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ヴィジターキラー  作者: 反物質
氷河﨑凍耶「凍てつきし徒花は咲く」第四章
46/110

4-13(第四章終了)

「・・・・・・・・・・そんな事があったんですね」

「ああ。私が知る、彼の全てだ」

 エミリアとマナは、「対転生者特別防衛機関」の応接室で放していた。既に夜も更けて、皆が寝静まった頃。マナはトーヤのことが気になり、眠れなかったのだ。そしてパジャマ姿でうろついていたところを、エミリアに捕まったのだ。

 マナはずっと疑問に思っていたのだ。「システム」を受け付けない彼の体質があるならば、もっと早くにこの組織に所属していたはずなのだ。しかし、彼自身は「2年前」にここに入ったという。冒険者でさえ、「養成学校」があるのだ。いくら何でも遅すぎる、と感じたのだ。

「今でこそうちの主戦力のように扱われてはいるが、それはこれまでの壮絶な鍛錬の末の結果だ。入った当初は本当に大変だったんだ。・・・・・・“転生者を処罰する”という特性上“転生者を嫌う”人間が多数集まるこの組織で、身内に肉体的にも精神的に痛めつけられていたのは、本当に大変だったと思う」

「・・・・・トーヤさんは、一体どんな鍛錬をしていたんですか?」

 マナはエミリアに尋ねた。これまで散々ぼかされてきた「トーヤの鍛錬」。その内容を知らないマナは、彼がどんな思いをしていたのかが計りかねているのだ。

「そうだな・・・・・・今の話に“氷の華”が出てきただろう?」

「・・・・・・はい」

「華というのは非常に繊細なんだ。見た目の美しさもさることながら、それを作り出すには、相当な技術がいるんだ」

 エミリアはインテリアとして飾られていた花瓶を持ってきた。

「例えば“花弁”があるだろう?これは一枚一枚が非常に薄くできている上に、それぞれが分離しているんだ。しかもこれが茎に付いているんだ。単純に咲かせるだけならばもう少し楽なのだが、“花弁が散る”機構を加えるとなると、本当に繊細に作らなければならない」

 花の構造を見せながら、エミリアはマナに丁寧に説明する。

「花弁が割れてはいけない、かといって花が茎から離れないと行けない・・・・・その絶妙な加減が大変なのだ。・・・・・・そして、魔力の制御にはこの“自分の魔力で花を作る”というものをやっていたようだ」

「・・・・・・・それがとてつもなく大変、なんですね」

 エミリアは、マナの言葉にうなずいた。

「多くの者は誤解しているが、魔法で物を形作るというのは、並大抵の物ではないんだ。ただイメージするだけでは曖昧な輪郭しか作る事ができず、それをイメージ通りに具現化するには、その細かな部分を再現する力量が必要なんだ。そして多くの者は教会で“職業補正”を受けている・・・・・・・解るか?彼はその補助”無しで“これを作り出さなくてはいけないんだ」

「・・・・・・・・・・・・・!!」

 マナはそのスケールが想像も付かなかった。つい最近まで一介の村娘でしか無かった彼女は、魔法を使うことどころか、こういったものに触れることさえほとんど無かったのだ。

「意外に思われるが、魔力を扱うこと自体は大して難しくない。こっちの世界に来た大抵の転生者が魔法を使えることから解るが、それを“制御”するのが難しいんだ。君が目の前で見た“大間当司”の魔法が、典型的な例だな」

 マナはあの日、異世界から来た少年が見せていた魔法を思い出した。彼は思うがままに魔法を撃ちまくっていた。その規模は明らかに人間離れしていて、「フィールド」が無ければ村が危なかっただろう。

 イメージするとすれば、彫刻。作品を作るだけならば、「それっぽい」形に削ったり刻んだりすることでできあがるだろう。だが、それをより「リアルに、精巧に」作るためにはそれ相応に作り込む技術が必要になる。それを「ドリル」や「ヤスリ」などの道具を使うところを、彼は「彫刻刀」だけで作るのと同等である。

「・・・・・・・・・・・・・」

「随分困惑している様だな」

 エミリアが指摘したとおり、マナは立て続けに起きている事をうまく処理できずにいた。無理もない。重ねて言うように、彼女はごく最近まで一般人だったのだ。それが急に「転生者殺し」の一員になり、「戦術」だの「魔法」だの様々な事を学ぶ必要が出てきたのだ。さらに彼女が最も信頼を置ける人物が「元転生者」だったというのだ。

「色々あると思うが、あの子はあの子だ。そんなに深く考えずに接してやってくれ。・・・・・もう夜も遅い。早めに寝るようにな」

「あ、はい・・・・・」

 といって、エミリアは席を立った。応接室には静寂が訪れる。

「・・・・・・・・・・」

 エミリアは「気にする必要は無い」とは行っていたが、だからといってそう簡単に切り替えることは、マナにはできなかった。

「(わたし・・・・・・どんな顔して遭えばいいんだろう・・・・・・)」

 マナは、漠然とした不安に襲われた。


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