この愛が永遠でありますように
ユラシェは突然のことに目を見開いたものの、すぐに柔和な瞳でちびドラゴンに笑いかける。
「リオンハール様は姿を変えても表情豊かですね。とてもチャーミングで、かわいらしいです」
「怖くないの⁉︎」
「中身が別の人だったら怖いかもしれません。けれどリオンハール様なら、どのような姿になっても素敵です」
「ユラシェぇぇぇーーっ‼︎」
慈愛あふれる心優しいユラシェ。ちびドラゴンの目から、透明な涙がぽろんぽろん飛び散る。
「ユラシェは外見も中身も天使! 大好きだよー‼︎」
「リオンハール。ボールを投げるから、取ってきてくれ」
「え? あ、はい!」
ヨルンは、手のひら大のボールを空に向かって思いきり放り投げた。
「取ってこい、ペットくん!」
「はぁーーい‼︎」
ちびドラゴンは漆黒の翼を広げ、空高く華麗に舞い上がる。ボールが下降するより早く口に咥え、急降下でヨルンの元へと降り立った。
「取ってきました!」
「ああ、可愛い。一生懸命にボールを追いかける姿が健気で癒される。これからの時代のペットは、飼いドラゴンだな」
目尻を下げるヨルンに、ユラシェは複雑な気持ちになる。
(リオンハール様はペットじゃないです! でも……ふふっ。確かにわんこっぽくて可愛い!)
リオンハールの尽きない魅力に、ユラシェの胸は激しく高鳴る。
(わんこ扱いしてもいいのかしら? リオンハール様、怒ったりしない?)
ユラシェはドキドキしながらも誘惑に勝つことができずに、ちびドラゴンの頭にそっと触れる。
「よくできました。いい子ですね」
「えぇっ⁉︎」
「ごめんなさい! だって、わんこみたいで可愛いんですもの!」
ユラシェに褒められて有頂天になったリオンハール。ボールをユラシェに手渡す。
「もう一回褒められたい! ボールを投げてくださいわん!」
ユラシェがボールを投げると、一メートル先にコロコロと転がっていった。
ちびドラゴンはボールを拾ってくると尻尾をパタパタと振り、紫紺色の瞳を輝かせる。
「ご主人様! ボールを取ってきたわん!」
ユラシェはくすくす笑うと、ちびドラゴンの頭をなでなでした。
「とっても上手にできました。偉いですね」
「わお〜ん! なにこの幸せな気持ち⁉︎ 新たな世界を開拓した気がする!」
「ふざけた遊びをするな! ……って、羨ましいぞ。ユラシェ、私にも頭なでなでを‼︎」
「見ておられん! 血液が砂糖水になってしまうわい! ……って、わしにもボールを投げておくれわん‼︎」
両手に木の枝を持って茂みに隠れていた、カリオスとブランドン。我慢ができなくなって、三人の前に飛び出してきた。
「はいはい。ボールを投げますから、拾ってくださーい」
ヨルンはリオンハールを素早く人間に戻すと、やる気のない口ぶりでボールを投げた。
「ヨルン様がボールを投げてどうする⁉︎ ユラシェに褒められたいのだが!」
「わしもユラシェに、頭をポンポンされたいのだが!」
「はいはい。早くボールを拾ってきてくださーい。今ならユラシェの温もりが残っていますよー」
「なにぃ⁉︎」
競うようにボールを取りに行く、カリオスとブランドン。
ヨルンは(図書室に行くんだろう? 邪魔者は私に任せて)と、リオンハールに向かってウインクをした。
「ヨルン様、ありがとう!」
リオンハールはユラシェの手を引っ張って、図書室へと向かった。
「誕生日プレゼントがあるんだ。本の中に入ろう」
「はい」
リオンハールに初めて会った日。ユラシェは花図鑑の中に入って、世界中の花に囲まれた。
あの日と同じ花図鑑かと思ったらそうではなく、リオンハールは『ロマンティックなおとぎの世界』という本を開いた。
リオンハールの魔法の光に包まれて、ユラシェは本の中に入る。
ユラシェが瞼を開けたとき。目先に広がっていたのは可愛いおとぎの国。空には虹がかかり、羽の生えた妖精たちが飛んでいる。並んだきのこの上をぴょんぴょん飛んでいる小人。湖には人魚が泳いでいる。
ユニコーンが空から降りてきた。
「ユラシェ! 雲の上にお城があるんだ。行ってみよう!」
「素敵!」
リオンハールは馬に横乗りになったユラシェを抱き寄せ、手綱を引いた。ユニコーンが空を駆けていく。
雲の上にそびえ立つお城。そのお城の庭には七色に輝く蜘蛛が住んでいる。
リオンハールはその蜘蛛に、ユラシェへのプレゼントをお願いしていた。
「七色の蜘蛛が作った、七色の指輪だよ。光の加減で様々に色が変わるんだ。ユラシェ、お誕生日おめでとう。ボクからのプレゼントです」
「とっても素敵! ありがとう!」
ユラシェは毎年豪華な誕生日プレゼントをもらってきた。けれど、こんなにもロマンティックなプレゼントは初めて。
リオンハールはいつも突拍子もないことをして、ユラシェを驚かせる。恋人になってもときめきが止まることはない。
二人は虹の上に座った。繋いだ手と手に宿る愛。
この愛が永遠でありますようにと、二人は願い、笑い合ったのだった。
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。おしまい✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




