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ヴィジターキラー  作者: 反物質
第六章 「完璧主義者(パーフェクショニスト)の魔王は、仇なす者全てを徹底的に蹂躙す」黒鉄徹
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6-4

 とがった岩石が寄り集まり、剣山のようになった「城」。その内部で、召喚の儀式が行われていた。

「魔王様・・・・・・貴方様の思いに応え、馳せ参じました・・・・何なりとご命令を・・・・」

 緑色の甲殻に身を包んだ、亀の怪人のようなモンスター。彼は黒鉄の召喚儀式によって生み出された使い魔「グレムリン」だ。クロガネ王国の国民であるモンスター達の命と引き換えに生み出された戦力だ。数体分の命がつぎ込まれているだけ、より強力な戦力となるだろう。

 だが。

「チッ・・・・・ただのRレアか・・・・・使えないな」

「なっ・・・・・・魔王さ_____」

 グレムリンがしゃべっているにもかかわらず、彼の言葉などお構いなしに黒鉄は即座にシステムを起動させた。バシュゥン・・・・と、別の隔離部屋に強制的に転送される。

「トール様・・・・・本日は引きがよろしくないですね」

「全くだ。SSRが0.02%とは・・・・・・・本当に渋いな」

 黒鉄は目当ての使い魔を召喚できずにいらだっていた。彼が行う召喚の儀式には何種類か「方式」が存在しており、「ヒーラー枠」「炎属性・闇属性」などの「排出傾向」が分かれている。その中でも黒鉄が狙っているのは「炎属性・高火力速攻型」の使い魔なのだが、その使い魔を召喚できる「絶氷の召喚術」における排出率がわずか0.02%なのだ。本当の最低確率よりは遙かにましではあるのだが、回しても回しても出ないこの渋さには頭を抱える。

「どういたしますか?あまり回されますと国民が・・・・・・」

「ふむ、そう言いたいところだが・・・・・俺は妥協しない」

 エリスの忠告を、しかし黒鉄は無視した。

「既にこの国に侵入者が忍び込んでいる。奴らに先手を打たれる前に戦力を補充し、なんとしてでも殲滅しなければならない。やるからには“徹底的に”だ」

 黒鉄は「完璧主義者パーフェクショニスト」であり、「徹底的」を信条としている。転生した当時に傍らにいるSSRのヒーラー「エリス」のナビゲートのもと、魔王としてこの国を発展させてきた。たとえ迷い込んだ者であっても、自身の国に部外者が立ち入れば直ちに総力を以て抹殺し、隣国と同盟を結んだとしても後に反目し滅ぼしたりもした。さらには国民の忠誠心も強化すべく「叛逆の意志を口にした者を処刑する呪い」をかけている。叛逆を企てた時点でその意志を砕く策を採ることで、国力の忠誠心を盤石にしたのだ。

「恐らく、奴らの中で最も厄介なのがあの氷属性の剣士だ。奴は何らかの方法で飛躍的に戦闘力を強化し、魔王の俺と剣でやり合っている。奴と直接対面する前に、なんとしてでも確実な対抗策を講じる必要がある」

「それだけ相手が脅威になり得る、と?」

「まだ解っていないようだな。たとえ0.1%でも脅威を潰す。それが俺のポリシーだ。何事も“徹底的に”___________」

 と、エリスと話していたときだった。





ズズゥウウン・・・・・・と、城全体を地響きが包み込んだ。





「な、なんですか?!」

「・・・・・・・ッ!?」

 突然の出来事に、黒鉄とエリスは動揺した。その間にも、ドォン・・・・とか、ズシン・・・・とか腹の底に響くような振動が続く。

「魔王様!!我が城が攻撃されています!!」

「どこから調達したのか、奴らは大砲を城に打ち込んでやがります!!」

 褐色肌のやけに露出度の高い女性と、漆黒の甲冑に身を包んだ大男が大急ぎで駆け込んできた。

「チッ・・・・・・・・先手を打たれたか」

 黒鉄は忌々しげに舌打ちした。完璧主義の黒鉄にとって、先制攻撃を受けるのは非常に耐えがたい。ただでさえ侵入を許している上にそれを処理できずにいるのだ。黒鉄の神経を削るには十分すぎる。

