表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴィジターキラー  作者: 反物質
第二部 第0章
94/110

プロローグ

 とある樹海の奥深く。そこに鎮座している古代の遺跡は、6つの紋章を持つ石の扉に守られている。そこに、彼らはやってきていた。




「ケント!!あれが伝説の遺跡よ!!」




「うわぁ・・・・・見るからにヤバそうな雰囲気だなぁ」




 魔法使いの言葉に、ケントと呼ばれた少年はぼんやりとつぶやいた。まるでビルの電光掲示板に表示される広告を眺めるような、ほぼ無関心なまなざしで、その扉を見据える。




「確か、この奥に古代のお宝が眠っているだとか・・・・そういう噂があるようだ」




「へー。じゃあ行ってみるかぁ」




 と言って、その扉に近づこうとしたときだった。




「ちょっと、そこの冒険者たち」




「ん?」




 急に背後から呼び止められて、ケントたちは振り返る。




「ここから先は立入禁止ですよ。ギルドでそう制定されているんです」




「立入禁止?なんで?」




 ケントは興味なさそうに尋ねた。




「この遺跡には太古より棲息しているドラゴンが居るんです。それを保護するために、ギルドではこの“虹の遺跡”の立入を禁止して_______」




「じゃあ、この遺跡にはそんな希少なモンスターが居るんだ。戦ってみたいなぁ」




「なんだか、わくわくするわね!!」




「腕が鳴るな!!」




「ダメですって!!」




 ギルドの男性が説明している間にも、彼らは勝手に盛り上がってしまっている。まともに聞く耳を持たない。




「でもどちらにしろ、この“虹の扉”を開かない限りは先へは進めません。これは炎、水、氷、雷、土、風の6属性の魔力を流し込まないと開かない代物です。ですから、ここはお引き取り________」




「6属性って事は、ケントの出番ね!!」




「あいよー」




 魔法使いがそう言うと、ケントは「虹の扉」に手を触れた。そして、少年が念じると扉の紋章が輝き、ゴゴゴゴゴ・・・・・・・と開いてしまった。




「え、えええええええええっ!?」




「えっへん!!」




 驚くギルドの職員に、魔法使いは得意げにする。




「ケントは“6つの属性の魔法全て使いこなす”、稀代の“勇者”なのよ!!この程度、訳ないわ!!」




「これがどれぐらいすごいのかわかんないけどねー」




 まるで自分が何をしているのか解らない、といった様子でケントはポリポリと頭をかいた。




 本来生物が宿すことの出来る魔力はせいぜい3属性が限界で、1,2属性を持っているのが通例だ。だがこの少年______ケントは6つの属性を扱うことが出来るという、前代未聞の力を持っていた。加えてその魔力量も人の6人分にも上る膨大なもので、この圧倒的な属性から「全知全能の勇者」と呼ばれている。




「それじゃ、行こっか」




「だ、だから待ってください!!」




 そのままズカズカと遺跡の方に歩んでいく彼らに、なおも男性は呼びかける。




「この先に居るのは“古代のモンスター”です!!()()()()()()()()()()()()!!だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()!!そんな事をされたら_____」




「安心しろ。ケントにかかればどんなモンスターでも倒してくれる。心配は不要だ」




 と、女騎士にそう遮られた。その間にも彼らは遺跡の中に消えていく。ギルドに所属する彼は一行を追うために遺跡に入ることが出来ない。




「違うんです!!そのモンスターは保護対象で、討伐を禁止されている種類なんです!!だから・・・・・・・・・ああ・・・・・・・」




 男性の呼びかけも敵わず、彼らは遺跡の中に消えてしまった。この遺跡に入る権限を持たない男性は、止めに後を追うこともできない。




 そもそも彼らを止めようとしたところで、最悪その実力に敗北を喫してしまうだろう。男性はポケットに手を入れ、金属板を取り出した。




「もしもし、こちら“虹の遺跡”前ベースキャンプ。“知念賢人(チネンケント)”と思われる冒険者一行が遺跡に侵入してしまいました!!・・・・・・ええ、たった一人で“虹の扉”を開きました。本人で間違いないかと・・・・・・はい、解りました」




