第19話 かわいい耳と尻尾がキュート
――翌日――
前日に簡単な手紙で明日の午前ご挨拶に伺いますと連絡しておいたら朝から迎えの馬車とかが来た……。結局午前中一杯は拘束される羽目になってしまったがメルナの紹介や最近の出来事を聞いたりしてなかなか有意義に過ごせた。しかもこうして拘束されている間に人をやって掃除などを終わらせておいてくれたそうで…。至れり尽くせりで申し訳ない限り……。
昼食をご馳走になって問題の家に向かってみる。メルナに道を教えるのもあって王都をふらふらと散策しながら歩いていく。
「ほんとにいろいろあって賑やかなんですねぇ……」
「人がどうしても集まりやすいからね。このあたりの地区は治安も住宅地付近は良いし仕事も沢山あるし。ま、仕事があるから治安が良くなるっていう面もあるけどね」
「働く場所やお金を得る手段がちゃんとあるから犯罪も起こらないってことですか」
「ん、そうね。まったくないとは言い切れないけどね……人が多くいるってことはそういうものかなって思う」
少なくとも王都の多くの部分ではスリなどはほぼいない。南門の外壁近くに少しあるスラム街は除くとしてほとんどの地区で治安がいい。施政者の努力もきっとあるんだろう。ライルたちも頑張ってるんだよねぇ、きっと。街に比較的気軽にライルが出てきているのもその一環なのだろう。安全のアピールも出来るし自分の目で見ることもできる。第三王子はそういう視察に見えない視察がメインの仕事になっているのかもしれない。在学中の仕事で第一王子とは面識があるが王様の補佐ということで忙しそうという感じだった。
「さーて、到着ー。メルナはだいたいの位置は把握できた?」
「はい、何となく、ですけど……。人が多かったりすると迷うかもしれませんねぇ」
「その場合は露天の人に早めに聞くか風の精霊にでも聞いてみるといいわ。風の精霊は基本的に情報通だし必要があれば上から見ればいいし」
「なるほど~。覚えておきます」
落ち着いたオフホワイトの壁に焦げ茶の屋根。実に目立たない地味な見た目の一軒家。が、何も知らずに一歩踏み込むと飛んでくる警告に次いで攻撃の嵐。そんな小さな家が王都で定宿として使う我が家。
さすがにいきなりは対処できないだろうということもあり、踏み込む前にメルナの個人登録を済ませて家に入る。登録なしで入ろうとすると最初は音声の警告のみだがさらに推し進めば攻撃が飛んでくる。第一陣がミーナさんの作ったクイズバトル(不正解ごとに頭上からタライが降ってくる)第二陣がリメイの作った溶岩砲撃地帯、第三陣がピッドの作った……という感じで四段階仕様。四段階目までもし侵入者が突破してきた場合はただ力任せに王都の外まで吹っ飛ばすという単純な仕組み。ただ、本人がいなくても相当な距離を転移させるというためにやたら組み込むときに魔力を消費したのは誤算と言えば誤算……?
キィ……
小さく音を立てて門が開く。メルナと並んでてくてく玄関に向かって歩いていると植え木の茂みから小さな影が飛び出してぶつかってきた。
「ミルさん!?大丈夫ですか?今何か飛んでき……たよう……な?」
「んー。だいじょぶだいじょぶ。メルナにも紹介してくわね」
突撃してきた小さな焦げ茶の影をひょいとつかんで突き出す。ぷらーんぷらーんと手元にぶら下がる焦げ茶の塊。
「かわいい耳と尻尾がキュートなトレードマークのテラよ。地の魔霊だからこの家に住み着いたついでに罠が発動した後のこの辺りの片付けとか手伝ってくれてるの」
「わー……ふさふさ尻尾……かわいい……。テラさん、ですね。メルナですー。よろしくお願いします~」
首根っこを掴まれてぷらぷらしているテラを両手で受け取ってメルナが抱き上げる。くんくんと犬のような仕草で匂いを嗅いでいたが満足したらしくぺろりと頬をひと舐めしてから再び茂みに飛び込んで消えていった。
●登場人物紹介●
●テラ
髪:こげ茶
目:蜂蜜色
土の魔霊。髪と同じこげ茶の犬のような耳と尻尾がある。元気いっぱいな男の子。ミル宅の気まぐれな庭師さん。




