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ヴィジターキラー  作者: 反物質
閑話休題①
22/110

閑話休題1-1 

 これはマナが加入するより少し前の話。

「失礼しまーす」

 対転生者特別防衛機関、通称「転生者殺し」の一室。そこは「執行部隊室」と呼ばれ、日々転生者の対策を講じたりする場である。そこに、「調査部隊」の男性が訪れたのだ。

「トーヤ部隊長に・・・・・って、あれ?」

 しかし、そこにはトーヤの姿はおらず、彼のデスクには書類がいくらかの束になって積まれていた。

「やあ。隊長ならあいにく今週は休みだ。私が対処するぞ?」

「あれ、エミリア副隊長・・・・・・」

 普段現場では甲冑を着込んでいるエミリアだが、屋内では普通の服を着ている。そんな彼女は、デスクに近寄ってきた男性の手から書類を受け取った。

「一週間も休みなんて取れるんですか?」

「いいや、本当はできない。だけど“執行部隊”では特例として、“急を要する案件などがなければ、長期的な休暇を取っても良い”とされているんだ。常に危険と隣り合わせな、ここならではの措置だな」

「確かに・・・・・あの転生者を相手取るわけですから、これぐらい優遇されるのも妥当なのかも・・・・・・」

 などと、男性がつぶやいた時だった。

「まあ、本当に急を要するなら“エンデの集会場”に行けばひょっとしたら会えるかもな」

「え?集会場って、確か・・・・・」

「ああ。“冒険者ギルド”だな」

 一般的に「ギルド」というと、大体は「冒険者ギルドの集会場」を意味する。これはギルドそのものではなく、そこが開いている窓口のことを指しているからだ。

「今、隊長は休みを取っているって・・・・・」

「ああ。とっているな」

 エミリアはつぶやくと、フッと目をそらし

「・・・・・・・・・何のための休みなのか」

 とつぶやいた。







 ところ変わって、「エンデ」のギルドの窓口。そこは酒場になっていて、冒険者達が情報を分け合ったり、依頼を受けたりする場所になっている。その依頼はギルドが依頼者から寄せられた情報を元に作成し、「クエスト」という形で募集する。そしてその募集に応えてくれる冒険者を募るわけだ。

 そしてその酒場のテーブルの一つに、その少年は席に着いていた。

「・・・・・・・めぼしい依頼はねぇな」

 手元にある台帳をペラペラとめくりながらトーヤはつぶやいた。黒いボディスーツの上にゆとりのある半ズボンを穿き、革のベストを着用した上に緑色のフード付きのマントを羽織っている。彼は「職業」をもっておらず、故に「職業補正」を受けることができない。そしてそれは「レベルアップ」をすることもできないし、「スキル」を覚えることもできないことを意味する。

 だが、それと同時に彼は装備できる武器に制限がない。普段は剣を操るトーヤだが、今回は「アサシン」並の機動力を持ち、かつ弓による遠距離攻撃を得意とする「レンジャー」の装いでギルドを訪れている。そしてトーヤがここを訪れているのは、「対人戦」だけでなく「対モンスター戦」の動きをリハビリするためである。

「おいおい・・・・・・あれって“転生者殺し”じゃねぇかよ・・・・・・」

「なんだかキナ臭いな・・・・又誰かを狙ってるのか・・・・・・」

「怖いわ・・・・・巻き込まれたくないんだけど・・・・・」

 ギルドを訪れた冒険者達は、遠巻きに彼を見ている。

 誤解されがちだが、「転生者殺し」は汚れ仕事を請け負っている機関ではあるが、決して暗部組織などではない。そのため、このように一般人の目に触れることに関して特に制限などはかけられては居ない。しかし、それでも公にできないようなことをしているのは事実であり、奇異な目で見られるのは仕方が無い。

「(聞こえてるよ)」

 若干イライラしながら、トーヤはクエスト台帳に目を通す。一週間程度で帰ってこれそうな依頼は無いか・・・・・と探していた、そのときだった。




「だ~れだ?」

 視界が塞がれるとともに、首筋から後頭部にかけてむにゅっ!とした感触に包まれた。




「・・・・・・・・槌田、こう言うのやめてくれないか?」

「ええ?!なんで解ったの!?」

「こんなことするのお前ぐらいしかいないわ」

 眉間にしわを寄せながら、トーヤは不機嫌そうにうなった。人肌の暖かく柔らかなそれはうっすらと表面が汗ばんでいて、トーヤのきめ細やかな肌に吸い付いてくる。普通の男なら喜ぶだろうが、トーヤにとってはただ鬱陶しいだけだ。

