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ヴィジターキラー  作者: 反物質
第一章 「転生したらチート能力を手に入れたので地下世界を開拓してみる ~生きているだけで世界最強!~」大地神大樹
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1-1

『間もなく~、“エンデ前繁華街”、“エンデ前繁華街”~。お足元にお気を付けてくださいませ~・・・・・・・』

 プシュー・・・・・・、と蒸気機関車が蒸気をあげてホームに滑り込む。レールの上をゆっくりと進み、やがて止まった。その客車の扉が開き、人々がわらわらと出てくる。

「良い時代になったもんだなぁ」

「わざわざ飛ばなくても済むなんて、楽で助かるよ」

 出てくるのは人間だけでは無い。ハルピュイアやリザードマン、ドヴェルグなど、本来であれば魔界の方に主に済む魔族も混ざっている。つまり、この蒸気機関車は魔界を通ってきたのだ。

 そして出てくる者達の中に、17歳ほどの少女が紛れていた。

「~♪」

 少女は村娘のような出で立ちをしているが、赤い生地に金の刺繍が施されたコートを上に羽織っている。栗色の髪は長く伸び、腰ほどにまで届いている。

 そんな彼女の手には大きなトランクが提げられていて、ホームの上をガラガラと滑車が転がっている。

「うーん、こっちに来るのは久しぶりなだぁ。皆、元気していたかな?」

 改札を出て、太陽の光を手で遮りながら辺りを見回す少女。そして、その先に待ち合わせていた人物がいた。

「あ!!トーヤ君!!」

「マナか。久しぶりだな」

 白い生地に金の刺繍を纏った青年が、マナを見つけるなり手を振ってきた。すらりと伸びた身長に、色あせたような金髪をポニーテールにしている青年。一見すると女の聖騎士にも見える彼こそ、「転生者殺し」の筆頭とも言える人物、トーヤ・グラシアルケイプだ。

「シロは今日は一緒じゃ無いのか?」

「うん!今日はお城でお留守番!!あの子が居ないと、何かあったとき心配だからね!!」

「そうか。にしても、事前に遺跡の奴らに伝言を頼んでおいて助かった。おかげで被害を最小限に抑えられた」

「総隊長の感謝のお言葉、誠にありがたくおうけしますっ!!」

 びしーっ!とマナは仰々しく敬礼してみせる。が、すぐににへら、と笑顔を見せた。

「さて、午後一時から定例会だ。報告を向こうの事をたっぷり聞かせてもらうぞ」

「ほいっ!!」

 こうして二人は「対転生者特別防衛機関」本部に向けて歩き出した。






 アストライア王国の魔王「氷帝ゼロ」が帰還してから、3年。最も変わったのは、「転生者」への認識や待遇だ。かつては手放しで彼らの来訪を迎え入れていたが、この時代ではそうも言えなくなった。その理由に「転生者(てんせいしゃ)取締法(とりしまりほう)」という法律が制定された事が大きい。

 元々かつての御伽噺を元に「異世界の英雄」を呼んでいたのだが、これまでは呼んだ彼らをほぼそのまま放置していたのも同然な扱いだった。そのおかげで手綱が常に手放された状態であり、故に無秩序にその力を振るい続けてきた。

しかし近年、ついに召喚した「転生者」の保護や管理を求める「転生者取締法」が制定された。この法律が制定されたことにより大幅に「転生者」の発生人数は減少、特に直近の1年間では事件数が激減したのだ。


転生者取締法

一つ、みだりに「転生者召喚の儀」を行い、異世界から人間を呼び寄せないこと。

一つ、「転生者召喚の儀」を行う際にはその理由を詳細に提示し、「エンデ」の承認を得ること。

一つ、「転生者」を召喚したものは「召喚者」としての責任を負い、明確な記録を残すこと。

一つ、「転生者召喚の儀」で召喚した「転生者」について、必要最低限の教育を施すこと。

一つ、万一「転生者」が犯罪行為その他迷惑行為を働いた場合、その「転生者を」呼び寄せた「召喚者」にも同等の責任を問うものとする。

一つ、「転生者」はその力をみだりに振るってはならない。

一つ、「転生者」は法律等に反する行いを働いた場合、「対転生者特別防衛機関」(以下、「転生者殺し」)の判決に従うこと。これに反抗した場合、「転生者殺し」はその罪状に応じた対処を行い、場合によっては現行犯で処刑することもやむ無しとする。




 一方で問題になったのは、この「転生者」をピンポイントで規制する法律が制定されたため、今度は「転生者」への差別や迫害が浮き彫りになったことだ。元々「転生者殺し」が発足したように一定数は反対勢力が存在してはいたのだが、この法律の制定によりその迫害行為がある意味正当化され、危険度の低い「転生者」への強い風当たりが問題となっている。

 また、この法律が施行されたところで未だに「異世界の英雄」を盲信するものも少なくは無く、ギルドに無断で「召喚の儀」を行い「異世界の英雄」を召喚するものも少なくは無かった。本来報告を受けている人数よりも遙かに多い「転生者」がギルドに在籍しているのも事実であり、これらをどう対処していくか、と言うのが今後の課題である。










