第39話 噂のスミレ姫
「それにほら、俺はこんなものもあるし?」
ぴらっと手を翻して見せてきたのはギルドカード。『冒険者ランクC 名前:ライ』
ずりっ……。適当過ぎる偽名にもほどがある。しかも登録しただけではなくそれなりに依頼をこなさないとCまでは上がらない。ということは。
「数年前に前の魔導師長が後見ってことで登録して時々な。実践で色々身につくから面白いしつい」
「……あ、あのじじいぃぃーー!何やらせてるの!?ていうかライルも馴染んでるのがおかしくない!?」
「いや~、意外と性に合うみたいで?」
「はぁ、もういいや……。とりあえずメルナの登録に行きましょう。こっちよ」
無駄に入り口で疲労しながら冒険者登録窓口へ。とは言っても人が来たときだけ来てくれるような状態なので無人だった。
「えーっと。あ、メリーさーん!メリーさんメリーさーーん」
「あらあら、ずいぶん久しぶりに見たと思ったら人の名前を大声で連呼するのやめて頂戴?」
にっこりと笑いながら人の頭にアイアンクローをかますのは辞めて戴きたい。
「ってほんとに痛い痛い痛い!?頭が割れる!」
「割れないわよ!で、今日はそっちの彼女が登録ってことかしら?ちゃんとミルちゃんが説明したのよね?」
「うぅ……頭がリンゴのように握りつぶされるかと……い、いや!メリーさんはそんなことはしないです!か弱い受付嬢様です!ふぅ。で、今回は初めて弟子を取ったのでメルナの冒険者登録に来ました」
「そうねー。遠目に見たときから噂のスミレ姫だろうなーって思ってたのよねー」
あぁ、やっぱりもう勝手な呼び名が付き始めちゃってるのね……と遠い目をする私とフリーズしているメルナ。それを横目にライルも感心している。
「スミレか~……最近使ってる服的にはライラックとか来るかと思ったが確かに目の色で行くとスミレだよなぁ」
「でしょでしょー?やっぱライっちはわかってるねぇ。でもスミレ姫だけじゃ座りが悪いからまだ他に付け足そうとして今まさに迷走中なのよねー。ふわふわの金髪がきらきらだしミルちゃんの弟子だしちょっときらっとさせた名前にしたいよねーって」
「い、いやあぁぁぁぁ!やめて下さいいぃぃー!?」
叫び声に反応してギルドにいた人たちの注目が集まるがメルナの姿が目に入ると、(おっ今話題のスミレ姫だ)(マジで!?おー、噂のスミレ姫ー)(きらふわーかっわいいー、あんな妹ほしいわぁ)(わかるわかるー。この前買い物してるとこにすれ違ってぶつかりそうになったらあわあわしながら謝ってきた上にそれで頭下げて果物落としそうになってさらにパニックしてたりして超~かわいいのー)(えーいいなーそれ。私も見たかった~……。天然かわいいスミレ姫だよねー)(でもでもあの人の弟子だよー。きっとこれから大変だよー)(冒険者登録するみたいだしこれから一人で来ることも多くなったらちょっと声かけちゃう?いっちゃう?)(いいねー。手取り足取りおねーさんたちが教えちゃう?)(お、俺たちも手取り足取り腰取……ぐわあぁ!)(死ね!下種野郎!)(そうよそうよ!かわいい妖精にあんたたちみたいなのは近づけさせないんだから!)etcetc……
ぷしゅー……。
「あ。メルナが現実逃避にショートしちゃった」
「最近ちょこちょこ街で見かけてた上に色々噂もあったから注目の的だったからねぇ。ふふふ、最終的にどんな二つ名になるのか楽しみね!」
いや、もう本人が涙目なので辞めて戴きたい。
「とりあえずメルナは再起動してこっちの書類書いちゃって。ちょっと依頼を見てくるからちょうどいいのがあったら行ってみましょう」
「……は~い」
強く生きろ……。
「王都周辺は人も多いからそんなにちょうどいい討伐系はないと思うけどなぁ」
「んー?あぁ、ライルは移動も徒歩とか馬車だからあんまり距離が遠いとこは行かないか。日帰りベースだろうし……。ちょっとねー、一泊か二泊くらいの距離まではアウトドアに慣れるためにもいいかなーってその辺探してるのよねー」
「あー、なるほど。確かに今後長くやっていくことを考えると早めに体験するほうがいいのかもな~。野営は冒険者の依頼では中々受けられないんだけどなー、騎士団の魔物討伐とかについて行ったりはするんだがどうも過保護だからな~……」
どうやら全く経験がないわけでもないようで意外、とか思いつつざっと張られている依頼書を確認。近場でささっと集められそうな採取系がいくつかとちょっと離れた場所にいる動物の採取がいくつか。この辺からチョイスしたいかなー、と悩んでいる間にメルナの登録が終わって戻ってくる。
ついかわいいからいじっちゃうメルナですけどほんとにかわいいと思ってるんですよ!
さて、メルナの呼び名がどうなっちゃうのかきになるとこです。
……考え中とも言いますが!かわいいのがいいのかかっこいいのが良いのか悩ましいですよね~…。