「もう、こんなに可愛い女の子にこんなことをさせておいて、少しは喜びなよ~」

「自分で言うか」

 トーヤはようやく解放され、背後から目隠ししてきた声の主の方を向く。

 目の前には黒い艶のある髪をツインテールにした少女が立っていた。くりっとした大きな目に柔らかな唇と、その端正な顔立ちに幼さを残した美少女だ。そんな彼女のしている格好はあまりにも刺激的だった。

 簡単に言ってしまえば「胴鎧の胸の装甲を剥ぎ取ったもの」と形容できるようなものだ。彼女の脇腹や背中は鋼の鎧で覆われているが、肝心の胸やへそ周りは無防備そのもので、ピンク色のビキニに覆われた豊満な乳房がたわわに揺れている。先ほどトーヤを目隠ししてきた時の後頭部の柔らかな感触は、彼女のGカップはありそうなその豊かな胸を押しつけられたものだ。肩も完全に露出しており、脇の部分が丸見えになっている。スカート状の腰鎧から伸びる脚は太ももの部分が露出しており、全体としてチアガールのようなシルエットになっている。

 彼女は槌田恵ツチダメグミ。トーヤが知る限り数少ない「全くもって無害な転生者」である。基本的に前衛職は重装備であるのだが、彼女の場合は重装備と呼んでいいのか疑問符が付く格好だ。

「相変わらずずいぶん下品な格好をしているな。痴女だと思われるぞ」

「そこはセクシーって言ってよ~・・・・こんなに可愛い女の子がえっちな格好をしてるんだからさ」

「うっせぇぶん殴んぞ。」

 あはーん♥、と言う感じのセクシーポーズでトーヤを誘惑しようとする恵を一喝する。彼女の茶番に付き合っているときりが無い。

「で、今回は何すんの?」

「とりあえず今回は一週間だ。その間に達成できる討伐依頼を見繕いたい」

「そしたらさ、あたし“ハウルアックスⅡ”っていう斧を強化したいからさ、“スケアリーファング”の討伐を手伝ってよ。ちょうどここにクエストが出てるみたいだからさ」

「ああ、これか・・・・・・・・」

 トーヤは恵が指さしたページをめくる。そこには「夜狼やろうスケアリーファング襲来」と書かれたクエストが張り出されていた。

 スケアリーファングというのは、ドレッドファングの親玉のような存在で、複数の手下を従えて活動するモンスターだ。その光をも吸い込む漆黒の体毛と、赤く輝く瞳のない眼球が瞬く様から「夜狼やろう」という別名を持つ。脅威度はモンスター全体から見ると低い方ではあるが、集団行動をするという点では厄介であり、恵が一人で受けたがらない理由もうなずける。

 恵の職業は「戦士」である。これは斧を振るって豪快に戦う重戦車タイプの職業で、「脳筋」とも揶揄される。その性質上タイマンでは無類の強さを発揮する一方、スケアリーファングのような手下を従えてくるタイプは相性が悪い。特に動きの素早いドレッドファングとなれば相性は最悪だ。

 そして、彼女が腰に下げている斧こそが、「ハウルアックスⅡ」と呼ばれる斧だ。属性こそ持たないものの非常に高い攻撃力が魅力であり、故にどんな相手にも担いでいける点が優秀の一品だ。そしてその強化後の「サイレントブレイカー」は「遠吠えする狼の頭が斧の刃の部分を咥えている」様なデザインであり、格好いいと評判である。・・・・・・乳房をたわわに揺らす可憐な美少女が担ぐにはいささかミスマッチな気がしてならないが。

「ね?途中で採取してもいいからさ、おっぱい揉んでもいいし、お願い?」

「受けるからそんな上目遣いするな気色悪い。あと俺のイメージが悪くなるからそういうのはやめろな」

 谷間を強調しながら上目遣いしてきた恵の頭を、鬱陶しそうに押しのける。何でかは知らないが、彼女はやたらトーヤになれなれしい。

「んしたら、あたしがこのクエスト受けるよ。でトーヤがそのパーティメンバーってことでおk?」

「あーいーよ。それで」

「うっし!じゃついてきて~」

「はーいはい」

 トーヤの持っているクエスト台帳を強奪し、カウンターに向かう恵。自由奔放な彼女に振り回されるトーヤは、なんだかクエストにも出ていないのに疲れていた。尤も。こう言う着飾らないところが好感を持てるところでもあるのだろうが。とはいえこれで、トーヤの有給を消化するのにはちょうどいい探索になるのだろう。





 こうして、槌田恵とトーヤ・グラシアルケイプの一週間の冒険が始まる。


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