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ヴィジターキラー  作者: 反物質
第六章 「完璧主義者(パーフェクショニスト)の魔王は、仇なす者全てを徹底的に蹂躙す」黒鉄徹
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6-23

「だって・・・・・わたし、人をころしちゃったんだよ?!それが、よかったなんて!!」

「直接手を下したのはお前じゃ無いだろう?お前がそれに罪悪感を感じること自体、そう出来ることじゃない」

「でも!!わたしは勢いのままに“しんじゃえ”って思ったんだよ!?そんなの・・・・・」

「俺は罪悪感というものが無い」

「____________!!」

トーヤの衝撃的な一言に、マナのみならず他の仲間も唖然としている。

「正確には“敵と見なした者に対して”って前書きが付くけどな。別段敵だと思わなければ人として見ることは出来るし、やむを得ず手に掛けたときは精神的にかなりしんどくはなる。______だが」

 トーヤの瞳の奥に暗闇が広がり、言葉から温度が消える。

「逆に言えば、一度敵として見たらもう何の感情も湧かない。これまでに何人もの転生者を殺してきたが、そいつらを思い起こしても何とも思わない。手に掛けたことも、命を奪ったことも、公開したことは無いんだ」

「・・・・・・・・・・・」

 マナは、彼の心の闇の一端を垣間見たような気がした。道理で「執行」という精神的な負担が大きい仕事を進んで出来るわけだ。彼にとって「転生者」はただの「害悪」であり、彼らを殺すのに何の躊躇も無いのだ。

 そして彼がこんな風にゆがんでしまったのは、かつて彼が暮らしていた異世界で凄惨な経験をしたからなのだろう。突然父親を失い、目の前で母親を殺され、そんな出来事を第二次性長期に差し掛かるかしないかの段階で経験しているのだ。まともで居られるわけが無い。

「_______だから、こんな風に罪悪感を感じることが出来るのは“良いこと”なんだ。お前がちゃんとまっとうな人間で居られている証拠なんだ。それに」

 と、トーヤは付け加えた。

「確かにお前は奴の命を奪っても良いと考え、実際に奴の命を絶った。だが、奴を殺したことで今まで奴に奪われた命にケジメを付け、これから奪われるであろう命を救うことが出来た。このまま奴を生かしておけば、さらに犠牲が増えていただろう。だから、お前のやったことは正しいんだ」

「正しい・・・・・?」

「そうだ」

 疑うようなマナの言葉を、トーヤは肯定した。

「命を弄んで、SSRだとかなんとかとかほざいている奴がのうのうと生きているなんておかしいだろう?違うか?」

「・・・・・・・・・・・・」

 マナはしばし考え込んだ。自分の抱いた感情は、働いた行動が正しかったのか。トーヤの言葉を頭の中で反芻した。

 そして。

「・・・・・・・・・・正しいと、思う」

 マナは自信を持って答えた。

「生き物の命を何の躊躇も無く奪って、それを自分のためだけに使って、そんなことをずっとしている人が正しいなんて、私は思わない!!」

「そうだ」

 トーヤは安堵していた。今の今までマナがこういった課題に対して答えを出したところを見ていなかったのだ。いつも彼女は現実に対し戸惑っていて、自分の意見をだしたりしていなかった。そんな彼女が、ようやく一つの答えを導き出したのだ。

「だから_______」

 と、マナが言葉を紡ぎ出そうとした、そのときだった。





ボガァアアン!!と、突然シロが爆炎に飲み込まれた。





「え?きゃああああああああああ!!シロちゃん!!」

 マナは驚き、シロの方に駆け寄る。

「今、シロがマナをかばった!!」

「クソッ!!突然の事過ぎて反応できなかった!!」

 ネロやグーフォが悪態を吐いた。目では何かが起こったことは解っても、とっさに反応できなかったようだ。

「もう!!あなたたちは何なのですか!!せっかくこの子が世界統一を果たそうとしていたのに!!」

「「「!!!」」」

 上空から女性の声が聞こえ、一同はその声の主を見上げる。

 その女性は茨の冠を被り、白いヴェールに身を包んでいた。その背には真っ白な翼が生えており、如何にも「女神」といった風貌だった。

「アイツ・・・・・思い出したぞ!!あのときの女か!!」

 トーヤは憎々しげに女性をにらみつけ、フラガラッハを構えた。目の前の女神を見て、トーヤは彼女に一度会っていることを思いだしたのだ。

「知っているのかい!?トーヤ君!!」

「ああ。“冥府の陸海淵”で死にかけたとき、一度コイツと会ったんだ・・・・・そうだ!!」

 トーヤはギリッ、と歯ぎしりした。

「こっちの世界に“転生者”が節操も無くなだれ込んでいる原因は、コイツなんだ!!」

「「「!!」」」

 一同は驚いていた。トーヤの言葉を信じるのであれば、彼女こそが黒幕であると言うことになる。

「うそでしょう・・・・・エリス様・・・・!!」

 ゲイボルグは泣き崩れそうになった。この世界では様々な女神を信仰する宗教があるのだが、その一つである「アモール教」の信仰する女神こそが、彼女である。

 そしてゲイボルグが口にしたその名前を聞いて、ネロはある事に気付いた。

「エリス・・・・・ちょっと待て!!そこに倒れている女は・・・・・!?」

 そう。黒鉄の自己肯定感を満たすために殺された少女。黒鉄がこちらの世界に来たときから居たという彼女の容姿と、あまりにもそっくりなのだ。姿だけで無い。名前もこの女神と同じ「エリス」なのだ。

