階段と怪談はオチが怖い
改稿しました。
あれよあれよ――というよりは、時間がかかりましたが。どうにか、落ち着きました、中の人です。
あ、今更ですが。中の人こと、城山恵梨香と申します。家族とか友人には「エリ」と呼ばれてます。
たまに「シロエリ」とか。ワイシャツじゃないっちゅーねん。一文字違たら駆除対象やないかっ……ていうのが悪友との定番だったなー。しみじみ、しじみ。
新卒で入った会社を3年ほどたった頃、なんやかんやで退職し、実家の経営する事務所でしがない事務員をしてた。――昨日までは。
気がついたら、どこかの「お嬢様」の中の人ですよ。とほほ。
ベッドのそばに駆けつけた人々から飛び交う、「何故か意味が分かるのに、日本人の耳にはなじまない謎言語」にドキドキしつつ、彼らの茶髪・金髪etc.をとりまぜたカラフルな色彩、凹凸の激しい顔立ちや顔面偏差値の高さに目が眩む。疑問は深まる一方だし。
――ここ、地球のどっかだよねー?えー、異世界とか、あり??
いや、わたし、本当に死んだ記憶とかないのよ?
最新の記憶では、死にそうになってたのは、”わたし”じゃなくて、ガワの「お嬢様」のはずなんですけど???
うっかりしたこと(「ワタシハダレ?」「ココハドコ?」)を口走ると、頭がヤバいと騒がれそうで、お口ミッ〇ィーちゃんにしてたわたしだけど、そうすると、ガワの「お嬢様」――「エラ」とか「エレノア」と呼ばれてました――が全自動で対応してくれた。
といっても、なんだかぼーっとした感じだけど。
どうやら、ショックが抜けきれてない様子。診察してくれたお医者さん(多分)によると、肉体的なダメージは特にないよう(それもびっくり。その辺の事情は後でわかった)だが、「塔の階段から落ちた恐怖」が尾を引いているのだろう、ということだった。
――あー、階段と怪談はねー、オチは怖いよね―――と不謹慎なことを中で呟いていたわたしだけど、同時にんっ?と首を傾げずにはいられなかった。
――階段?塔の外へ落ちそうになってたのは、気のせい?
と思いつつ、うかつな発言は後が面倒そう。ここは、”全自動エラお嬢様”にまかせて、やり過ごしとこう。一人になるまで、我慢我慢。
で、どうにかして、”エラお嬢様”とコンタクトをとりましょうかねー。おーい。
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回復しきっていないので、ともかくも安静に、というお医者さん(確定)の言葉のもと、一旦みなさん退場とあいなった。みなさんといっても、実はお医者さんとジョアナさんに両親二人だけだったけど。(それでも、圧迫感が半端なかったのは、顔面偏差値の高さのせいか?)
ベッドに横たわりつつ、周囲の様子に耳をすますと、ジョアナさんも席を外したもよう。”エラお嬢様”つきらしい彼女は、きっとあまり長い時間はかけずに戻ってくるだろう。今のうち、今のうち。
と思っていたら。
「――あなたは、精霊――?」
ぎりぎり聞こえるかどうかぐらいの囁き声で呟いてきたのは、”エラお嬢様”の方だった。
おお。呼びかけは届いていたか。どもども。え、でも”精霊”? いや、しがない事務員なんで、多分、そんな立派なものじゃないかな……。
「ずっと――わたしの中で――話してた――」
あー、全部つつぬけだった感じ??……結構、失礼なこと、言っちゃってたような……(汗)
えと、もしかして、ちょっとだけ、”うるさかったんだけど”ってニュアンスが入ってたりする……?(汗汗)
「――幽霊?」
うーん、もしかすると、生霊かなー……ごめんね、自分でもよくわかんないの。でも、あなたを傷つけようとか、思ってないよ。どっちかというと、すごく心配なんだけど。
「うん――それは、分かる――あの時、『ダメ』って言ってくれた――」
"あの時"。塔の上、のことだよね。
今更だけど、その話ししても大丈夫なのかな。辛かったら、後にしよう?
「――よく憶えてないの――あなたの声がしたこと以外――なにがあったのか――」
いいよ、今はムリに考えないでいよう?
体力とか元気とか、取り戻してからでも間に合うよ。今、こうして生きてるんだもん。回復が最優先!
寝よ寝よ。不安なら、わたしが起きてて、まわりを見張ってるよ。さっきまで寝てたから、わたしは元気だし――
「大丈夫!」
突然、はっきりと声が出て、あわてて口を手で押さえた。わ、コントロールが復活してた。
どうやら、わたしの意思でも体が動くらしい。気をつけなきゃ。
わたしの調子っぱずれな声と慌てぶりがおかしかったのか、”エラお嬢様”が、くすっと笑う気配がした。なんか、カワイイ。それから、瞼がゆっくりと降りてくる。気が緩んだのか、疲れが出たのか、眠気がさしてきたようだ。
よしよし。ちょっとは気持ちに余裕がでてきたかな?いいことだ。
でも、今は眠っとこうか、エラお嬢様。
ふたたびのオヤスミナサイ。また、後で。