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Universal Sky and Sea Online 水中のVRMMO  作者: カレーアイス
最終章 海空決戦
106/110

ラチックの策

 海空決戦の始まりの時。

 結局、ラチックより将棋が強い人物は現れなかった。

 ちなみに、『将棋程度で実力が計れるか!』とかいう奴は、ラチックが『将棋でも勝てない癖に、この一戦に掛けられるの?』と言って説き伏せた。


「さて、どうなるか」

「さあ?私たちは、信じて指示を出すだけよ」


 イグノ達《海馬組》メンバーは、本陣の海底にいた。

 詰められた時に、少しでも連携が取りやすいメンバーで固めてある。

 対して、相手の本陣は遥か上空にある。

 戦場では上を取られている方が不利なのだが、UAOの世界ではそこまで関係ないだろう。

 ちなみに、大将の位置情報は分かるので、隠れたりはできない。


「陣形は構築できてるか?」

「ええ、聞いている限りでは完璧ね」


 ラチックの【シャチ】には通信能力もあるので、状況は彼女を通して伝えられる。

 そして、開始時間はまだかと時計を見ていると……


『そろそろ始まるよ』

『そろそろ始めますよ』


 ザ・フィッシュと、ザ・バードの声が響いた。

 今回はSeaとSkyの両方が絡むので、二匹で開始宣言をするのだろう。

 そして、時計はカチカチと進んで行き、


『デュエル開始ィィィ!』


 遂に始まった。





 視点は前線に移る。

 最前線の人たちは、海中から空に浮かぶ相手を睨んでいた。

 今は、海面に結界が貼られていて、攻撃は通らないが……


『デュエル開始ィィィ!』


 開始時間になったことで、結界が解除された。

 瞬間。


「【顕幻・セイレーン】」

「【顕幻・リヴァイアサン】」

「【顕幻・クラーケン】」

「【顕幻・海坊主】」

「【顕幻・骨クジラ】」


 最前線の人たちが、巨大な化け物に変身していった。

 その大量の怪物達が並ぶ世界の終わりの様な光景に、相手は驚愕して……少しの隙ができる。


「【王水 NOCl】」

「【音響指高破膜】」

「【ガンランス】」


 そこに、怪物の影から遠距離系一撃必殺技を放った。

 これで、十数人を必殺技を出させずに倒した。

 相手からも反撃が来るが、耐久が高い怪物系が受けて、遠距離必殺の人を守る。


 これがラチックの第一策。

 怪物系を壁にして、遠距離一撃必殺系をなるべく多く撃つ。

 結構人が固まっているので、割と沢山の人を持っていけた。

 まずは、この第一線で出来るだけ相手を削って……


「【フェアリー戦士 ファイアレッド】」

「【フェアリー戦士 ウォーターブルー】」

「【フェアリー戦士 ランドイエロー】」


 ……いつの間にか、日曜午前8時半に活躍していそうな、女の子のヒーロー達がいた。


「〈メラバーン〉」

「〈バケットレイン〉」

「〈アースエンジャー〉」


 三人それぞれが魔法を放ち……こっちの化け物たちを全て跡形もなく消し飛ばした。

 下手な一撃必殺系でも出来ない芸当に、今度はこっちが恐れ(おのの)く。


「なんだあいつら!?」

「すぐに参謀殿に報告しろ!」


 前線の方々が、ラチックに壁役が爆散したことを伝えると……恐らく、モンスター特攻能力だろうとのこと。

 よく調べてみると、化け物の背後に隠れていた人たちは、少し傷ついたくらいで済んでいる。

 モンスターに対してのみ、火力が大幅に上がるのだろう。


『怪物系全ての動きに関わります。突撃系はモンスター特攻を全員撃破。それ以外は、少し速いですがフェーズ2移行して下さい』


「突撃ィィィ!【ワン ヒット ピアー】」

「【影の王国の住人】」

「【WHITE・DEATH】」


 数人が死を覚悟しつつ突貫し、フェアリー戦士たちの撃破を目指す。