「ええ。これは私の端末です。先ほどなぜかこちらの様子を見ることが出来なくなったのでおかしいと思ったのですが・・・・・この子に()()()()()()()のですね」

「壊された・・・・・・!?」

「元々これは私が恒常的にこの子の面倒を見るために用意した“端末”なのですよ。いつこの子が死にそうになってもすぐに復活できるように、そしてこの子の目的意識が揺らぎそうになったとき、それをすぐに修正できるようにしていたのです」

「「「・・・・・・・・・・ッ!!」」」

 一同は唖然となった。つまり黒鉄に殺された彼女は、黒鉄を間接的に操るために用意されたモノだという。この女神の思惑のために、ある意味使い捨てられたのだ。

「・・・・・・・だがよ女神サマ、この身勝手な王様ゴッコ野郎に肩入れする理由がわからねぇ。何のためにコイツをこっちの世界に呼び出して、魔王にしたんだ?」

「そんなの、決まっているじゃ無いですか!!」

 グーフォの問いに、女神は喜々として答えた。





「だって、()()()()()()()()()()!!異世界で命を落とした若者が、別の世界でなりが立っていく“御伽噺”が目の前で生まれるのは!!一体どんな展開が待っているのか、楽しみで仕方が無いのです!!」





「____________」

 これで「転生者殺し」が言葉を失うのは何度目なのだろうか。つまり彼女は生まれた世界すら異なる者がどんな人生をたどるのか、それを目の前で()()()()()()()()()わざわざ異世界から呼び寄せていたのだ。それも「ライトノベルを購読する」ような感覚で。

「・・・・・・・そうだ、全部思い出したぞ」

 そしてトーヤは、他の皆と全く違う理由で口を閉ざしていた。

「テメェが余所者に好き勝手させているから、こっちの世界がメチャクチャになってんじゃねぇか!!モンスターも無意味に虐殺されて、こっちの世界の人間が汗水流して作り上げてきたものを台無しにしやがって!!テメェのせいで!!」

 トーヤの怒りが爆発すると、彼を中心にパキパキバキバキッ!!と地面が凍てついた。さらに突き刺すような冷気が「謁見の間」を瞬時に満たす。

 だが。

「ぐっ・・・・・・ウウ・・・・・・」

 怒りのあまり制御が効かないのか、自分の体も凍らせてしまっていた。実際あれだけ無茶を通して能力を酷使したのだ。彼の体は既に限界を迎えているのだろう。

「あら、あれだけ威勢良くしていた割には動けないじゃ無いですか。あなたたちの力も、所詮こんなものなのですか?」

「コイツ・・・・・舐め腐りやがって!!」

 ネロは険しい表情でエリスをにらみつける。本来ならまだ弾薬があるにも関わらず、彼の白衣はゲイボルグが羽織っているこれではガトリング砲の展開が出来ない。

「舐めていません。ただただ邪魔なだけなんです。私の趣味を邪魔しないでください!!」

 エリスはそう叫ぶと右手を頭上に掲げ、ゴゴゴゴゴ・・・・・とまるで太陽のような炎の塊を作り出した。「謁見の間」の天井を丸々すっぽりと包む巨大な火球。それはかの大間当司の「メテオーラ」すらも凌駕していた。

「オイ!!マジでどうするんだこれ!!」

「ダメだ!!ボク達じゃ対抗できない!!この規模だと、逃げることすら・・・・・・」

 エリスの魔法のあまりの規模に、もはや彼らは為す術もなかった。刃向かうことはおろか、逃げることすらままならない。

「畜生!!こんなところで・・・・・・こんなところで終われるかよ!!」

 トーヤは凍てついた体を必死に動かそうとするが、本来歩くことすら困難な状態では、ただ小さく震わせることしか出来なかった。

「もう、やめて・・・・・・」

 マナは涙を流しながら、切実に叫んだ。

「誰か・・・・・だれか助けて!!」

 そして叫んだ瞬間。





ズバシャァアアアッ!!と耳をつんざく轟音とともに、金色の光線が火球を貫いた。





「え」

 エリスは思わず頭上を見上げた。貫かれた火球は半分以上者大穴を開けて、そのまま炸裂せずに霧散していく。そんな事態に陥ることを、エリスは全く予想だにしていなかった。

「危ないところだったな。お前達」

 ズシン、と、漆黒の巨体が「転生者殺し」の前に降り立った。

 筋骨隆々の肉体に、まるで竜の甲殻の様な漆黒の外皮、逆立つ炭のように真っ黒な髪。元々は人間大であった首は異様に太く長く伸びており、鼻から顎にかけて漆黒の甲殻に包まれている。そしてその背部からは、太くしなやかな尻尾が生えていた。

「あなたは・・・・・・!!」

 マナは、その姿を初めて見た。しかしその目元を一目見て、自分の知る人物だと気付いた。







「俺の部下が世話になったな・・・・・だが、これ以上勝手な真似はさせん」

 彼の名前は「ローレンツ・アーサー・アイゼンベルク」。「対転生者特別防衛機関 総帥」にして、「旧アストライア王国幹部 六角:第三の角“冥雷”」の名を冠する竜人(リザードマン)


 そして「対転生者特別防衛機関」____「転生者殺し」の創始者だ。


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