VS《幻想怪物》
『突撃!』
ラチックの指令と同時に、全員で《幻想怪物》へと突撃した。
攻撃に加速を使いたいため、アンペルの[電走駆 エレクトリックBIKE]の後部座席に乗らせてもらう。
さて、俺たちの突撃相手は……物理でボネーラを突破するのは難しいから、前衛の二人にしよう。
彼女の肩を叩いて、前衛たち方を指を指した。
ブーン
タイヤが回転して、凄いスピードでボネーラへと突撃し、
「〈700ボルト〉」
電撃を食らわせた。
あいつの骨は速いが、自身が動くスピードは速くない。
やっぱり魔法の方が通りはいいようだ。
じゃあ、アンペル主体で攻撃して、俺が壁役って感じでいいかな?
「〈ウェイル・リブ〉」
ボネーラから生えてきた16本の骨がアンペルに襲い掛かってきて……俺が加速で全てを弾いた。
「〈ウェイル・テール〉」
骨の尻尾が横なぎに振られるも、アンペルがバイクを発進させて、加速なしでも避けることができた。
しかし、あのバイク、結構燃費が悪いから、なるべく使いたくはない。
「〈レーザービーム〉」
またアンペルが魔法を使い、ボネーラの体力はあと7割まで削れる。
この調子なら余裕なんだが、
「〈腕回転〉」
「ッツ、〈部分加速〉」
相手前衛のもう一人が、腕を回転させながら迫ってきて……右腕の部分加速で防いだ。
加速のCTは伸びるが、部分だけなら3秒で加速できる。
そして、相手の能力は……体を回転させられる能力かな?
「〈足回転〉」
相手の足が回転し始めて、スピードが上がる。
さらに、肩が回転したり、手が回転したりで……奇想天外な動きで惑わされ、ある程度削られる。
ボネーラも近づいてきて、
「ボーンレボリューション」
相手の合体技……やばい!
「【リーフィーシードラゴン】〈代わり木〉!」
スキルを切り替えて、忍者の変わり身の術みたいなことをして、ギリギリで脱出し……変わった木が粉々にされた。
合体技って、やられる方になったら堪ったもんじゃねえな。
「〈700ボルト〉」
とりあえずアンペルに牽制してもらい、
「〈杉森〉」
杉の森を作り出した。
骨クジラはいちいち行動が大きいから、森を生やせば止められなくても、減速させることはできる。
最悪アンペルの電撃で燃やせるし。
「〈ウェイル・ヘッド〉」
クジラの頭骨が飛ばされ……杉に減速させられ、余裕で避けれる。
回転の人が、相変わらず意味わかんない動きで迫って来たが、回復魔法と木刀で対応した。
そこに、
「〈エレクトロ・ディスチェンジ〉」
アンペルの誘導電流が、杉の間を縫って、ボネーラにダメージを与えた。
回転の人なら俺でもどうにかなるけど、ボネーラには勝てる気がしないので、優先的に狙ってもらう。
「下がれ、〈ホネホネボーン〉」
回転の人が引っ込んでいき、大量の骨が飛ばされた。
アンペルと一緒に、近くの杉に隠れて、補強し……出てみると回転の人がいなくなっている。
自分たちで視界を悪くしちゃったから……。
とりあえず、地中からの奇襲(自分たちの常套手段)に気を付けて、少し上に移動してから、
「〈花舞〉」
一応、鋭い花びらの範囲攻撃で、回転の人を牽制しておく。
さて、先にボネーラから片づけるか。
「〈エレクトロ・ディスチェンジ〉」
ファニーが、再び誘導電流を放ち……右上から回転の人がやって来た。
花びらの領域が待っているのだが、
「〈トルネイド〉」
回転が速まって……むしろ俺の花びらを巻き込んで、攻撃力が上がった。
ヤバ
◇
あーあ、ダーリンと突撃したかったのに。
まあ、アンペルが乗せてくのが一番効率いいから、仕方ない。
でも、
「あんたとは組みたくなかった」
隣で泳いでいる、ラチックを睨みつけた。
耳栓があるから、なんて言ってるかは分かんないと思うけど。
『珍しく同感ね』
「……何言ってるか分かるの?」
『ただの読唇術よ』
……やっぱこの女やばいわ。
『あなたと連携できる気がしないから、分担して1対1にするわよ』
「言われなくても」
そう言いながら、相手の中衛たちに突っ込んだ。
遠距離タイプがいたら楽なんだけど、片方の中衛は鎧を着ていて、もう片方の中衛はナイフを持っているから、両方近接タイプだろう。
『私が鎧の方をやるわ』
「気に入らないけど、従ってあげる」
今回は突撃の電撃作戦なので、[逆刃刀 シンテゐ]の方を持ってきた。
ちなみに、仮面の方はお姉ちゃんに預かってもらってる。
「〈流墜漸〉」
「〈騎士の加護〉」
上からいつものを食らわせたけど、甲冑の人に防がれた。
その脇から、ナイフが突き出されたけど、ラチックの槍が弾いてくれ……
『危なかったわね』
「大丈夫だし。デコイだし。それよりさっさと引き剝そう」
『そうね』
けど、
「〈リングス・トライデント〉」
「〈玖洙流漸〉」
スキルを連発してみたが、一向に離れる気配がない。
むしろ、攻撃するだけ対応のために、引っ付いてる気がする。
「……無理そうだね」
『仕方ない……タッグマッチね』
「やだなぁ」
『イグノのために頑張りなさい』
「絶対勝つ」
『……その調子よ』
ダーリンのために頑張ろう!
