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00 プロローグ


 ――キィィィィィィン……。


 耳鳴りがうるさい。

 世界が、スローモーションのように遠く感じる。

 

 俺は、白濁の砂の上に伏して倒れていた。

 口の中は砂だらけで、酷く乾いている。


「……ぁ……」


 起き上がろうとして、身体に力が入らないことに気づく。

 平衡感覚がない。

 熱い。左半身が、焼けるように熱い。


 ぼやける視線を自分の身体へと落とした。


「…………?」

 

 ない。

 左腕が、どこにもない。

 いや、腕だけじゃない。

 肩も、鎖骨も、左胸の半分までもが。

 強引に毟り取ったように、ごっそりと吹き飛ばされていた。

 

 ヒュゥー……ヒュゥー……。


 変な音がする。

 

 自分の肺が動くたびに、断面から空気が漏れる音だと気づくのに、一拍かかった。


(……ぁ、ぁ……)



 俺は……しくじったんだ。



 急速に冷えていく脳裏に、白い巨神の姿が焼き付いている。

 

 ……だめだ。……行かせない。

 

 街にはリーナがいるんだ。

 お前には指一本触れさせない。

 

 俺は右腕を街の方へと向けた。……はずだったが、うまく動かない。

 腕は痙攣し、力が入らない。

 

 

『お兄ちゃん……助けてッ!!』



 リーナの声が、聞こえた気がした。

 

 脳裏に、最悪の光景が浮かぶ。

 潰され、溶ける。みんな、死ぬ。


「……や、め……」


 声にならない掠れ声が漏れる。

 

 ふざけんなよ……こんなのはダメだ。

 

 動け。動けよ、俺の身体。

 まだ、あそこに家族がいるんだ。

 約束したんだ。絶対に、守るんだ。

 


 力を振り絞り、俺は、右腕で、砂をく。

 ズリ……ズリ……と。


 無様な音を立てて這いずろうとした。

 

 だが……だが、視界が暗転していく。

 絶望が、冷たい闇となって俺を飲み込もうとする。

 


 だめだ……絶対に……たすけ……

 




 温かい気配を感じた。

 誰かが、すぐ傍に立っている。


 ――ドクンッ。


 心臓の音がした。

 俺の心臓じゃない。

 

 背後から、「誰か」が俺を抱きかかえた。

 失われた俺の左半身を埋めるように、柔らかく、温かいものが触れた。



 ――あの少女だった。


 ――その瞳は、この星と同じ蒼い色をしていた。



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