 ギルドの男性は、切迫した表情で「通信端末」に告げた。












「“対転生者特別防衛機関”の出動を要請いたします」










「ウギャァウウ!!」




「グルルルル・・・・・・」




「流石は“虹の遺跡”、太古の遺跡だけあって随分モンスターが多いわね」




「いい加減疲れてきたな・・・・・・」




 虹の遺跡を進む一行はモンスターの数に手を焼いていた。人の手が入っていないだけに、原生生物の数は他のダンジョンの比では無かった。




「それじゃ、僕も参戦しようかな」




 と言うと、ケントは剣をモンスターの群れの方に掲げた。




「“炎よ”!!」




「「ギャァアアアアアッ!?」」




 ただ唱えただけなのに、前方一帯に爆炎が生じる。巻き込まれたモンスターは皆一網打尽にされた。




「ギギ・・・・・・・・」




 しかしながら、炎に対して耐性のあるアルマジロ型のモンスターはかろうじて耐え忍んだ。動きこそ鈍っては居るが、消し炭になった他のモンスターよりは健闘しているだろう。




 だが、そんな彼らにも無情に災厄は降りかかる。




「“水よ”!!“大地よ”!!」




「ギッ・・・・・・」




 生き残ったモンスター達の頭上から、足下から、無情にも魔法が襲いかかる。水の魔力による奔流で天井が崩れ落ち、隆起した岩盤で床のタイルが根こそぎ剥がされる。




「相変わらずとんでもない威力ね」




「うむ、正直私たちが意味が無いような気がするな」




「え?こんなもんじゃないの?」




 ケントは彼女たちがうなだれている理由に気付いていなかった。全てが自分基準なため、彼女たちの苦悩・・・・・否、この世界の魔法に携わる全ての人間の苦悩が、彼には理解できないのだ。




「ギシャァアアアアア!!」




「やれやれ、次から次からと切りが無いな」




 沸いて出てくるモンスターに、ケントはほとんど興味を示さない。まるで蟻の巣に水を流し込むがごとく、彼らに魔法を容赦なく浴びせようと剣を掲げる。




 だが、ここで奇妙な事が起こった。




「!!」




 モンスター達が何かを察したように頭を上げると、踵を返して逃げ出したのだ。




「何だ?モンスター達が逃げ出したぞ」




「ケントの魔法が強すぎて、勝てないって思ったんじゃ無い?」




「そんな逃げ出すほどの事かなぁ」




 うーん、とケントは顎に手を当てて考えるようなそぶりをする。実際考えているのかどうかは疑問だが。




「でも、これでモンスターがいなくなったから進みやすくなったわね」




「そうだな、早くドラゴンの元に行こう」




「みんな焦りすぎだって。ゆっくり行こうよ」




 そう談笑しながら、一行は遺跡の奥深くに進む。しかし彼らは見落としていた。基本的にモンスターは好戦的故、一部を除いて基本的には逃げ出さないこと。そしてそんな彼らが逃げ出すのは、普通では無い事態が起こっていると言うことを。












「さて、また扉だね」




 遺跡の最深部にたどり着いた彼らは、表にあった扉と同じ「虹の扉」の前に来ていた。きっとこの奥に、かの希少種ドラゴンが潜んでいるに違いない。




「さあ、行くわよケント!!」




「前衛なら任せろ!!」




「そんな気張らなくても大丈夫でしょ・・・・・・・よっと」




 ケントは興奮した様子の彼女たちをいさめながら、扉に手を触れて魔力を流し込む。ゴゴゴゴゴ・・・・・・・と、扉が仰々しく開かれていく。




「さて、そんじゃぁちゃちゃっとやっちゃいますか・・・・って、あれ?」




 扉をくぐり抜けたケントだが、思いがけない光景に目を丸くした。その先に居たのはドラゴンでは無かく、黒いスーツを身に纏った男女だった。マフラーをしたやや小柄な男性、白いコートを纏った長身の女性、紫のローブを纏った痩せぎすの男性が待ち構えていたのだ。




「ええと・・・・・・君たちはもしかして、ドラゴンが人の姿になったのかな?」




「んな訳ないだろ。ラノベの読み過ぎだ」




 マフラーを巻いた男性が歩み寄り、一枚の紙を見せた。




「な、なんかヤバくないかしら・・・・・・」




「ケント、もしかして入り口の者は・・・・・・」




 その紙を見た少女二人は、青ざめた様子でケントにおずおずと話しかける。そんな彼女たちのことなど完全に無視し、ケントはのんきな様子で頬を掻いた。




「あれ?僕またなんかやっちゃいました?」




「ああ。僕またなんかやっちゃいました。」




 ポリポリと頬をかくケントに対して、男性は些か苛立ち気味に同じ言葉を繰り返した。




「俺は“対転生者特別防衛機関 執行部 隠密機動部隊隊長”シュヴァルツだ。お前達に罪状を伝えに来た」




 シュヴァルツは首元のマフラーを指で押さえ、口元を露わにしてケント達に告げた。




「“知念賢人”貴様ら一行、“立入禁止指定区域への無断侵入”および保護指定モンスターへの加害行為により“魔獣保護法違反”の疑いで逮捕する。入り口にギルドの者が居たはずだが、そいつの指示を無視したと聞く。だから本当は無断どころじゃ無いな」




