表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/34

12番 岸本 麻衣

岸本(きしもと) 麻衣(まい):クラス委員長木葉のギャル仲間。

 女の子は、恋をすると変わる。

 彼女はそれを、身をもって実感しているところだった。


 「よし、物理オッケー!」


 再来週の期末試験に向けて、彼女は試験範囲の復習を始めていた。一年前の彼女なら「試験なんてかったるーい」と一夜漬け+補習でクリアしていた。

 だが今は違う。

 その変わりように「一体どうした?」と両親は首をかしげて驚き、何があったのかと三者面談で担任に問いただしたほどだ。


 「まあ、何はともあれ真面目に勉学に励むのはよいことですよ」


 担任は、母の質問にそう答えたのち、ほほえましい目で彼女を見た。「あ、先生気づいてる」と少々恥ずかしく思ったが、知らん顔してやり過ごした。


 「はあ、ちょっと休憩」


 ベッドに倒れこみ、スマホを開くとメッセージが届いていた。

 昨日、クラスメイトから発せられたSOSは無事解決したようだ。出かけていて「レスキュー隊」には参加できなかったので気になっていたが、さすがは咲夜率いる二年三組、心配無用だった。


 「うひゃー、めっちゃうまそう。陶山ちゃん、いい彼氏ゲットしたよなー」


 アップされた料理の写真を見て思わず声を上げた。「助けて」「よしきた」の二つ返事でこれだけのご馳走を作ってくれるなんて、彼氏が素敵すぎてうらやましすぎる。


 自分も、あいつとこんな彼氏彼女になりたいな。


 彼女はある男子の顔を思い浮かべ、ドキドキした。

 一つ年下の男の子。たまたま同じ委員会になって、数学がわからないと頭を抱えていたので、たまたまわかるところだったから教えてあげたら、ものすごく感謝された。


 「数学が得意な女の子って、すごくかっこいいですよね!」


 ギャルっぽいからバカだと思ってました、と、「どついたろか」と思うことを言われた直後にそんなことを言われた。それをきっかけに懐かれ、何かと頼りにされるようになった。「わからない」というのが癪なのでがんばって勉強し、したり顔で教えてあげたらもっと褒められた。

 それで調子こいてしまった。夏休みは塾の夏期講習にも行ってしまい、中学の友達からは「あんたガリ勉ちゃんになったの?」と驚かれた。

 

 「しょーがないじゃん」

 

 勉強で頼られたり誉められたりしたことは一度もなかった。それなのにあいつは頼りにしてくれる。あんなに褒めてくれる。チョロいと言われるかもしれないが、浮かれてしまうのは仕方ない。


 「期末試験終わったら、遊びに行きましょう。色々教えてもらったお礼します!」


 その後輩君に、一昨日の帰り道でそう言われた。そんなニンジンをぶら下げられてはがんばるしかない。それが、恋する乙女というものだ。


 「さてと」


 この期末、彼女は大きな目標を立てていた。

 平均点八十点以上。

 かつての自分なら絶対無理。だけど今の自分ならきっとできる。だって自分はがんばっている。だから、自分を信じて突き進むのみ。


 「よーし、やったるぞ。見てろよー、目標クリアして……告白してやるんだから!」


 尊敬される先輩から、一歩先へ。

 あいつが自慢できる彼女になってやるんだと、彼女は気合を入れて、机に向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >かつての自分なら絶対無理。だけど今の自分ならきっとできる。だって自分はがんばっている。だから、自分を信じて突き進むのみ。 なんだろう……おばちゃん涙もろくなってきたよ…… [気になる点…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