「さて、これより定例会議を行いたいと思う。まずは“重機動部隊 隊長”エミリア」

「うむ」

 金の鎧を纏い、燃えるような赤髪を巻いた女性がうなずく。

「つい先日、“立川護(タテカワマモル)”による不純異性交遊”と“原生モンスターの過剰討伐”が確認された。具体的には“過剰なステータスを用いて強引にダンジョンを侵攻し、踏破し終えた後も繰り返し同じダンジョンに立ち入った”との事だ」

 彼女の話を聞いているメンバーは、難しい顔をして手元の資料とにらみ合っている。

「奴は“ガーディアン”に転職した途端に横柄な態度になり、自身の“防御”や“精神”のステータスをひけらかし、奴の実力に見惚れた女の冒険者と交わると言った問題行動が散見されるようになった。こうしたことが度重なり、今回討伐に踏み切った」

「成る程。この件に関して俺は関わっていないが、具体的にはどう対処したんだ?」

「第一作戦は、“重機動部隊”による防御力強行突破作戦を実行したのだが、あまりにも高すぎる防御力に断念した。次に化学物質を用いた作戦を考案したが、奴自身“状態異常”を全く受け付けないことと周囲への環境に被害をもたらす恐れから却下した」

「で、最終的にどんな手を使った?」

「“水攻め”だ」

 彼女の声を聞いた者が、トーヤを除き一瞬ギョッとした。

「“重機動部隊”と“研究部”、“技術部”合同で“橋”を作り、そこに奴をおびき寄せた。そしてわざと橋を落とし奴を水中へ引きずり込み、大火力で強引に奴を水面に上がらせず、結果として“溺死”させる方向でどうにか片を付けた。」

 まるで超大型モンスターを討伐するみたいな扱いだな・・・・と誰かが言葉を漏らした。

「・・・・・・・総隊長、一つ良いか?」

「どうした」

「“立川”はもともとあなたの“クラスメイト”だったハズだ。この件に関して、何か思うところはあるのか?」

「・・・・・・・・・・確かに、俺はあいつとは顔見知りだった。実際無効に居たときも俺をかばうようなことはしてくれた・・・・・だが、」

 はあ、とトーヤは大きくため息を吐いた。

「だからこそ、今回の件には失望したな。結局根がどんなに良い奴だったとしても、“力”を手にすれば人が変わったようになっちまう。今回がその良い例だ」

 トーヤは会議に参加している全員を見渡しながら、この件に関してこうコメントした。

「この世界で俺たちが“力”を欲しているのは、端的に言えば“生き延びるため”だ。()()()()()()()()()()()()。このようにな。くれぐれもこんな愚かな真似をしないよう、皆も気をつけるように。・・・・・次は“隠密機動部隊 隊長”シュヴァルツ」

「はい」

 かつて「黒鉄徹」の討伐作戦にて、騎士として振る舞っていた暗殺者。彼は一部隊員から成り上がり、隊長へと昇格した。

「俺は総隊長と“魔術部隊 隊長”クロウリィと“知念賢人”の捕縛に取りかかった。奴は“6属性の魔法を扱う”という、“魔法生物学”的にあり得ない特性を持っていた。それを無自覚なのか自覚があるのか解らんが、それを周りにひけらかしては冒険者達の希望やプライドを折って回っていやがった。さらに今回、警備の制止を無視して“虹の遺跡”に侵入したと言う通報を受けて、現場に向かった。当初は逮捕の予定だったが、知念が抵抗の意思を示したことにより、“逮捕”から“討伐”に踏み切った」

 あのガキか・・・・という声が誰かから漏れる。

「最終的に総隊長のお力により奴を早急に討伐できたものの、“虹の遺跡”の内部と“クラヤミマモリタツモドキ”の住処は荒らされてしまった。幸い“()()()()()() ()()()()()によって事前にモンスター達に情報伝達されていて、生態系自体にはさしたる影響は無かったものの、現在“技術部 環境保全課”によって遺跡の修繕を行っている最中だ」

「成る程。報告ありがとう。それじゃあ次は、“魔獣引率部隊 隊長”マナ」

「はいっ!」

 重苦しい報告が続く中、マナの明るい返事が会議室にこだまする。

「私たちは現在“アストライア王国”と交流をしていて、その敷地内に私たち“対転生者特別防衛機関”の支部を設けることに成功しました!!」

「うむ、具体的にはそれは“黒鉄徹が支配していた国を統治し、その領土をアストライア王国の領土に併合する”形で既に2年前に達成しているな。それからどこまで進んだ?」

「はいっ!このため、私たちはアストライア王国から支援を受けることが出来るようになりました!!そして“鉄道”をしくことに成功して、ごく一部だけですけど、自由に“魔界”と“天界”を行き来できるようになりました!!」

「そうだな。これのおかげで限定的ではあるが、魔族とも共存する基盤が整い始めて居る。やっている規模で言えば、マナが最も大きな成果を上げている」

「えへへー」

 マナはにへら、とはにかんだ。荒んだ現場に身を置いているにも関わらず、彼女の純粋さは3年前からほとんど失われていなかった。寧ろ、この環境に慣れた今の方がよほど彼女の本来の性格が表に出ている。

