第十八話 救い
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「そうか……君はそんなに死にたいんだね?
なら、お望みどおりに殺してあげるよ」
腕が折れ、足が折れている俺にヤザフの攻撃を防ぐ手立てはない。
ただ耐える……それだけしか俺には出来ない。
頭を踏んでいる足が更に重くなって俺に痛みを味あわせる。
これは死ぬかもな、どうせならもう少し幸せな人生を送りたかったな……
って、俺が諦めてどうすんだよ!!
「その汚い足を退けておくれ。エルフの剣士さん」
ん? この間の抜けた声は――
「精霊風情が僕に意見するのか?」
「ボクはそんな者じゃないよ。
どちらかと言えばいまエルフさんが持っている剣に近い存在だといえるかもね」
アグネスか?
でもなんでコイツがここにいるんだ?
「野良剣者かそう言えばお前を見つける事がこの学園の入学条件だったな。
僕はパスしたから覚えているよ。
でもなんで学園付の剣者がこんな虫を助けようなどとする?」
「うるさいな。そんな事、決まっているんだよ。
ねえ、マサツグ約束覚えてるよね?」
――約束?
昨日のクッキーの事を言っているのか?
それならズボンのポケットに入って……
「ごめんアグネス。クッキーの約束は覚えていたんだけど。
全部割れちまってる。だから明日また焼き直すな」
最初に吹き飛ばされた時に割れてしまったようだ。
綺麗に袋に詰めてリボンまで付けたのに。
まあ、そこまでしてくれたのはミリヤだがな。
「ありがとう。でもそれがいいな。
それだけで助ける価値は上がったもん」
なぜかやる気になっているアグネス。
足音が俺の方に近づいて来ている。
「お願いしても聞いてくれないから、実力行使でいくからね」
俺の傍で足音が止まった。
その言葉が終わると同時に俺の頭から重さが消える――
ゆっくりと顔を上げる。
俺から五メートル程の所でヤザフは片膝き、肩で息をしていた。
そして何故か、ヤザフの顔色は青白い。
一体アグネスは何をしたんだ?
「ねえ。起きられる。マサツグ?」
心配そうな顔で俺を見るアグネス。
コイツのこんな顔は初めてかな。
あんな怒気を孕んだ声も驚いたがこんな顔もするんだ……
「大丈夫じゃねぇよ。見てくれ腕と足がいかれちまってる」
「うん。綺麗に折れているみたいだね。
少し手荒いけど運ぶからボクにおぶさって」
……いや、それはできねぇよ。
お前と俺の身長を考えて物は言えよ?
俺がお前におぶさったら確実に俺の折れた足を引きずって行く事になるし、その上腕も折れているんだからしっかり掴まれないだろ!
「もう少し他の方法を考えないか?
一様俺けが人だからさ」
「分かったよ。じゃあ、リフィアに迎えに来てもらおうよ」
「リフィア? ああ、昨日俺が抜いた剣の……
流石にそれも勘弁願えないか」
女の子におぶさるのは流石に抵抗があるし。
何よりカッコ悪い。
「あれもイヤこれもイヤじゃ、話にならないじゃん。
もういいよ。少し寝てて」
言うが早いか俺の腹に小さな拳がめり込む。
それが決め手となり俺は意識を失ってしまった。
「……ここは。俺の部屋?」
次に目が覚めた時、俺は自分の部屋のベッドに寝かされていた。
さっきのあれは、夢だったのか?
俺の左腕と右足には包帯が盛大に巻かれ、右足は天井から吊るされている。
更に体を少しよじっただけで激痛が俺を襲う。
この状況を見ても夢だったなんて言える奴がいるなら会いたいもんだな。
それにしても情けない。
女にやられた上、子供に助けられるなんて。
雅代さんが聞いたら爆笑するな絶対。




