第一話:プロローグ
突然だが、見知った場所…例えば自分の部屋から全く知らない別の場所に移動したらどうする?
それも、映画とかアニメとかゲームとかで見たようなお城のような場所だったら。
俺だったら先ず自分の正気を疑う。現実では有り得ないからだ、アニメとかゲームとかの世界ならば有り得るだろうけど、俺が知ってるのは現実。そんな夢物語はありえない。
だからこんな現実は、夢だと思う。思いたい。
「よくぞ参った!異世界より召喚されし勇者の諸君よ!ワシはこのグリスレム王国国王、シュヴェン・ラ・グリモズである!」
「グリスレム王国第一王女、エリア・ド・グリモズと申します」
偉く威厳のある髭をした厳つい爺さんと、滅茶苦茶美人なお姉さんがいる、ってグリスレム王国って何?てか異世界召喚?
信じられないから自分の頬を抓る…痛い、痛いって事は夢じゃない?いや、痛いというのも夢なのかも…うん、ここは確かめてみよう。
「グリスレム王国?異世界召喚?何の冗談ですか?そんな国知りませんよ」
思った事を口にすると、ほっほっほと愉快そうに爺さんが笑った、まるでこの質問を待ってましたとばかりに。
「このグリスレム王国では伝説があるのじゃ、かの魔王が蘇りし時世界は戦乱の世に変貌するとな」
「魔王だって!?」
俺以外の誰かが驚いたように叫んだ、声の主は俺と同じ男で、金髪碧眼の美男子だ。背も高くイケメン、俺が嫉妬深かったら死ね!って心の底で思ってるね…死ね!
「異世界召喚…面白そうじゃない」
次に桜色の髪の色をした女の子が楽しそうに呟いた、髪の長さは肩にかかる位で、瞳の色は翠色。まるでアニメのヒロインみたいな可愛い系の美少女…そんな印象だ。スタイルはバランスが良く、貧乳でも巨乳でもない感じ。
「はぁ、無事帰れるのかしら?」
不安そうに呟いたのは、黒髪黒目のポニーテールの美女。さっきの女の子が可愛い系なら、こっちは美しさを極限まで高めたような存在だ。多分俺が見た中で一番の美女だな、そして巨乳だ。ここ大事。
「そこで我らは異世界より勇者たる者を呼び寄せる儀式を行った!そして召喚された者は其方達四人という訳じゃ!」
成程、魔王が復活するから異世界から勇者呼んで力を貸して下さい!って感じなのね、いやぁ…本当にあるんだなぁこういうことって。
「異世界より現れし勇者よ!其方達に魔王を倒して欲しい!この国…いや、この世界の者を代表して言う!どうか力を貸して欲しい!」
ここでだが断るって言ったらどうなんだ?そんな事を考えてたら。
「お任せ下さい!この勇者、この世界を救う希望になってみせます!」
「おお!ありがとう!異世界の勇者よ!」
「ありがとうございます!これで世界は救われます!」
イケメン君が高々と宣言する、それを聞いた国王さんと王女さんが目を輝かせて嬉しそうな表情でお礼を言った。
「では、其方達勇者には自らのステータスを確認するステータスカードを授ける!」
国王様がそう言うと、俺の目の前に黄金色のカードが現れ、自分身体の中に入っていった。どうでもいいけど部屋着のままだったな。
「ステータスオープンと唱えればステータスカードが現れ、己の現在のスキル、名前、年齢といった情報を提示させてくれるぞ!それは身分証明にもなるので、覚えておくように!」
成程ね、確かにステータスは大事だ。どんなゲームでも自分のスキルを把握しないといけないね。出来る事と出来ない事が分かるってのは大事な事だからな、じゃあ早速試してみるか。
「「「「ステータスオープン」」」」
すると俺の目の前にゲームの画面みたいなのが表示されて、自分の詳細を教えてくれた。なになに?
名前 リクト・ウミヤ
職業 勇者
能力 常識凌駕
適性属性 無し
性質 強欲
となっている。性質の強欲って七つの大罪だよな?憤怒が良かったなぁ個人的には。というかさ、適性属性無しってなにそれ?異世界なら魔法もあるだろうけど、それの属性の適性って訳か?って事は俺魔法使えないの?勇者なのに?職業戦士にしろや、魔法使えない勇者とか詐欺だろ詐欺!
