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第十二話:少女の想いと勇者の誓い

今回はいつもよりちょっと長め、なおかつ結構胸糞展開があります。

 

 __眠れない__


 出発は明日、まるで遠足が楽しみで眠れなかったあの頃のような体験だ。

 久々だった、ワクワクが溢れて眠れない夜ってのは。


 まぁ、仕方ないのかもしれないな。この世界に来たばっかりは目の前の事に手を付ける事で精一杯だった。

 でも、明日からはきちんとした目的がある。本当の意味での冒険が待っているんだ。


 だけど、目が冴えて眠れないし少し外を散歩しようかな。

 そう考えて、外に出る事にした。


 ☆ ☆ ☆


 夜に外を歩くと、昼とはまた違った光景を見れる。冒険者風の男達が楽しそうに酒を飲んでいたり、街灯にライトが灯って綺麗な景色を生み出したりと、夜ならでわの光景だ。


 涼やかな風が気持ちいい、そろそろ宿屋に戻ろうかと考え、宿屋に向かおうとしたら


「あれ?」


 宿屋から、アマネちゃんが出るのが見えた。一体どうしたんだろう?追いかけてみるか。



 ☆ ☆ ☆


 アマネちゃんの後をこっそりと追いかけると、とある店に辿り着いた。そこは、この街にあった鍛冶屋だ。でも表にはclosedと書かれている看板があった。


 こんな夜中に何で?それに何で閉まっているんだ?そんな疑問を持ちつつ、俺は隠蔽魔法を使ってからアマネちゃんとほぼ同時に鍛冶屋に入る。


「お、来たな」


 そこには若い職人がいた、年齢は24位で背は高めの男。隠蔽魔法のおかげか二人には気付かれていない、魔法様々だな。


「お兄さん、頼んだ物は?」


 アマネちゃんはその職人に何かを頼んだのか、職人にそう尋ねた。


「注文通りに仕上がったぜ、こいつでいいんだよな?」


 そう言って職人は二つの物を取り出す、職人が取り出したのは、俺の世界でも見た事がある物_楽器だった。

 確か名前はハーモニカだったか?もう一つはバイオリンだ。


「ありがとう!」

「注文通りに頑丈、なおかつ軽めの重量に仕上がったぜ。自慢の一品だよ」

「本当にありがとう!感謝してもしきれないよ!」

「そんな喜んでくれると、俺も嬉しいねぇ、でも少し落ち着けよ、これでも飲んでさ」


 アマネちゃんは職人から出された飲み物を飲んでから、ハーモニカをポケットに入れてバイオリンは腰に装着した。

 アマネちゃんは楽器を作って貰っていたようだな、自分の能力を最大限に活かす為なんだろうな。

 なら別に心配する必要は無かったな。そう考えて鍛冶屋から出ようとしたら


「でも良いの?この二つが無料なんて」


 と、アマネちゃんの疑問が聞こえたから足を止め思考を始める。


 __無料?相場は詳しくは知らないけど、それなりの値段はする筈だ。なのに無料?それは可笑しい、俺達は身なりは珍しい方だが、装備している武器は初心者向けの装備だ。

 とてもじゃないけど楽器を買える程の金を持っている風には見えない__


 そこまで思考したら、バタンと何かが倒れる音がした。それに驚いて振り返って見た光景に、俺は驚いた。





 ☆ ☆ ☆


 リクト君は強かった、私よりも。

 後から入ったネルちゃんも、魔法の扱いが凄く上手で凄く可愛い女の子だった。


 だから私は焦った、私はこの中で一番弱い。このままじゃリクト君に見捨てられてしまうかもしれないって。足で纏な自分はこのままじゃあ……。


 嫌だ、また捨てられるのは(・・・・・・・・・)


 私は自分に出来ることを考えて、城下町一と言われる鍛冶屋を訪ねた。

 そこにいたのは若い男の人で、一年前に来たばかりだと言った。その人に楽器を作れるかを聞いたら、驚いたような表情をしてから作れると答えてくれた。


 その時に値段はいらない、けれど深夜に会話相手になって欲しいと言われたから、この鍛冶屋に来た。


「注文通りに仕上がったぜ、こいつでいいんだよな?」


 手渡されたのは、間違い無くバイオリンとハーモニカだった。

 見間違う事は無い、もう一度出会えたんだ。この二つの楽器に!


