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鳥籠に咲いた愛の花  作者: 朝凪
2章

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オーギュスト、降臨

“タンザナイト首飾り事件”の次の夜。「Nightingale」は昨日の余韻をまだ引きずっていた

というか、開店直後の時点で会話がそれしか無い


「昨日の首飾り、見たよな?」

「見たよ。しっかりと」

「おれ、夢に出た」

「俺も」

「俺は現実が夢みたいになった」

「哲学すな」


ホスト達の会話がコレだ。ちなみに姫達は……


「昨日の首飾り…ヤバイよね………」

「あれ、タンザナイトだよね……?大きさハンパなくない……?」

「でもさ……エレオノールちゃんがつけると、大粒のタンザナイトも引き立て役になってるのが怖いんだけど……」

「それな………」

「宝石が勝てないって何………」


そんな中、「Nightingale」常連の麻お婆ちゃん(72)と朝凪だけはのほほんとしていた


「すごいねぇ、あんな素晴らしい宝石に会うのは初めてだよ」

「フルオーダーメイドですもんね。絶対ネタになる……!」


さすが朝凪、ブレない


その瞬間だった

入り口の風が変わる。冷たい。いや違う、“格”が違う風が入ってきた

扉が開く

背の高い男、端正な顔立ち、瞳は深い紅。仕立ての良いコートがまるで王侯貴族の衣装みたいに揺れた

ーーオーギュストだ


(うわ……きちゃったよ……)

(あの人、マジで貴族じゃん……)

(怖い………)

(でも綺麗……)


新人ホストのケンタが、震える足で近づく


「ご、ご注文は……?」

「赤ワインを」


ーー短い。そして、当然のように“高級”が前提の声


ケンタは半泣きになりながら頷いた


「か、かしこまりましたっ……!」


オーギュストは席に座ると、店内をゆっくり見回した

視線が当たっただけで、人間が姿勢を正す

そしてーーエレンとエレオノールがいる席で視線が止まる


エレオノールは今日も来ていた。そして、今日もタンザナイトの首飾りをつけている

夜を閉じ込めた宝石が、彼女の胸元で静かに光る

オーギュストは、それを見てほんのわずかに口角を上げた


「あのタンザナイトだが………」


店内が凍る。誰もが耳を立てる。まるで、裁判の判決を聞くみたいに


「中々のクオリティだな。エレオノールによく似合っている」


(な、中々!?)

(あれを中々!?)

(価値観が王侯貴族!!)

(脳が追いつかない!)


ホスト達と姫達の心は荒ぶった

当の本人は、ケンタが運んできた赤ワインを悠々と飲んでいた

その動作は、儀式みたいに美しい


「確かあの首飾りを贈ったのは、マダム・ミヤコと言ったな……」


(やめて、名前を出すだけで圧が来る)

(マダムとオーギュスト様が同列で会話したら絶対怖い)


オーギュストはさらりと言う


「友人になれそうだ」


店内、戦慄


(友人……?)

(あの2人が並ぶの、店が終わるやつ………)

(夜の街が崩壊する………)


そんな中、エレオノールは兄の席へやってくる

エレオノールを見たオーギュストは、表情をいくぶん柔らかくした


「お兄様、マダムはとても素敵な方ですわ。わたくし、テディというお酒も頂いたの」

「ほう……」


オーギュストが、ほんの少しだけ眉を上げる


「お前にテディを贈るとはわかっているではないか。面白い女だ」


“面白い女”ーーその評価がどれだけの重みを持つか、周囲はわかっているから余計に怖い

オーギュストは“エレン”に視線を移した


「紫苑」


オーギュストは本名の方を呼んだ

店内が「え、エレンって紫苑ていうの……?」と別方向に揺れたが、今はそれどころじゃない


「昨日の贈り物、どう思う」

「………エレオノールによく似合う」

「それだけか」

「………ありがたいけど、危うい」


紫苑は慎重に言葉を選んだ


「ふむ。わかっているなら良い」


オーギュストは赤ワインを一口飲み、静かに言う


「お前はエレオノールを幸せにしている。だから私はお前を殺さない」


ーー店内が死んだ


(ころさない……)

(選択肢に“殺す”があるのか……?)

(やば、これ、王族の会話………)


エレオノールが軽く頰を膨らませた


「お兄様、物騒ですわ」

「事実だ」

「紫苑は、わたくしを泣かせたりしませんわ。そうでしょう?」

「………泣かせない。絶対に」


それを聞いたオーギュストは、満足そうに頷いた


「よろしい」


そして、当然のように話題を戻した


「マダム・ミヤコ……近いうちに会ってみたい。お前の周りには面白い人間が増えるな、エレオノール」

「ええ。紫苑が、わたくしに世界を見せてくださるの」


店の隅では、朝凪が興奮しながらメモを取っていた


「銀座の女王と吸血鬼の貴族が友人になる未来……。吸血鬼の姫に世界を見せる男………やばい。新作できた。帯文も決まった………」


そんな朝凪を、周囲は尊敬と呆れの視線で見た


オーギュストは高級赤ワインを飲み干し、立ち上がった

去り際、店内に向けてさらりと宣言する


「この店は悪くない。ーーエレオノールと紫苑がいるかぎりは」


扉が閉まる。空気が戻る、でも、戻った空気は前より重い


誰もが思った


マダム・ミヤコ、オーギュスト、エレオノール

この3者が繋がるということはーー夜の街のルールが塗り替えられるという事だ

エレンの姫達&同僚達の詳細と、オーギュストの「Nightingale」初来店シーンは番外編にまとめる予定です

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