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ヴィジターキラー  作者: 反物質
第七章「現代でも最強のおっさん、異世界帰りの勇者でした。」見返再三
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7-6

「どらぁっ!!」

 見返は拳を強く握り、勢いよく踏み込んだ。軽くアスファルトにひびが入るほどの脚力で、常人にはあり得ないスピードで肉薄する。

 そしてそれを、ゼロが黙って喰らうわけが無い。ゼロは振りかぶられる拳を華麗に避けると、見返の顔面に向けて錆びたパイプを振るった。

「フッ!!」

「ぐあっ!!」

 バゴン、と薄い金属が反響し、見返の頭部がのけぞる。が、見返はすぐに持ち直しすかさず拳を振るう。それをゼロはしゃがんで回避し、腕翼で見返の腹を殴りつける。

「グフッ!?」

 流石にパワーが違うのか、思いっきり見返は吹き飛んだ。アスファルトの上をゴロゴロと転がる。

「死ね」

「やだよっ!?」

 ゼロはすかさず飛び上がり、見返の頭部目掛けて踵を振り下ろす。見返は更に寝返りを打つことで回避し、ダンッ!!とアスファルトの地面を軽く揺らした。

「(こいつ、見た目に反して一撃が結構重いな。“絶対防御”を発動していても吹き飛ばされる。伊達に魔王じゃないってか)」

「(チッ、“絶対防御”か・・・・・・・かろうじて吹き飛ばすぐらいは出来るが、全くダメージを与えられん。“転生者”ってのは何奴もコイツの自分本位なスキルばかり頼ってやがる)」

 息も吐かぬほどの激しい攻防が路地裏で繰り広げられる。それを見ていた霧島は

「ヤベェ・・・・・よくわからねぇが、とんでもねぇ事が起きている・・・・」

「マジで何なの・・・・・マジあり得んくない・・・・・?!」

 と戦慄していた。座り込んだ彼の腕には、小便で下半身をぬらしたギャルが涙目で絡みついていた。

「(さて、コイツをどうにか伸してやりたいが肝心のダメージが入らない。だが、俺の見立てが正しいなら・・・・・・)」

 ゼロはしばし見返ともつれ合った後、廃墟の窓ガラスを腕翼で叩き割った。そして見返に中指を立てて挑発しながら

「来いよ」

 とだけ告げて、華麗に窓枠をくぐり抜け廃墟の中の闇に消えていった。

「上等だ!!“元勇者”舐めんなよ!!」

 見返もゼロの後を追い、窓枠を飛び越える。

 中は当然と言えば当然だが、照明が一切付いておらず、加えて外も日が落ちているためほぼ暗闇の常態だ。見返はしばし闇をにらみつけていたが、目視では把握できないと悟り、

「メニュー起動。スキル行使“生命探知”!」

 と唱えて、虚空に青く輝く「窓」が表示される。

「(さて、“ダンジョンマップ”が表示されたが・・・・・相手もなかなか利口な真似をするじゃないか)」

 廃墟のマップが表示されるが、そのほとんどの空間に魔力の反応が出ている。「窓」自体の明かりで照らすと、パキパキパキ・・・・と床や壁、天井に霜が降りてきているのが見受けられた。

「(だが、いくら何でも奴自身は魔王だ。奴の魔力はこの程度でかき消せるはずが無い)」

 そして、見返は「窓」を見やる。そこにはまんべんなく魔力の反応が出ている中、一際濃い反応が出ていた。

「(ちょうどこの真上か・・・・・・このまま階段を上がっても奴に気付かれる可能性があるし、何よりも面倒だ・・・・・()()()()()())」

 そして、見返は掌を天井に向け、魔法を唱えた。

「“レーザービーム”」







 商店街の居酒屋の建ち並ぶ区画で、酔っ払いの会社員が休日出勤の夜に浮かれていた。

「うぃ~・・・・酔っちまったよ・・・・・」

「でも足んないよなぁ~・・・・・・」

「もう一件行く?」

「行っちゃう?」

「行っちゃう~・・・・・?」

「「行っちゃおっか~!!」」

 休日出勤の上残業という超ブラックな労働環境から解放されたからか、ヤケクソ気味に居酒屋を飲んで歩いて居る。

「せっかくだから、キャバクラ行っちゃおうか!!」

「サタデーナイトフィーバー行っちゃうか!!」

 などと、既に酔っ払ってベロンベロンの親父二人。だが、そんな彼らは





ドゴォオオオオン!!という轟音とともに廃墟の屋上を突き抜けて光の柱が立ち上った。





「「ふぉ?」」

 突然響き渡った轟音に、おっさん二人はのっそりと振り返った。

「な、なんだぁ?」

「飲み過ぎて幻覚でも見てんのか?」

 などと言いながら周りを見回すが、どうやら見間違いでも聞き違いでも無いらしく、商店街の人々はざわついている。と言うか寧ろ、酔っ払いだった二人の酔いが若干覚めてしまったようだ。

