表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/22

21 十二の神格義体 (第一章完)


 時同じくして――。

 その声と光は、世界に散らばる選ばれし半神たちを呼び覚ます。

 

 

 


 ――西の荒野。

 

 乾いた風が吹き抜ける岩山の上。

 夜空を切り裂く世界樹を見上げ、二つの影が立っていた。

 

「……とうとう始まったな」


 ダークブロンドの髪を無造作に束ねた青年が、面白そうに口笛を吹いた。

 

「ねぇディオ、『心臓』って、私たちの『グングニル』とどっちが強いと思う?」

 

 その隣。蜂蜜色のウェーブボブを揺らす少女が、不機嫌そうにコインを遊ばせながら訊いた。

 

「さぁな? でも、いずれにせよ――」


 青年は少女からコインをかすめ取り、親指で宙に弾く。


ってみりゃ分かることだろ」


 空中でコインをキャッチし、「表」であることを確認する。

 

「楽しみだな!」


 二ヤリと微笑む青年の左眼は、深紅に揺らめいていた。





 ――極彩色のカジノ街を見下ろす、天空の宮殿。

 巨大な玉座に、一人の巨漢がふんぞり返っていた。

 

 燃える獅子のごとき赤髪。

 高価なスーツとマントを荒々しく羽織っている。

 両脇には、彼に心酔する美女たちがはべっている。

 

「くははははッ! くそったれが、待ちくたびれたぜ!」


 男は獰猛にわらい、眼下の街を睥睨へいげいする。


「ようやく、ぶち殺せる! ようやく、奪い尽くせる!」


 深紅に発光する右拳を天に突き上げ、男は肉食獣のように吠えた。


「唸れ『ミョルニル』! このオレこそが、世界の王だ!!」


 



 

 ――東、夜の森。

 

 カチリ。鞘走る音が、夜気を切り裂いた。

 凛とした女剣士が、抜き放った長刀を血振いし、静かに鞘へ納める。

 一拍遅れて。

 襲いかかっていた狼が、音もなく両断され、地に伏した。

 

「……巫女の神託は真実でしたね」


 女剣士は冷ややかな瞳で、遠く光る世界樹を見据える。

 その言葉に、背後で荷物を背負っていた青年が、心底嫌そうに頭を抱えた。

 

「この地は嫌いです。神託なんか無視して逃げちゃいましょうよ」


「逃げたら、私が斬る」

 ギロリ、と剣士が睨む。


「ひぃ、ごめんなさい、姫様ぁ!」

 


◆ 

 

  

 ――辺境の村。

 せせらぎが聞こえる、穏やかな川辺の一軒家。

 

「……ママ、怖いよ……」


 外の異変に怯え、震える少年の小さな手を、ロゼ色の髪をした女性が強く握りしめる。


「……大丈夫。ママがいる。何も心配ないからね」


 そう言って、女性は愛しい我が子を優しく抱き寄せた。

 だが、その表情は慈愛とは程遠い。

 深紅に染まった右眼が、敵意剥き出しの眼光で世界樹を睨み殺していた。

 

「この子のためなら……神様だって殺してあげる」

 

 

◆ 



 ――地下監獄、最下層。

 光の届かぬ奈落の底。

 

 ジャラッ……。重厚な鎖が擦れる音が、闇に響く。

 両腕を壁に縫い付けられ、厳重に拘束された囚人。

 

 彼は、ゆっくりと顔を上げた。

 伸び放題のブロンドの髪の隙間から、猛禽のような鋭い眼光がぎらりと光る。

 

「……タイミングがいいね。丁度、乾いてきた頃だったんだ」


 男は暗闇の中で、三日月のように口を裂いてわらった。


「さて――。そろそろ、出るとするか」

 


◆ 

 

 

 ――壁も床も、すべてが月銀色に輝く無機質な部屋。

 

 一人の男が静かに佇んでいた。

 腰まで届く漆黒の長髪。

 その両目は固く閉じられている。

 だが、彼は()()いた。

 瞼の裏で、世界の変容を正確に捉えている。

 

 その隣で、白髪の少年が天使のような微笑みを浮かべていた。

 

「……『Ω(オメガ)』も目覚めたね。また、会えるのが楽しみだなぁ!」



◆ 

 


 そして――。

 

 崩壊した戦艦の残骸の上。

 砂塵にまみれたボロ布(マント)を羽織る老人が、ひとり。

 その蓬髪(ほうはつ)の奥にある深紅の複眼が、天を突く世界樹を見つめていた。


 老人は悲しげに、あるいは慈しむように目を細め、風に消える声で呟いた。

 

「……抗ってみせよ、小さき観測者たちよ。――この絶望的な『(ことわり)』にな」





 ――巨鯨街。

 

 頭の中で響く声が消えても、俺の震えは止まらなかった。

 12の神格義体(しんかくぎたい)

 殺し合い、奪え……だって? 

 

 横を見ると、シエルが不安げに俺の袖を握りしめていた。

 記憶を失った、ただの華奢な少女。

 けれど世界は、彼女を「神」と呼び、殺し合わせようとしている。

 

 この少女は一体何者なんだ?

 でも――

 

 

 ヒュゥゥゥ……。

 

 冷たく、乾いた風が吹き抜けた。

 それは、運命が動き出したことを告げる合図のようだった。

 

 

 俺は、まだ震えているその手で、シエルの手をギュッと握り返した。

 

「……ナスカ?」



 遥か彼方に輝く、忌まわしき光の巨樹。

 俺はそれを睨みつけながら、彼女に告げた。



「……君は覚えていないかもしれないけど。俺、約束したから」


「……え?」



「たとえ地獄だろうと……どこまでも一緒にいく、ってね」



 シエルの瞳が揺れ、その中に俺の姿が映り込む。

 

 繋いだ掌。


 互いの熱を確かめ合うように、指に力がこもる。

 その温もりが、いつしか俺たちの震えを止めていた。

 

 呼応するように、左胸の刻印が深紅に輝きだす。


 

 

 ――蒼い灯火が星へと還る夜。

 

 世界の命運をかけた、神殺しの戦いが幕を開けた。



いつも読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!


かなり悩んだのですが、『エデンズアップル』は現在公開している第21話のラストをもって「第一章完結」とさせていただきます。mm


今振り返って冷静に分析してみると、本作は「スマホでの読みやすさ」や「Web小説ならではのテンポ」を完全に無視した、私の趣味全開な作品でした。

自分の書きたいSFファンタジーを優先してしまい、読者の皆様を楽しませる工夫が圧倒的に足りていなかった、と反省しております。


そんなカロリーが高くて読みにくい物語だったにも関わらず、最後まで見捨てずに追い続けてくれた皆様に心から感謝申し上げます!


現在、この反省を活かして、完全新作を真剣に執筆中です。

自分の得意な世界観や設定はスパイスとして活かしつつ、今度は独りよがりにならず「読者さんがスカッとできて、毎話ワクワクできるエンタメ」に全振りした作品を目指しています!


新しい物語を近いうちに投稿いたしますので、そのときにまた皆様にお会いできることを楽しみにしています!

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