第十三話:新たな旅路と動き出す者
遂に奴が登場!
あの夜、アマネちゃんが襲われた夜から一夜立った今日だが、俺やアマネちゃんはあんな事があったからかマトモに眠れないで、一日を過ごす羽目になってしまい今、軽い寝不足だ。
「くぁぁ………」
思わず二度寝しそうになるくらいに、眠い。
アマネちゃんも眠そうにしているけれど、まぁ仕方ないよな。
それと、昨日の事はネルには話さない事にした。
夜遅くに抜け出した事を知られない為でもあり、余計な心配をかけたくないっていうアマネちゃんの願いでもあったからだ。
とはいっても、ネルは妙に察しのいい所があるから多分気付いてるだろうけれど、それでも何も聞かない辺りがネルの優しさなんだろうな。
そして、今日は出発の日だ。今日から俺達は国境に向けて旅立つんだけど、道中どうしても時間がかかるとの事で、少しでも早く着く為に国境を超える予定の商人達の護衛という形をして、馬車の荷台に乗っけてもらう事にした。
この世界に馬車があったのは驚いたんだが、それはまぁ置いておこう。
まぁ荷台に乗っけて貰う代わりに護衛代は格安なんですがねぇ、それは割り切るしか無いか。
「あぁ〜」
呑気な声を出しながら寝っ転がっているネル、荷台に乗っけて貰おうと言い出したのはこいつだけれど…絶対に計算してたな。
「ねぇ、リクト君」
「ん?どうした?アマネちゃん」
ネルを見ていたらアマネちゃんが話しかけてきたけど、その表情は真剣そのものだった。
「あのね、お願いがあるんだ」
「お願い?」
思わず聞き返してしまったけど、彼女の表情はいたって真剣。
これは俺も真面目に聞かないと。
「私の事をちゃん付けしないで欲しいの」
「ん?嫌だった?」
なんかイメージ的にちゃん付けして呼んじゃってたけど、まずかったかな?
女の子と話した事なんて殆どないから、そういうのは分からんよ…
「あの時、私の事を呼び捨てで呼んだでしょ?」
「あぁ、まぁ」
「その方が、私的に嬉しいから、これからはそうしてくれると嬉しいな」
むぅ、呼び捨ての方が良かったのかぁ。
ならこれからはそうする事にした方が良いな。
「分かった、ええと」
あ、あれ?なんか緊張するな。
そ、それもそうか。アマネちゃん…いやいや、アマネは滅茶苦茶可愛いからな。
目がパッチリしていて、桜色というかピンクというか、そんな髪の色と青色の目がバッチリ合ってて、なおかつ俺好みのセミロングヘアーだし…
「おーい?リクト君?」
「な、何だよアマネちゃ…アマネ」
ちゃん付けで呼びそうになったら、急に不機嫌そうな顔になったから慌てて戻す。
そしたらパァァって聞こえてきそうな位の満面の笑みで見つめてくる。やめろ、自分の容姿を自覚しろ。惚れたらどうすんだよ。
「ねぇ、そこのコーヒーが甘くなりそうな程のクッソ甘い空間作り出してるそこの二人」
「わひゃあ!?」
「ッ!!」
急に話しかけられてビックリした。てか寝てたんじゃないのかお前?
「怠いから手短に話す。この商団は付けられてる」
_付けられてる_
その言葉に俺は即座に警戒をする、隣のアマネも表情を引き締め、ネルを見つめた。
「何時からだ?」
「不明、さっき気が付いた」
「えっと、人数とかは分かる?」
「三人組が三つの九人、距離の取り方から考えると、手慣れてる」
それが分かるだけでも大したもんだけどな。
「護衛が私達しかいないから甘く見てるんだろうね」
「向こうはお前の魔法は知らないだろ?だからこんな真似が出来るんだよ…多分な」
「それより、私達はどうすれば良いのかな?」
「私は最低限しか働かない」
「えぇ!?酷いよネルちゃん!」
「これも二人の修行の為、危なくなったら手を貸す」
そんな事言っといて、働きたくないからこう言ってるんだろお前は…。
まぁ、確かに対人戦は今の内に経験を積んどいた方が良いかな…ブレイヴと何時戦うか分からないからな。
そうと決まったら早速攻めるか。奴等が攻めてくるのを待ってるのも悪くは無いが…俺の性分が許さないからな!
_無属性魔法、鷹の目発動。_これより索敵を開始するってな!
