第70話 次は70%を目指す
就任書類が届いたのは翌々日だった。
「神崎さん、署名をどうぞ」と霧島さんが書類を広げた。
タイトルを見た。「全国ダンジョン主任管理者・就任承認書」。
署名した。
「管理画面を開いてみてください」と宮代が言った。
管理端末を開いた。
今まで三つのダンジョンが並んでいた画面が、変わっていた。リストが広がっていた。日本全国のダンジョン名が表示されている。
「……全部、俺の管理下に入るんですね」と宮代が言った。
「三ヶ月かけて段階的に」
アルダから通信が来た。
「神崎さん、全国に四百以上のダンジョンがあります」とアルダが言った。「……やれますか?」
「やります。チームを増やします」
「……また無茶なことを言い出す予感がします」とアルダが言った。珍しく苦笑いに近い声だった。
「霧島さん」と俺は言った。「人員を補充したい。スキルが地味でここに来そうな人材を探してもらえますか」
「私が"押し込まれた"人材を探せってことですか?」と霧島さんが言った。
「そうです」
「……何人引きずり込めるかな」と霧島さんが笑った。「面白い探し方ですね」
「宮代さんも引き続き現地担当を」
「観察眼スキル、全国で使います」と宮代が言った。「遠征も必要になりますよね」
「なります。交通費は経費申請します」
「さすがです」
夕方、管理端末に飯塚からのメッセージが届いた。「お前の管理したダンジョンを使ってやる。それが俺のできる協力だ」。
「ありがとうございます」と返信した。
夜、管理局に一人で残った。
管理画面を開いた。四百以上のダンジョン。それぞれに収益データがある。まだ最適化されていないものがほとんどだ。
俺はノートに書いた。
マナとは上位存在にとっての通貨だ。そのマナが世界すら作れる規模に達するとき——いつか、理想の世界を設計する側に立てるかもしれない。
まずは次の目標。七十五パーセントからさらに一パーセント下げる。そのための実績を積む。少しずつ。
手数料は最初の一歩だった。七十五パーセントが成立した。次は七十四パーセントを目指す。そして七十パーセントへ。
急がない。でも止まらない。
管理画面を閉じた。
全国ダンジョン主任管理者・神崎凌の物語は、ここから本当に始まる。