「でもそれを言ったら君たちも勝手に立ち入っているでしょ?なんで一方的に言われなくちゃ行けないんだ?」




「だから言っているだろう?俺たちは“対転生者特別防衛機関 執行部”だ。残念ながら立入禁止対象には該当しない。でないとお前達みたいなのを逮捕できないだろう?お前はちゃんと言葉を勉強していたのか?」




「失礼だな!!これでも高校には通っていたんだぞ!!」




 シュヴァルツの言葉に頬を膨らませるケント。だが、後ろの魔法使いが血相を変えて賢人の肩を叩いた。




「ねえ、こいつら“転生者殺し”よ!!ケントを捕まえに、わざわざここまで来たんだわ!!」




「え?“転生者殺し”?」




 不穏な単語に、賢人は嫌な顔をする。




「正式名称は“対転生者特別防衛機関”っていうギルドの機関の一つよ!冒険者ギルドの中でも特別“転生者”に対する取り締まりを行っている機関で、その性質上“転生者”に強い抑止力を持つ事から“転生者殺し”って呼ばれているのよ!!」




「うへぇ・・・・・最悪だ。僕はただ冒険者として活動していただけなんだけど・・・・・」




「お前の場合、“ただ”っていう言葉の限度を考えた方がいい」




 シュヴァルツは書類をしまうと、シュラ・・・・と剣を抜いた。




「確かにお前は並の人間などよりも遙かに優れた素質を持つ。“6属性の魔力”を持つものなんて言うのは見たことが無い。だが、それをお前は所構わずひけらかして、様々なダンジョンやフィールドを破壊して回った。ここの遺跡のようにな」




「いや、だって・・・・・魔法を使うと大体なんか壊れちゃうんだもん」




「それをどうにかしろって言ってんだよ」




 苛立った様子でシュヴァルツは唸る。




「普通は誰かに魔力の制御方法とか、魔法の理論とかを教わらなくちゃ行けなかったはずだ。これはもうこっちの世界じゃ“義務教育”の範囲だし、それに触れる機会なんていくらでもあったはずだ」




「だったらそういうのを教えてくれれば良かったのに」




「ギルドは学校じゃねぇんだ。人に何を教えるとかそんな強制力は無い。お前の言っていた高校だって、義務教育でも無いのにわざわざ入試を受けて入ったんだろうが。それと同じだ。何でもかんでも他人の所為にして、“わかんない”で終わりにするな」




 ったく、これだから転生者は、とシュヴァルツは吐き捨てた。




「さて、先ほども言ったとおり俺はお前達を逮捕しに来た。ここで投降すれば痛い目には遭わせない。さもなければ______」




「“風よ”!!」




 とシュヴァルツが話している最中に、賢人は剣を掲げ、シュヴァルツに向けて魔法を放った。とっさに男女は飛び退いて避けたが、一瞬遅ければ巻き込まれていただろう。




「悪いけど、そんな理不尽なことを言われて“はいそうですか”って捕まるわけには行かないね」




 賢人はシュヴァルツ達に切っ先を突きつけている、シュヴァルツ達の言葉に従う気は無いらしい。




「ねえ!!ケントってば!!やめて!!」




「ここは投降しろ!!彼らは本当にヤバイぞ!!」




 後ろの少女二人は既に事の恐ろしさに気付いているらしく、ケントに警告し続ける。だが、既に賽は投げられた。




「お嬢ちゃん達。悪いがコイツが俺たちに魔法を放った以上、俺たちはそれなりの対処をしなければならない」




 そう言って、シュヴァルツはヒュン、と剣を振るった。









「“対転生者特別防衛機関 執行部 隠密機動部隊隊長”シュヴァルツ、これより“()()()()()()”に基づき、“知念賢人”に“執行”を言い渡す」




 シュヴァルツが宣言すると、ガァン!!という火薬が炸裂する音とともに、賢人の頭が跳ね上がった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