「成程、これが俺の力か」
どうやら他の三人も自分の能力を持ってるらしいな。反応からして三人共満足そうに頷いてる、俺の能力は…常識凌駕か、えっと詳しい説明は…どうやって見るの?
「ステータスの詳しい詳細を読むにはどうすれば良いんですか?」
「詳しい詳細は知りたい部分に触れれば、詳細を見る事ができるぞ」
サンキュー王様、さてさて早速見てみますか。さっきの王様の説明を聞いて、三人も自分の能力の詳細を知るためにステータスに触れたのだろう、イケメン君は驚きと嬉しさに満ちた表情を浮かべて、桜色の髪の女の子は微妙そうな表情をしてる、美人さんは妖しげに笑ってる、エッロいな。
俺?俺は…
常識凌駕(ありとあらゆる常識を伸ばす能力)
と書かれてた。
なんというか…これ程意味が分からない能力貰ったのって…うん、ハズレ引いたな俺は。
・・・・・
その後勇者としての活動を命じられた俺達は、それぞれ装備とお金を持って宿屋に泊まることにした。そこで俺達の自己紹介をするって事だ
「じゃあ先ずは俺からだ、俺の名前は天道一斗、こっちの世界じゃカズト・テンドウってなってる。こんな髪の色と目の色だけど日本人だ、こっちの世界に来てから変わったみたいでな、まぁ顔とか体型とかは変わってない、これから世界を救う為に力を合わせていこう!」
先ず最初にイケメン君が自己紹介をしてくれた。能力は勇者参上って名前みたい、凄い小物臭がするけど内容はえげつない。何せこの能力、全人類の中で最強の力と魔力を得るらしい、何そのチートって感じだ。それ俺に寄越せって思うくらいに。
しかもこいつ闇属性以外全てに適性を持ってるらしい、王国の魔法使いに聞いたところ闇属性は魔族しか使えないという話なので、実質こいつは全ての魔法を使えるみたい。俺達必要かな?
「私は神楽天音、ここの名前はアマネ・カグラってなってるよ。私は基本的に家事が得意だからどんどん頼ってね!私が皆のお世話をするから!」
なんだこの溢れ出るオカン臭は、思わず甘えたくなりそうだ。彼女の能力は音楽奏者と言って、ありとあらゆる音を操るみたいだ。ゲームでいう吟遊詩人ポジションかな?これからのサポート能力に期待できそうだ。
適性属性は風と水と光らしい、この世界じゃ三つの適性って結構珍しいみたいだ、何で知ってるか?それはこの世界の常識を俺の能力で知ったからだ。
「私は四ノ宮鈴花、スズカ・シノミヤって書いてたわ。私はこんな事初めてだし怖いから…ちゃんと私を守ってね?」
ペロリと唇を舐める仕草に見惚れてしまう、こいつはエロい、エロすぎる。騙されないようにしないといけない、この女はドラマとかゲームとかで見る悪女タイプだ。案の定能力や適性属性については教えてくれなかったしな。カズト君は不機嫌そうにしてたけどな。
「俺は…」
ふと思った、本当の異世界召喚ならわざわざ俺の名前をそのまま伝える必要はあるのかと。折角の異世界召喚、過去に捨てた中二病を復活する時じゃないのか?そう考えて、俺はこの世界で生きるための新たな名前を決めた。リクトはそのまま、変えるのは苗字だ、その名は
「俺はリクト・アルタイルだ、宜しくな!」
全力の決め顔でそう言った。
「え、それは無いわー」
「流石にはしゃぎすぎじゃないかしら?」
「リ、リクト君だね、改めて宜しくお願いするよ」
おい、引くなよ
おい
『報告、常識凌駕の能力によりステータスが更新されました。これにより常識凌駕の効果が追加されます』
名前 リクト・アルタイル
職業 勇者
特別能力 常識凌駕
適性属性 無し
性質 強欲、大鷲
俺がそれに気付いたのは、少し後の事だった。