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魔女の日記  作者: 和砂
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6ページ目

『○月×日 異世界十五週目

 退屈。暇を持て余しているわ。もちろんお昼間はお店番をして、夕方には買い物、夜はルオスと言葉の勉強をしているけれど、どうしても退屈してしまうの。特にこの前の週なんかは、誘拐されたり忙しかったから、余計にそう思ってしまうのよね。ねぇ、ルオス。退屈なの。目で訴えるけれど、彼は見ない振り。あ、知恵をつけてきたわね、この野郎。

 まぁ、良いわ。お勉強が終わったら、外套を被り外へ出掛ける。ちゃんと何処に行くって言って出たのに、ついてきたわね。一緒に行くって感じじゃないし、何だか監視じみていて、気分が悪いわ。だから少しだけ、早足。相手も、その分歩調を早めた。まぁ、どうしても挑戦したいようね。さらに速度を上げる。あ、また。じゃあ、もう少し。そんな感じで、段々と歩調を早めて、とうとう二人して走り出していた。―――あん。やめて頂戴。まるで、変質者に追いかけられている気分よ。わかったわ、歩けば良いんでしょう。歩けば。息を切らしていたのは私だけで、まぁ、憎らしい。ちょっとむすくれて、いつもの丘にやってくる。ぼうっと突っ立ってるのも可哀そうだから、ビニルシートをいつもより広めに敷き、「どうぞ」と席を勧めた。そう言えば、明日はお仕事なんじゃないの?

 そう尋ねると、彼は苦笑する。これくらいの夜更かしは何とかなるんですって。私、お昼の授業は眠くなるから、羨ましい限りだわ。でも、ちょっとだけ辛そうだから、今度からはちゃんと時計を持って出かけるよう気をつけてあげる。それから星を見ていたのだけれど、何を思ったのか、彼は私の事について質問してきたわ。あら、珍しい。だからちょっとだけ教えてあげる。でも、特別よ?』








『○月×日 異世界十六週目

 おほほほほ。四ヶ月目に突入よ。素敵だわ、≪境界線≫で余所に飛ばされてる中でも、最長記録よ。もぅ、こうなると元の世界の事なんか気にしなくなるわね。長期戦なんですもの、お父さんに怒られる事を考えないで、気長に待つわ。

 それでね、私、最近面白い事に気がついたのよ。昔、白樺高でやっていた要領で、“素敵な男性リスト”ーーー簡単なスナップ集よ――を作ったのよね。それが有効か試しに、学園の女学生に見せて感想を貰ったの。なかなか評判が良かったわ。ご要望により、そのリストをちょっと量産してみたのよね。すると、ほら、結構良い値で売れるじゃない。見つけたわ、私の娯楽。

 そういうわけで、私の手には使い捨てカメラ。街でイケメン見つける度にシャッター切っているわ。それに、ご近所さんと仲良しになった私だもの。すぐその人について調べられる。あら、良いじゃない。商売は順調だけど、調子に乗って行き過ぎないようにしないと。だからその男の子には、お詫びを兼ねて女の子を紹介してあげるの。この一週間で二組もカップル成立よ。成功率は高い方ね。そんなこんなで噂が広まって、時折、恋人を紹介してほしい学生さんが来るようになった。

 あら、レノアちゃん、そんなに褒めないで。照れちゃうわ。それから、クウハちゃん、お願いだから、ルオスには言わないで頂戴ね。今、”警察官ガーディアン”の若手独身さんの分も作成中なんだから。』








『○月×日 異世界十七週目

 まぁ、私ってすごい! 学生だけじゃなくて、ガーディアンの団員まで頼まれるようになっている。

 それでちょっとだけ心配なのが、ルオスにバレちゃうんじゃないかって事なの。困ったわぁ。まだ若いのに硬派なのか、彼、頭が堅いんですもの。きっと大激怒よ。間違いないわ。ルオスに怒られる場面を想像して、身震い。でも、止められないわ。人の色恋沙汰に関与出来るって、とっても楽しい事なんですもの。

 人気が出てきたのは、その人のブロマイド、もとい、生写真。素敵なアングルで撮れたものとか、制服が多い”警察官ガーディアン”なら私服姿だとか、そういうのがポイント高いみたい。やっぱり、元の世界とあまり変わりがないのね。そして私は、今日もカメラ片手に街を散歩する。』


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