決戦の日です
晴天が広がり爽やかな風が心地いい、そんな一日も暮れようとしている。晩秋ともなると、日が暮れれば風は冷たい。
でも、そんな風も弾き返すそんな場所がある。
人々は様々な思いと期待を持って、そこへと向かう。これから行われるボクシングの試合に心を躍らせながら。
この日のボクシング会場はいつもと違っている。
いつもと同じホールなのに、普段ではあまり見かけることのない若い女性の姿も多い。
これはひとえに武山和人というボクサーによるものだ。そのルックスと言動が、普段はボクシングに興味を持たない人をも呼び込んだ。
女性や、にわかファンは武山和人の話題で盛り上がっている。
一方、コアなボクシングファンだって負けていない。
国内屈指のハードパンチャー永井亮のKO勝利か、華麗なるフットワークで相手の攻撃をかわし、伝家の宝刀カウンターパンチで竹山和人のKO勝利か。
マスコミでも取り上げられたからか、大いに盛り上がっている。とても、国内のタイトルマッチと思えない。
そんな会場を眺め見ていた男が、満足といった感じでうなずいた。
会場を照らすライトに眼鏡が光っている。レンズの奥から別の輝きを放たれている。
彼は不適な笑みを浮かべ、その場から消え去った。