そして、勝ったら……
「えへへへへ♡」
「……(ドン引き)」
さて、集中しようか。
とりあえずデコイを2体出して、挟み込むように泳がせる。
わざと分かりやすいようにしているデコイだけど、相手視点では十分脅威でしょ。
デコイに気を取られている相手に、
「〈葬流漸〉」
「〈ブラックランス〉」
二人で攻撃した。
甲冑の人にギリギリで防がれたけど、思いっ切り吹っ飛ばして相手を分断する。
『私に合わせなさい』
「あんたがあわせなよ」
全く、私の方が先輩なんだから、立場が上なのに。
結局バラバラにナイフの人を攻めていたけど、吹っ飛ばされた甲冑の人が、
「〈召喚・ケルピー〉」
何かのスキル宣言をして……魔法陣が浮かび上がり、緑色の馬が出てきた。
それに乗って……速い。
「〈馬上の剣〉」
「クッ」
ラチックがなんとか防いだけど、力負けしてる感はいなめない。
『あなたは馬上の相手に慣れていないでしょう?私が主体で戦うわ』
「……逆に何であんたは慣れてるの?」
その時、ナイフ持ちが、光の玉を取りだした。
上に浮遊して、私たちを照らす。
けど、ステータスにデバフは表示されていないし、目が潰れる程眩しい訳でもない。
まあ、目が見えなくなるくらい光られても、『気配で分かるわ』とか言いそうなラチックがいるけど。
とにかく、相手の意図が分からない。
「〈リッパーナイフ〉」
振るわれたナイフを防いで……背中に悪寒が走り、相手の力に乗るように後ろに下がった。
しかし、右上のHPバーを見ると、さっきより少し減っていて、いつの間にか肩にキズが付けられている。
どこで付いたキズ?
「〈流墜漸〉」
「〈アサシンナイフ〉」
もう一度つばぜり合いの状態になって、周囲を警戒していると……相手の影が動いた。
影のナイフが、私の影に接し……接した部分に、キズが入った。
影を操作して、相手の影に攻撃できるスキルか。
まあ、ゲーマーにとっては、集中を二分することなんて難しくない。
影にも気を付けつつ、
「〈天翔流漸〉」
反撃を食らわせた。
だけど……今度は私の背後で戦っているラチックの影に、ナイフの影が伸びていく。
「ッチ」
『何すん……』
「〈シャドウナイフ〉」
ラチックにタックルして……影のナイフが私の首を切り落とした。
『……あなた』
「勘違いしないでよ、勝利のためだからね」
そう言って……チカチカ光り、消えた。
まあ、実体のあるデコイだからね。
そして、ラチックの方を見てみると……ちょっと泣いてる!?
え、デコイって分かってない?
そして、
『今からバフが消えます。私は生きてるから心配しないで』
そんな音声が聞こえて、
「〈食物連鎖の王〉」
……今回は予定通り切っただけだから。
【カリュブディス】
能力:回転
体の色んな部分が回転する。
元の生物にそんな能力はないけど……竜巻を起こす怪物だから、ね。
【ケルピー】
能力:騎乗
召喚
水中の馬。
この能力を持ってる人は、騎士みたいな感じで戦ってた。
【影鰐】
能力:影干渉
影で戦う。
普通だったら初見では分からない。
光の玉は、影を作り出すため。