「なんだべ。ちょっくら見ていくか」

「んだべ、んだべ」

 と、二人はフラフラと夜の町を歩いて行く。彼ら以外にも、既にお祭り騒ぎの大好きな野次馬共も光の立ち上った場所に向かって移動し始めて居る。








「あー・・・・・ちょっと加減ミスったな」

 見返はボリボリと頭をかいた。彼の頭上には上の階どころか屋上までぶち抜いて、星の瞬く夜空が見えてしまっている。

 だが、今の一撃で確実に魔力の反応は消滅した。未だに部屋の中には霜が降りているが、今の魔法の衝撃でほとんどが吹き飛んでしまっている。

「さて・・・・・よっと」

 見返は軽く力を貯めるようにしゃがむと、そのまま一息に飛び上がった。見返の放った光属性の魔法でぽっかりと空いた大穴を通って、そのまま上の階に着地する。

「あれは・・・・・奴が持っていたパイプだな。転がってるって事は仕留めたって事だな」

 見返は傍らに転がっていたパイプを拾うと、辺りを見回した。すると、ボロボロになったプラスチック製の入れ物が目に付いた。

「(こういうのを見ていると、なんだか開けたくなるな)」

 うず・・・・・と見返はその入れ物に興味を示した。「勇者」時代の習慣でダンジョンや民家の宝箱を物色していた彼には、半ば習性として身にしみていた。

「(まあ、こっちの世界だからロクなものは無いだろうが・・・・・)」

 そして、見返は「()()()()()()()()()()()、プラスチックの入れ物の蓋に手をかけ、そしてそれを持ち上げると・・・・・・





 ガッ!!と、巨人の腕のような腕翼が見返の首をつかみあげた。





「ガッ・・・・・・・!?」

 見返は油断していた。プラスチックのケースの中には魔力の反応は無かったはずだ。だがその中からゼロが腕翼を伸ばし、見返の不意を突く形で急所の喉に手をかけたのだ。

「(嘘だろ・・・・・!?“生命探知”は働いていたはず・・・・・なぜ、引っかからなかった!?)」

「・・・・・・って思っているな?」

 ゼロはギリギリと締め上げながら、不敵に笑って見せた。

「お前は随分異世界での感覚が染みついているみたいだな?だが、“スキル”に頼ってっからこんな目に遭うんだぜ?」

「な、なんで・・・・・魔力、を・・・・・・」

 ゼロはさらに細い指を見返に触れ、パキパキと凍らせ始めた。

「簡単だ。“息を潜めてたんだよ”。お前の頭上に来る位置に高密度の氷塊を作って、それに攻撃させた。まさかこんな暴挙を振るうと思わなかったが・・・・結果的に自分から掛かってくれて助かった」

「うぐ・・・・・ぐぐぐ・・・・・そ、そんなふざけたやり方で・・・・・」

「成る程。じゃあそんなお前は“ふざけたやり方で釣られて反撃を喰らったバカな勇者”だな」

 ひとしきり冷気を浴びせたゼロは、そのまま見返を床にたたき付けたのちにぶん投げた。

「ガハッ!?」

「そんなバカ正直に居場所なんか教えるか?魔力を潜めて相手を攪乱させるのなんざ、常識だろうが」

 見返は素早く立て直し、ゼロに向き直った。

「(コイツ・・・・・本当に魔王なのか・・・・?魔王と言うには、あまりに暗殺者的な動きをしやがる・・・・・だが)」

 見返は不敵に笑って見せた。その手には、先端を斜めにカットされたパイプが握られていた。

「(武器があればこっちのもんだ・・・・・・“勇者”を舐めるなよ!!)」

 ドッ!!と、見返は勢いよく踏み込み、ゼロに肉薄した。


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