アマネ、何か嬉しそう」

「そ、そうかな?」


 ネルちゃんに言われて気が付いたけど、さっきからずっと笑ってたせいで、だらしない表情になってた。いけないいけない。


「さってと」

「それは?」


 私が取り出したバイオリンを興味深そうに見てきたネルちゃん、やっぱりこの世界じゃ珍しいのかな?


「これは、楽器だよ」

「それが楽器?見た事が無い形をしている」


 あれ?バイオリンってそんなに有名じゃないのかな?この世界じゃあ。

 ならあの鍛冶屋の人は何で知ってたんだろ?

 うーん……まぁ今は良いかな。久しぶりにバイオリンを引きたいから。


「じゃあ、演奏するね」


 演奏する時は、心を落ち着けて自分の引きたい音を引き出す。

 楽譜があるなら話は別だけど、今回は私のオリジナルの曲だから。


 テーマは、この世界。

 この世界に来てから色々な事があった、リクト君達と出会って、カズト君達と別れて、ギルドに入って、ネルちゃんと出会って…リクト君に助けられた。


 私は、最初は怖かった。この世界の何もかもが。でもそれを表に出そうとはしなかった、もしも表に出して足で纏いだと思われたら、皆と別れちゃうと思ったから。

 でも、リクト君は自分から離れようとした。私と同じでカズト君やスズカちゃんよりも弱い能力だと言って、自分から進んで離れようとした。


 私はリクト君を放って置けなかった。それに何でそんな事を平然とできるのか?皆と別れるのが怖くないのか?それが知りたかった。

 だから私はリクト君について行きたいと思った。

 でもリクト君は本当は強かったんだけどね。まぁ能力は分からないけれど。


 それに、リクト君は凄く優しい。

 私が弱くてもリクト君は文句を言わないで、一緒にいてくれる。一緒に冒険してくれる。

 それが凄く嬉しいんだ。


 _だからリクト君に、私が感じているこの嬉しいっていう気持ちを届けたいの_


 自分の心を音に乗せる、自分の思いを音に乗せる。

 私の能力は、きっとその為にあるから。




 ☆ ☆ ☆




 今、俺の目の前には傷付いた一匹の鷲がいた。

 翼の付け根から赤い液体が流れている、多分あの辺を怪我してるんだろうな。

 まったく、こういうのは見過ごせないタイプなんだよ俺は、動物好きだしな。


「無属性で回復って…こんな感じか?」


 常識凌駕(ルールキャンセラー)を使いつつ、鷲の怪我を治して行く。

 あ、こいつ凄い綺麗な目をしているな。オレンジ色の、凄く綺麗な目だ。


 鷲と目が合ったけど、構わずに怪我を治療する。携帯して持っていた包帯をキツすきず緩すぎずに巻いていく。


「うし、もう大丈夫だぞ。何があったかは知らないけど、もう怪我すんなよ?」


 これでこの鷲は大丈夫だ、そろそろ拠点に戻ろうかな。


「ん?」


 戻ろうとしたら、さっきの鷲が緩いスピードで俺の周りを飛び始めた。


「何だ?お礼でもしたいのか?」


 冗談半分でそう言ったら、俺の言葉を理解したのか鷲が甲高い声で鳴いた。そしてそのままのスピードで少し先の木の枝に停まり、俺を見る。

 俺が鷲に近づくと、別の木の枝に停まって俺を見る。


 その鷲の行動が気になった俺は、後を追いかける事にした。





 ☆ ☆ ☆




 鷲の後を追いかけたら、開けた場所に出た。

 そこにあったのは、森の中にある神秘的な雰囲気のした湖だった。


「凄い………」


 思わずその湖に見惚れる、その位に綺麗で透き通った湖だった。


「もしかしてお前、ここに…あれ?」


 気が付いたら鷲が消えていた。


「へへっ、そっか」


 それだけで理解した。あいつはきっと俺にこの景色を見せたかったんだろうって。


「ありがとうな」


 もうそこにはいないけど、そいつにお礼を言って帰ろうとした。




 直後、激しい音と共に湖から水柱が立ち上った。


「ッ!?」


 驚いた、何の前触れも無くこんな事があったから。


「あれは?」


 そして、水柱の中心に何かがあるのを見つけた。

 翠色の鞘…多分武器だろうな。それとあの形から見て刀のような、そんな物を。


 そしてそれは、緩やかなスピードで湖から出て、俺の目の前に辿り着く。

 俺は恐る恐るそれを手に取った。


「軽い…」


 それは、驚く程に軽かった。

 重さを殆ど感じられない、刀の類だとは思うけれど、ここまで軽い物なのか?


 試しに鞘から抜いてみると、そこにあったのはオレンジ色の刀身が姿を見せる。

 武器には詳しくない俺でも分かる、こいつは凄い代物だ。

 こいつは、とんだプレゼントだな。


「ありがとう…いやマジで」


 まさかこんな物を貰えるとは思わなかったぜ。

 やがて水柱は収まり、元の綺麗な湖に戻った。


「戻るか…」


 刀を腰に付け、元々持っていた剣を背中に付けるけど、こうなると剣が重く感じるな。

 この刀一本で行くか、それとも二本武器を使うか…改めて考えておくかな。

 剣と刀の二刀流って、和と洋の二つが合体したみたいでカッコイイしな。



 ☆ ☆ ☆





「そうか、君が認めた人間がいるんだね、アルタイル。その近くにはきっとベガに認められた人間もいる筈だ、君達二人は引き合うからね。

 そして僕が認めるべき人間も…なら久しぶりに下界に降りてみようかな。

 君達が認めたって事は、まだ人間も捨てた物じゃないって事になるからね」















『報告、アマネ・カグラが性質を獲得しました。リクト・アルタイルが天星伝説武器スターレジェンダリーウェポンの一つ、天翔大鷲(てんかけるおおわし)を獲得しました。』

と、いう事でリクトにチートな武器が手に入りました。

今開示できる情報は、重さを殆ど感じない重量という事。殆どですよ、ここ大事。

最後に登場した謎の人物…多分そんなに重要じゃないかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