「最後に“研究部 解析課”ネロ部隊長」

「はいよ。まずは1ページ目を見てほしい」

 ネロは皆に資料をめくるように促した。

「既に報告はされているかと思うけど、ここ数ヶ月で“転生者”による被害は激減し、治安は改善傾向にあるね。“転生者取締法”のおかげである程度彼らに教育を施すことが出来て、モラルも守られるようになったみたいだ。・・・・・・・・・だけど」

 ネロは少々声のトーンを落として続ける。

「一方で、“転生者”そのものの被害は過激化している。元々対処の難しい奴らだったけど、年々輪をかけて手を焼くようになっている。更に、悪い知らせがあるね」

「悪い知らせ?」

 トーヤが繰り返すと、ネロは神妙な面持ちでうなずいた。

「これまでは彼らは“ステータス”や“スキル”に依存した能力を持つ傾向にあったけど、近年ではこれらとは独立した性質を持つ者も報告されている。つまりこれは、総隊長の“体質”での無効化が難しくなりつつある、と言うことだね」

 どよっ!!と、その場がどよめき立つ。「って事は、総隊長でも相手が厳しいって言うことなのか・・・・・?」「奴らに悩まされる日々がまだ続くのか・・・・・?」などと泣き言が聞こえる。

 しかし、トーヤはパン!!とその場で手を鳴らした。

「静粛に」

 決して荒いものでは無いが、凜とした鋭い声は一瞬で会議室の動揺をかき消した。

「確かに、“システム”に干渉しない術を持つのは厄介極まりないのは事実だ。だが、だからといって、俺たちに手が無いわけじゃ無いだろう?」

 と言って、トーヤは左の手の甲を見せた。

「先ほどは“必要以上の力は身を滅ぼす”と言ったが、奇しくもそれらに対抗できるのが“必要以上の力”だ。俺は“転生者殺し”として、ここに誓う_____“絶氷の龍紋”と“フラガラッハ”にかけて、俺は奴らに屈しない」





「奴らが“チート”を使うのであれば、俺たちが“チート”を使わない道理は無いだろう?」





 おお・・・・・・・と言う言葉とともに、会議室から拍手が上がる。

「それに、俺以外にも“システム”以外で体躯出来る手段を持つ奴は何人か居る。嘆くのは全ての手が無くなったときだ。それまでは、絶対に諦めるな______さて、報告は以上でいいか?」

「うん」

「そうか。それじゃあ定例会はここで____と言いたいところだが、俺からも少々雲行きの怪しいことを言わせてもらう」

「「「・・・・・・・・・??」」」

 皆が訝しむ中、マナだけは緊張の面持ちでトーヤを見ている。

「これは会議が始まる前にマナからもらった報告だが・・・・約2年前に“ウォーレ・ダッケンランカップ王国”が滅亡したのを覚えているか?」

「そう言えばありましたね。それが何か?」

 あっけらかんと返すシュヴァルツに、トーヤは険しい表情を浮かべる。

「そう、俺も含めて皆“当たり前のように”受け止めている。この時点でおかしいんだ」

 皆が困惑の表情を見せる中、トーヤは重々しく尋ねた。





()()()、“()()()()()()()()()()?」





「滅びた・・・・原因?」

 シュヴァルツはトーヤの言葉を繰り返した。

「おかしいんですよ・・・・2年前の新聞の記事に“ウォーレ・ダッケンランカンカップ王国 滅亡か?”って言う記事があって、ちょうどそれを見つけたらシロちゃんが吠えだしたんですよ」

「それを聞いて何かあると踏んだ俺とグーフォで、当時の記録を出来うる限り探ったんだが・・・・・不自然なことに、誰もそのことについて調査していないんだよ」

「「「え・・・・・・・・・・・」」」

 平静を取り戻した会議室に、再びどよめきが波及する。

「焚書とかされたのでしょうか・・・・・・?」

「確かにその可能性もなくはないが・・・・・だとしても、記録の残り方がおかしいんだ。調査記録はおろか、こういった政治に関する専門家ですら、誰も言及していないんだ。記事の内容も“一つの王国が滅んだことを、我々は早く受け入れるべきだろう。”と締めくくられている。明らかにおかしいんだ」

 だから、とトーヤは続ける。

「この件に関して、俺は総帥に“ウォーレ・ダッケンランカップ王国”の調査許可と、本部の調査隊の協力を要請したいと思う。この数年間で、お前達は嫌というほど“転生者”のもたらす“人災”を見てきたはずだ。奴らはどこで関わっているか解らない」

「うん。私もシロちゃんを連れて行きたい」

「そうだね。ボクも総隊長殿の意見に賛成するよ。研究者として、放っておけない」

「では、今後の方針は決まったな」

 そして定例会議を、トーヤはこう締めくくった。







「総帥に先ほどの件について報告する。許可が下り次第、再び会議を開こう。それまで、各自職務にいそしむように。以上。」


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