「ありがとう!」


 精一杯、心を込めてお礼を言う。ううん、ありがとうなんかじゃ足りない。だって私にもう一度会わせてくれたんだから。この二つの楽器に、もう二度と会えないと思ってたのに。


「注文通りに頑丈、なおかつ軽めの重量に仕上ったぜ。自慢の一品だよ」


 頑丈なおかつ軽めに、我ながら無茶な注文だと思ってたのに、本当に仕上げてくれた。


「本当にありがとう!感謝してもしきれないよ!」

「そんなに喜んでくれると、俺も嬉しいねぇ、でも少し落ち着けよ、これでも飲んでさ」


 確かに興奮したせいで、少し喉が乾いていた。

 私はそれを飲んでからバイオリンを腰に付けてハーモニカをポケットに入れた。


「でも良いの?この二つが無料なんて」


 こんなに性能が良いのに無料、かなり申し訳ないと思った。









「いや、きちんと払って貰う。身体でな」





 ___え?___



 聞き間違え、そうであってほしい。


 でも、その思いも次の瞬間には消え去った。



 __から、だが__


 全身が麻痺した、意識はある。なのに動かない、動かせない



「最近溜まっちゃってさぁ、可愛い子もあんましいなくてね、そしたらこんな可愛い子が無警戒で俺の所に来たって話」


 男の人が近付いてきて、私の胸を鷲掴んだ。

 痛い、けど、声も出せない。


 次の瞬間、強引に押し倒された


「ハァ、ハァ、や、柔らけぇ、久々だよ本当に。こんな所に来ても絶望しないで頑張った俺への神様のご褒美だな、ふ、フヒヒ」


 嫌だ、ヤダヤダ、怖いなんてものじゃない。

 全身に鳥肌が立っで背筋がゾクゾクとして、おでこの辺りから気持ち悪い汗があ溢れてくる!


「暴れんなよ?傷は付きたくねぇだろ?子猫ちゃぁぁぁん」


 舌なめずりしたその人は、鼻息を荒くしながら私の顔に自分の顔を近付けてくる。


 嫌だ!キスは、嫌!


「そそるぜ、その顔」



 ッッ!!!!!!!!!




















「テメェ今すぐその汚ぇ(ツラ)をどけやがれ!!!」

「くぶぇ!?」



 急に私の身体から重みが引いた



「クソっ!考え事に没頭すると周りに注意を払えない!俺の悪い癖だ!」


 誰?誰なの?ううん、この声は知っている。


 この、声は


「大丈夫かアマネ!!」


 そこには、私が良く知っている人がいた。





 ☆ ☆ ☆



 やっぱり裏がありやがったか!クソ野郎が!


「な、何だよお前!俺に逆らうのか!」

「っせえよクソが!道端に転がってる犬の糞よりも汚ぇ精神してんな!人間辞めろよ?」

「な、何だとぉ!?」


 アマネは涙目で震えている、余程怖かったんだな…!


「クソ!クソクソクソ!折角グリムレスに来たのに!折角あいつがいない所に来たのに!また邪魔されるのか!俺のハーレム生活が!」


 はぁ?何言ってんだこいつ


「訳分かんねぇ事言ってんなクソ」

「クソだと!?ふざけるな!俺は勇者だぞ!俺をコケにしやがって!」

「あ?何言ってんだ?勇者ってのはカズトのような奴の事を言うんだ。テメェみたいなのは豚の餌って言うんだ、家畜にもなれねぇゴミが。せめて後七回輪廻転生してから言うんだな」