 ある人は影から、ある人は光からワープして対象に接近し、ある人は超スーパーバカスピードで全てを貫き、フェアリー戦士を全員倒した。


 他の人たちは、少し引いて体勢を整える。

 殿(しんがり)(後ろに下がる時に、背中を突かれないために、残って戦う人。分からなかったら調べて)の数人に敬礼して、フェーズ2は終わった。


「撤退と仕込み、完了しました」

『よろしい。モンスター特攻能力者に気を付けつつ、巨大怪物壁を再展開。仕込みも一気に発動させて、押し切りなさい。これから先、一歩も引くことはありません』

「分かりました」


 参謀に状況を伝える役の人が、最後の通信を受け取って……大きく息を吸い込んだ。

 そして、大声でラチックからの作戦を伝える。


「第二陣壁、展開。仕込みも全て使え!ここから先は作戦なんてない、一歩も引かずにぶつかり合うぞ!」


「第二陣、行きます!【顕幻・タニファ】」

「【顕幻・レヴィアタン】」

「【顕幻・栄螺鬼】」


 第二陣の怪物達が現れ、再び壁を成した。

 それと同時に、仕掛けてきたトラップも全て発動させる。


「【水地雷・氷の型】」

「【バクテリア アクティベーション】」

「【Διαφανείς μέδουσες】」


 至る所で氷化する爆弾が爆発し、水を飲んだ人々が毒に苦しみ、透明だったクラゲに刺された。

 ……行儀がいいのはここまで。

 あとは、真正面から押し切るまで。


 トラップで弱っている相手を打ち倒し、有利な状況のまま、少し下がった戦線を上げていく。




 ラチックの策が上手くハマり、かなり押していた。

 あと少しで、相手の本陣という所。


「これは勝っただろ」

「……残念な伝令です」

「ん?」


「相手が突撃してきました」

「……は?」


 かなり追いつめられたことで、残る全ての戦力で突撃してきたらしい。

 全員で塊になって、一点突破をしてくる。


「え、ここまで来ないよね?」

「防御系能力が多いらしいわ。あと……クラン決戦システムって知ってる?」

「何それ?」


 クラン決闘システムとは、逆転用の救済システム。

 大将にのみ使え、一定範囲内に相手の大将がいると、両方の大将とそのクランメンバー以外の干渉を受けない結界が展開できる。

 大きな人数差があっても、大将にさえ近づければクランVSクランまでに縮められるのだ。

 運営によると、大将の二人が同じ10人のクランリーダーなので、このシステムが採用されたらしい。


「……出番ありそう?」

「多分来るわ」

「勝確だと思ってたのによぉ」

「まあいいじゃないですか。勝てばいいんですよ、勝てば」

「……《海馬組》各員、来ない事を祈りつつ戦闘用意」

「はい!」



 数分後。

 もうなんか察してた。

 壁を作る能力者が、気休め程度の壁(ウォールマリアと名付けた)を作ったが、一瞬でヒビが入り、見覚えのある白い鎧が、十数人を率いて現れた。

 そこは、もう射程内。


「「クラン決戦結界、機動!」」


 二人の大将の間から、四角い結界が広がっていき、クランメンバー以外は押し出される。

 ここまでくる途中で、相手のクランメンバーが一人くらい欠けていることを期待していたが、しっかり十人揃っていた。

 まあ、こっちにも万全の十人がいる。


「さあ、決戦だ」


 ラチックの策(簡略化)

 1怪物で威圧し、ついでに遠距離攻撃で削る。

 2トラップを仕掛けつつ撤退する。また、相手は怪物を倒した達成感で、深追いしやすい。(撤退の殿(しんがり)は、一々交換しやすい人を採用する)

 3第二陣とトラップで出来るだけ相手を削り、そこのアドバンテージで押し切る。


 これ以上に難しい作戦は失敗しそうなので、この程度に留めた。


 現在のポイントSea196 Sky240

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