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第三十七話 ビックネーム

「しかし……

 三人とも見事にビックネームじゃの……」

 爺さんがポツリとしみじみ口にした。

 隣に立つアグネスはコクコク頷いている。

 そんなに知れ渡たっている死前名なのか?

 この世界、この大陸の歴史を知らない俺にはただの名前にしか思えないだよな……

「魂の伴侶に出会えたのですもの。

 喜びもひとしおなのではありませんか……我が君?」

「…………」

 俺は落ち着かない。

 ルスティーナ、ミリヤ、スーヤが学園長室から退出して以降また俺にベタベタとくっついてくるようになった。

 俺としては嬉しい。

 だが、俺は女慣れしていない。

 元いた世界でこんなにくっついてきて、熱視線を目から浴びせる女に出会ったことがないからだ。

「ヤザフ、少し離れてくれ。

 それとなんだその我が君って」

 俺の指摘を受けたヤザフは驚いた顔をして、その後いたずらっぽく笑う。

 それだけの仕草なのに俺は倒れそうだ。

「私の死前名を預けたのですよ?

 そう呼ぶことになんの隔たりが有りましょう」

 俺の耳元でそう話すヤザフ。

 吐息が耳にあたってゾクゾクする。

 ヤバい。

 俺は女の人が好きだけど。

 女に対する免疫がゼロだってことがよくわかった。

「だけど普通に読んでくれ。

 俺の名前は正嗣だ」

「もう、シャイなのだから。

 わかったわ、正嗣様」

「いや、様付けもやめてくれ」

「これがギリギリ妥協できるラインですわ。

 それ以外だとご主人様になってしまうわよ?」

「俺で遊んでないか?」

「まあ、心外だわ。

 私の死前名を聞いても平然としていた方がそんな小さいことに拘るなんて器がしれますわよ」

 小さいか?

 俺としては人前で様付けは止めてもらいたいのだが。

「ふむ、しかし物凄いメンツになったの……

 大魔王・アシヲス

 好色王・アルシア

 白金王・アルタ

 悪逆王・アルベルト

 偽悪王・ギルガベア……

 うーむ。

 頭が痛くなるわい」

 こめかみを押さえ唸る爺さん。

 そうだよな。

 どんな功績を残したのかは知らないけど。

 俺が死前名を聞いた四人全員の名前に王が付いている事からして余程歴史に関係する人物なのだろう。

「マサツグはまるで他人事みたいにしているけどさ。

 この四人はアシヲスに仕えていた人達なんだよ。

 しかもアルタとギルガベアは正妻と側室だしね。

 さらに言うならアルベルトとアルシアは妾さんだよ」

 な、なんだと!!

 プレイボーイすぎるだろアシヲス!!

 正妻、側室と来て妾かよ。

 どんだけだ。

「さらにたちが悪い事にの……

 この四人の力と逸話はアシヲスにも引けは取らぬ程じゃ」

 そうなのか。

 としか言えない俺。

 無知にも程がある。

 まあ仕方ないことでもあるのだ。

 俺はアシヲスと融合するまでこの世界の文字が読めなかった。

 だから趣味である読書が出来なくてモヤモヤしていたんだ。

 この世界の事を知る一歩として、歴史書を読みあさる事から始めよう。

「それで俺はどこのクラスに入学することになるんだ爺さん」

「それだがの。

 高等部一学年三組となった。

 明日より勉学に励み学友と切磋琢磨して立派な従騎士になるのじゃぞ」

 やっぱり明日からだよな。

 少しでも早く授業を受けて魔力の使い方を知りたいけどしょうがないか。

 それに今日は体が重い。

 魔力を使ったからか?

 取り敢えず明日からしか授業を受けられないのなら、今日はもう帰って寝よう。

「じゃあ帰ろうか桜花」

「はい。参りましょう」

 俺は後ろに立ち控えていた桜花に声を掛ける。

 服装も元通りに修復されている。うん。この方が格好良い。

「じゃあな爺さん、アグネス。

 迷惑をかけてしまった」

 俺は座ったまま頭を下げた。

 これは最低の礼儀だと思ったからだ。

「お前さんもここの生徒じゃ。

 このくらいは多めに見るわい。

 さあ、ヤザフお前さんも教室に帰るのじゃ。

 まだ測定は終わってはおらぬのじゃろ」

「すっかり忘れていたわ。

 それでは、正嗣様。

 私は測定が残っておりますのでこれで失礼しますわね」

 俺から離れ、学長室から出て行った。

 俺は倒れそうになりながら座っていたソファーから腰を上げ、学長室を後にすると寮への道のりを桜花に支えられながら帰ったのだった。

明日はストックが切れてしまったので、時間通りに更新出来ないと思います。

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