「お、お前ぇぇぇ!!!」


 男は怒り狂いながら、俺を睨みつける。

 けど、俺も今回ばかりはキレてんだ。誰に手を出そうとしたんだ?お前。徹底だ。徹底的にぶちのめして生きている事を後悔させてやるよ。


 特別能力(エクストラスキル)常識凌駕(ルールキャンセラー)発動、今から三つ常識を捨てる。


 さぁ、蹂躙の始まりだ。



 ☆ ☆ ☆



「生意気なんだよ、お前ぇ!!!」


 鍛冶職人レンはただの鍛冶職人ではない、彼には能力(スキル)があった。それは自分が物を作る際に半日で全てを作れるという能力。

 だが、彼の周りにはそれ以上の力を持つ者がいて、それらから逃げるようにこの国にやって来たのだ。


「死ねよ!」


 レンは怒りに任せてリクトを襲うが、その攻撃はいとも簡単に防がれた。

 その隙にリクトは全てを見透かす瞳(ステータスチェック)により、レンの力を見極めた。


「お前、馬鹿だろ?そんな便利な力持ってんのに」

「煩い!死ね!」


 思わずリクトはそう言うが、レンは聞く耳を持たずにリクトを襲う。だが


「知るかよ」


 リクトはカウンターの要領で、レンの顔面に腰を入れたパンチを鋭く入れた。


「がぁぁ!!」


 レンはそれにより思いっきり吹っ飛ぶ。


「何だお前、そんなんで死ね死ね言ってんの?無様だなお前、大方自分の思い通りにらならないと怒るタイプの屑だろお前」

「黙れ黙れ黙れ!」

「ゴミが言葉喋んじゃねえよ」

「ぎゃぐがぇ!?」


 レンが喋る度にリクトは蹴る。

 蹴る。

 蹴る。

 蹴る。

 ひたすら、蹴る。


「が、ご、げ、ぶぁ!?」


 やがてレンは違和感に気が付く、先程殴られていたのに怪我も無い、鼻血すら出てない、そして今も蹴られているのに肝心なダメージが無い事に。

 だが痛みは続いてる。

 それに、気が狂いそうになる。気絶も許されないこの状況に


「ゆる、じで」

「あぁ?」

「ゆるじでぐだざぃ!もうじまぜん!じまぜんがら!」

「知るか」


 必死の懇願も聞き入れられず、ただひたすら蹴るリクト。






「やめ、て」


 そこに、か細く今にも消えそうな弱々しい声色で、誰かが言った。


「そんな、リクト君、は、見たく、ないよ。何時もの、優しい、リクト君に、戻ってよ」


 ポロポロと、涙を流しながらアマネはそう言った。



「………ごめんな、アマネ。こんな姿見せちゃってさ」

「ううん、私の為に、怒ってくれ、たんだよね?謝らなくて、大丈夫だよ」


 アマネの願いに心を落ち着けたリクトは、レンを蹴るのを止め、アマネを抱き上げる。


「今後俺とアマネの視界に入んなよ?」


 そう告げて、リクト達は立ち去った。





 ☆ ☆ ☆




 やってしまった。頭に血が登ると何時もこうだ。

 反省するべき所なんだが、どうしてもこうなってしまう。


「リクト君…」


 腕の中のアマネは、震えつつも俺をじっと見つめている。きっとさっきの俺が怖かったんだろうな。


「怖がらせてごめん、俺…最低だよな」

「リクト君は悪くないよ、悪いのは私の方。あの人の事を信じちゃった私の」

「でも、俺はもっと速く君を助けられてた、なのに俺は…」


 思考に意識を向けていなかったら、あの男がアマネを押し倒す前に制裁を下せた、なのに俺はッ!


「自分を責めないで?私凄く嬉しかったよ?リクト君が助けに来てくれて」

「アマネ……」

「リクト君は、私の恩人だよ」


 さっきまで怖い目に合っていたにも関わらず、彼女は笑顔でそう言ってくれた。

 そんな彼女に、俺は少なからず救われたんだ。今までそう言ってくれた人はいなかったから。


 だから、今度こそ俺がこの子を守るんだ。


「アマネ」

「何?」

「俺は君を、守るよ」

「………うん」












『報告、リクト・アルタイルの能力(スキル)が追加されました』



 特別能力(エクストラスキル)守り抜く者ロード・ディフェンサー (パーティ内に、守ると誓った対象がいる人数分、能力が二乗される。)

主人公の使用した能力は、次の話で明かされます。

そして次回、物語が大幅に動きます。


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