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64.危機的状況の見解の違い

翌朝、咲は目覚めなかった。

万一にも可能性があるのではと思っていたが、その希望は絶たれた。

…しばらくはこの状態だということだ。


エーハルーンが、やってきてリノはここに来られないと言った。

ミワンタは俺に怯えてエーハルーンの影に隠れている。


まあ、そうだろうな。

ナミさんは優しいが、同時にここの掟に一番厳しい。俺たちのような地上から来たやつはともかく、本来、生まれた天界を出られない魂を動かすようなことはしない。


リノが咲を目覚めさせてくれるなら何がなんでも呼び寄せたいところだがそれはできないことを知っている。


「じゃあ、ここの療法士に任せる。」

俺があっさり引き下がったのを見てミワンタが大きく目を見開いた。

俺だって理不尽なことを言うつもりはない。


「ほら、行くぞ。」

「あの…行くって…?」

「岩山に決まっているだろうが。他にどこに行くんだ?」

「え…咲さんは…いいのですか。」

「この状態だと早くても数日は目覚めないんだ。さっさと問題を片付ける。未解決のまま去るのも後味悪いからな。」

「…ありがとうございます!!」

俺は岩山の件から手を引くと思われていたのか、西天界の奴らは顔を見合わせて俺の言葉を半信半疑で様子を伺っている。


「えっと…」

「ギルです。」

療法士が名乗る。


「ギル、咲を頼んだ。何かあればすぐに連絡してくれ。」

「勿論です。」

俺とエーハルーン、その兄妹たちは岩山に向かった。


「昨日の続きからだが…」

「模型は更新してあります。二回目の崩落も加味して、あと二段で終わりです。」

「よし、二手に分かれよう。それぞれの班に土がついて何かあった時に出られるようにするぞ。」

自然と俺はザケール、ナエティアと回ることになった。他の奴らは俺と行くのを恐れているようだった。


全く…


俺たちは崩落の起きた二段上、エーハルーンたちはその下を行くことにする。


「この段は比較的しっかりしていますね。」

ナエティアが岩を叩きながら言う。


そんなことを言った矢先、ゴゴゴと轟くような音とキャーと言う悲鳴が響く。


「エーハルーン、大丈夫?」

ナエティアが下の段なら直接声が聞こえるほど大きな声で風電話をする。


すぐには応答がないが、「今助ける!」とダターンの声が岩の中に響く。

巻き込まれたか?


「降りるぞ。」

来た道を折り返して下に降りる穴を探しに行く。


「なんとか大丈夫です。ミワンタが穴に落ちましたが、ダターン兄が救いました。姉さんたちも大丈夫ですか?」

下から声が聞こえてきた。


良かった。


「進めそうか?」

大声で下に向かって叫ぶと「大丈夫です!」と返事があった。

俺たちが降りてさらに負荷をかけるよりはその言葉を信じてお互いの作業を終わらせる方がいい。

さっきよりも慎重に前に進む。


幸いそれ以上の崩落はなく、出口に辿り着いた。

俺たちの方が早く終わり、スタンド店でリラクフラグランのお茶を飲む。


「思ったより脆かったな。」

「そうね。これ以上放置できないわね。」

ナエティアは何かを考えながら相槌を打つ。


「ナエティア姉さんは、(ミー)になりたいと思ったことはあるの?」

唐突にザケールが尋ねた。


「なに、急に。ないわよ。面倒臭い。土や岩を研究するのは好きよ。でもね、それを産業として伸ばすとか、住民の相談とかそういうのは苦手なのよ。」

「そうですか。どちらも向いているように見えるけど。」

「ふふ、取り繕うのは上手いのよ。そして逃げるのもね。」

ナエティアはいたずらっ子のような笑顔を返す。


「ふーん。まあ、俺も樹になるのはごめんだけどね。」

「大丈夫よ、誰もお願いしないから。」

ナエティアは笑う。


「なんで『樹になりたいか』なんて聞いたんだ?」

「…ふと思ったんです。エーハルーンが生まれるまで、俺たちは樹になるための教育を受けてきました。その中で樹になりたいと思った兄姉はいるのだろうかと。」

ザケールは、俺を真っ直ぐに見て答えた。

何かを俺に伝えようとしている気がした。


先を聞こうとするとエーハルーンたちが戻ってきた。


「お待たせしました。」

「ミワンタ、大丈夫?無事で良かったわ!」

ナエティアがミワンタに駆け寄る。


「姉さん、ありがとう。ダターン兄がすぐに穴を掘りおこしてくれたから、苦しくなることもなかったよ。大丈夫。」

気丈にミワンタは答えるが、身体中が土まみれで所々血が流れている。


「一度引き返しましょう。」

エーハルーンが言うとザケールが風球を作り出し病院に戻った。


ミワンタはギルによってすぐに傷が癒やされると、着替えに家に戻った。


「今回の調査を踏まえて作り直した模型がこちらです。」

全体的に昨日崩落した北側と、今日崩落した南側両端が脆くなっているのか分かる。


「ここと、ここが崩れたら全壊あるいは半壊するな。しかも森側ではなく、工房などの通りに崩れる可能性が高そうだ。」

俺が指を刺すとダターンも「そうですね」と真剣な眼差しで模型を見つめる。


「逆にどこを押さえれば、支えられますか。」

エーハルーンが俺とダターンを見る。


「そうだな。一番下の段を封鎖するか、この段の三割くらい埋めるか…」

「一番下は工房があるのでできれば残したいです。」

エーハルーンが言う。

分かるが安全第一だろう。


「アンセさんの言う通りだ。狭くなるかもしれないが、ある程度一番下は補強しないといけないと思う。岩山全ての重みが一気にきたら、いくら土が多いとはいえ、危険だよ。」

「そうですか。では素材の検討を…」

「そんな呑気なことを言っている状態じゃない。話を聞いていたか。今すぐに手を打たないと危ないぞ!」

俺がそう言うと、エーハルーンはダターンを見る。

ダターンも頷いている。


「どうしたら良いですか。」

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