「魔王様・・・・・・大砲という武器は我が国しか存在しないはずです!!」

「あれを保有していると言うことは_______」

「城の者に告ぐ!!総力を以て奴らを殲滅しろ!!命乞いをさせる隙も与えぬほど、迅速にやれ!!」

「は、はっ!!」

 女と黒騎士が話しかけている最中にも、黒鉄はガタッと立ち上がり命令を下す。よほど気が急いているのか、彼らの言葉を待たずに指示を飛ばす。彼の僕である女と黒騎士は、一度黒鉄が指示を出し始めたら、言葉を交わすことなく即座に行動しなければない。二人は自分たちの部下を指揮するために、式場を後にする。

「トール様、私はいかがなさいましょう」

「エリス。お前は部屋で待機していろ。お前さえいればこの国の軍は何度でも復活ができる」

「は、はい・・・・・解りました」

 エリスは黒鉄の言葉に従い、その場を後にする。エリスの回復魔法は脳や心臓など、生命維持に必要な器官さえ即座に修復可能だ。その上その気になればこの城一つ分の空間をまとめて治癒魔法で包むことができる。そんな彼女を失うことは、黒鉄にとってはこの上ない打撃になる。

「(・・・・・・・・・・さて)」

 黒鉄もまた、その場を離れて歩き出した。彼が目指すのは式場の真上「謁見の間」と呼ばれる空間だ。ここには自分の玉座があるし、この式場に訪れるためにはそこを通るか、もう一つの通路を通る必要がある。

 そしてその通路はこれから封鎖し、モンスターや魔族の大群の押し寄せる修羅の道と化すだろう。

「“徹底的に”やるか」

 いつも通り、いつもの口癖をつぶやいた。








「撃て!!」

 エミリアが叫ぶと、騎士達が一斉に砲撃し始めた。巨大な剣山のような岩の塊。その表面には小さな穴が幾つも開いているが、それらとは比べものにならないほど大きく、唯一整備されたような斜面がその入り口に続いている大穴があった。これこそが城の「門」だと悟った一行は、その門を囲うように大砲を配置し、侵攻を開始したのだ。

 大砲の一門一門が一よりも大きいサイズなので、一見すれば持ち運びには些かくろう知ると思われる。しかし、忘れてはならないのが「ネロ・マッシナーリオ」の存在だ。彼のもつ固有スキル「懐の中の小宇宙(ミクロコスモス)」は、服の内側の空間が広ければ広いほど大容量かつ大量に物体を収納できる。膝下まで伸びる白衣を纏う彼は、その外見に見合わず「歩く兵器倉庫」と化していたのだ。

「どうでしょうか、エミリア副隊長。予想以上に城の強度が高いため、このままでは崩すのは難しいかと思われますが・・・・・・・・・・・・」

「確かに、見た限り全く城壁には傷が付いていないな」

 エミリアは目元に手をかざして、その様子をのぞき込んだ。砲弾をまともに浴び硝煙を漂わせる「城壁」は、全く傷が付いていない。外壁を崩してから突入するのがセオリーな「侵攻」では、まずその守りを崩さないと話にならないのだ。

 そう、まともな侵攻ならば。

「・・・・・・だが、やはりトーヤやネロの読み通りだ」

 エミリアは満足そうに微笑んだ。そんな彼女の目の前に広がる城壁の穴という穴から、大量のモンスターが出てきたのだ。

「テキダ!!テキダ!!」

「ブチコロス!!テキヲブチコロス!!」

 などと物騒な声を上げながらゴブリンやオーク、ゴーレムなど様々なモンスターが押し寄せてくる。まるでふざけてつついたスズメバチの巣から、兵隊蜂が大量に出てきたときのように。

 しかし、これこそが彼女らの狙いだった。

「これより、標的を“城壁”から“敵軍”に切り替える!!ここから本格的な作戦が開始だ!!」

 彼女らは端から城を狙っていたのではない。ネロが一瞬だけ「測定」することで得られたわずかな黒鉄徹の「性格」。ここから黒鉄の取り得る行動を見越し、敵軍を「あぶり出した」のだ。城を攻撃すれば、それに対抗すべく黒鉄は()()()()()立ち向かうだろう。そう読んだ彼らは、敵のホームグラウンドからおびき出すことにしたのだ。

「さあ!!我々も“総力を以て”突き進むとしよう!!」

 エミリアは背中に背負っていた大剣を抜き、それを「城」に突きつけるように掲げて叫んだ。








「覚悟しろ、“黒鉄徹”!!貴様の目論見は、ここで破られる!!」

 かくして、「対転生者特別防衛機関」の総力を挙げた「黒鉄徹討伐作戦」が始動した。彼らの誇りと居場所を賭けた、熾烈な戦いが今、始まる。


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