俺の視界が急に広がり、遥か遠くをも見渡す視力になった。
見えた、数はネルの言ってた通り九人で、三組に別れて移動してるな。
けれど、どうするか…こっちから仕掛けるとしても方法が…あ!
そういえば、この世界に来てから作った物があった!
急いで俺は、荷台に無造作に置かれた俺達の荷物スペースから、掌サイズの小さなタルを取り出し、それを三つ投げつける。
タルは地面にぶつかって中身をぶちまけた。
「あれは?」
ネルがそれを興味深そうに見ているけど、説明は後だ。
次に俺は鷹の目を使い、事の成り行きを見守る。
「ビンゴ」
俺の目に映ったのは、タルの中身をぶちまけた場所を通った馬が転んでいる光景だった。
俺が仕組んだのは、良く滑り良くぬるぬるする液体だ。ローションみたいな物だと思えばいい。
濃度が濃くて、公道で草一つも無い場所だ。そこにこいつをぶちまけたら?そして猛スピードで走る馬がそこを通ったら?
真ん中の、公道を走ってるチームが転ぶ事。
それに驚いた両端のチームも止まる、つまりこっちを見失う事。
「アマネ、矢を適当に、公道に向けて射ってくれ。できるだけ遠くにな」
「え?う、うん」
戸惑いながらもアマネは矢を射った。
「エンチャントフレイム」
気分的に詠唱モドキをした。その直後矢は炎を纏って空を行く。
同時に常識を覆す、『矢を射った後の起動変更を他人は出来ない』という常識を!
「これまた」
直後
「ビンゴォ!」
爆炎が空に立ち上った。
「な、なんだぁ!?」
「気にすんな!そのまま進めぇ!」
あの液体は、よく燃える。
そうなるように合成するのは苦労したぜ、まぁ結果はご覧の通りだ。
公道でこんな真似をしたらどうなるかは分からんが、少なくとも自衛の為だからお咎めは無いだろ。うん。
「無茶苦茶する」
「す、凄い…」
「ま、正当防衛正当防衛」
「過剰防衛じゃないの!?」
アマネが何か言ってるが知らんなぁ!フハハハハハハ!!
☆ ☆ ☆
「ま、魔王様ぁ!魔王様何処ですかぁ!?」
「騒々しいぞ?ソルディ」
「ま、魔王様こんな所に!勝手に出歩かないでと何時も言ってるじゃないですか!?」
魔王と呼ばれた青年は、すまんなと適当に返事しながら草原にゴロンと横になる。
「そ、それより聞いて下さい!勇者がやって来たんですよ!」
「あぁ、通りで。世界に干渉する能力を持つの筈だ。勇者なら納得だ」
「せ、世界に干渉ですか?」
「おっと、こちらの話だ。続けよ」
「は、はい!その勇者は全ての人類の頂点の魔力と力を持つ能力との事です。」
「ほうほう、それで?」
魔王が興味深そうに次の言葉を待つが、ソルディは「それだけですが?」と答えた。
「興醒めだな」
「ま、魔王様!?事の重大さを御存知で!?人類の頂点ということは、あのブレイヴを超える力とネールディラスを超える魔力を持つという事ですぞ!?」
「ブレイヴは力だけでは無い、無論ネールディラスもな。その二人は戦い方に問題があるが…ただ強いだけの勇者ならば雑魚同然、やりようはいくらでもある。といってもあの二人が出会い、その勇者と手を組むならば話は別だがな」
魔王の言葉にソルディは納得した。ブレイヴもネールディラスも厄介な能力を持つ。故に魔王は考えた。
世界に干渉したのが勇者でないなら誰が世界に干渉したのだと?
「急がねばな、アマテラスに先を越されぬ内に」
「アマテラスですか?何故あれが出てくるのですか?」
「奴も選ばれし者だからだ。ソルディ、天道十二門を呼び出すのだ」
「で、では」
「本来なら三年後だったが…予定を速めるぞ」
「はは!この十二門が一人、『水瓶のソルディ』、命を掛けて魔王様の命を遂行します!」
「頼むぞ」
魔王登場!やっと出せた。
前回主人公が無視した常識
『相手に痛みを与える行為をした時に、痛みのみを与える事はできない常識』
『自分の攻撃が相手に対応される事があるという常識』
『相手は能力を持つ場合、能力を発動できる常識』
つまり主人公は、必中攻撃で痛みを延々と与える攻撃を抵抗できない相手にひたすらやったという事に…
まぁ、便利故にまだまだリスクもあります。分かりやすいのは魔王やレリィといった、特別な存在に目をつけられやすいのが第一のリスクですねぇ(遠い目)




