表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
人の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/234

前編 其の九

トシとスズが真美を裏門に導いている時―

黒い男は独り、屋本を追っていた―




―夜11時8分―


―港区芝、私立御厨中高等学校三階―

挿絵(By みてみん)



黒い男は屋本を追って三階に来ていた。


恐らく今回の事件に関してはこの男(屋本)を始末すれば良いと、エージェントAからの連絡で理解していた。


この増上寺の下を流れる龍脈を乱す為の行為だと、東京に新たな大罪を放った者…幸徳秋水の仕業だと解った。


その手の者…つまりは罪を生む、邪気を生むモノは全て滅す。


その為だったら何だってやる。


トシやスズ(アイツ等や)巻き込まれた奴(ガキ共)も関係無い。


そもそも、自分から進んで危険事に巻き込まれに行って、自業自得としか言い様が無い。


助けられるなら助ける。


だが、その最中に死ぬなら、それは仕方ないことだ。


ワザワザ台風の目に向かって進んだ奴を危険を冒してまで助けるか?


する訳が無い。


スリルを楽しむ?


そんな(よこしま)な発想で危険に見舞われた人間まで助けている余裕なんて無い。


そういった人間が"罪"を"生む"。


(じゃ)を狩るには、それが最適だ。


それが、今の心情だった。


そんな事を考えて窓の外を見ていると、中庭で蠢く何かが月明かりに照らされ、見えた。


それは、手足が伸びた何かに組み伏せられる女だった。


その時、心臓がどくんと一鳴りしたかと思うと、あの時の光景が一瞬頭を(よぎ)る。


―それは、半年前の、あの雨の日の記憶だ―


黒い男『彼女を離せよッ!』


山羊頭が**を抱き、上空に飛び立つ。


―止められなかった無力さ 届かなかった手―


その瞬間、窓を開け、飛び降りていた。



―夜11時10分―


―港区芝、私立御厨中高等学校中庭―

挿絵(By みてみん)



咒符によって身体強化された身体は、反射神経含め向上しており、この程度の高さから飛び降りるなど、造作も無かった。


飛び降りると同時に背中に背負った"閻魔"を抜き、逆手に持って、その小さい半裸のJCを持ち上げている"()()()()"に思い切り"閻魔"を上から突き立て、着地し、そのまま左逆手に右手で腹に差し込み、振り向き様に刀を抜いて両手持ちし、左の木偶警備員目掛けて瞬速の逆袈裟斬りを見舞う。


続け様に右の木偶警備員へ狙いを変えて、重心が移動した左足を思い切り踏み抜き、横薙ぎに胴体を斬り裂く。


そして血が噴き出す二体を横目に"()()()()"へ向きを変え、思い切り脳天から縦真っ二つに斬り裂いた。


ゆっくりと左右二つに割れた()()は、どさりと左右の地面へと落ちた。


その先には怯える半裸の()()()()()()()()がいた。


それ(一連の自分の動作)がどう視得ていたのか、大粒の涙を流し、ガタガタ震えながら、口を開いた。


沙耶「に…ニンゲンじゃ…ないの…?」


恐らく無意識に口にしたであろう()()()()が、一際大きい心音と共に、心を穿つ。


あの時の―在る事を思い出させる。


**『こっちに来ないで!()()!』


こんなものは護れない―


狩るべき存在だったんだ―


その黒い意志が、心を覆う。


―…自分が今、どんな顔をしているのか、


自分が今、どんなことを行おうとしているのか、


それを、その意思を抑えるのに必死だった。


眼の前のコに背を向け、歯を食いしばり、その意思を抑える。


殺意を。


コイツは邪だ助けた自分を邪険に扱う狩るべき存在だでもこのコは人間だ魔の類、邪でもないでも罪は背負っている自業自得だでも救わなきゃいけない効率が悪い巻き込まれただけだそれでもルールを破ったのはコイツ等だ自分は関係無い寧ろ褒められ賞賛されて然るべき


黒い男「…早く…ッ…逃げろ…ッ…!」


そう言うのが精一杯だった。


沙耶「…え?」


後ろを振り返らず、重々しい足取りで校舎へと入っていく。


それが、今出来る精一杯のことだった。


誰も居なくなった中庭に、沙耶独りが取り残された。


沙耶は呆気に取られながらも、全て無くなったこの状況に、動くことが出来なかった。


そして我に返り、全てを無くした現状に大粒の涙を流す。


いなくなってしまった。


友人も、


親友も、


見知った人達も。


哀しくて哀しくて、涙を流し、声も枯れ果て、それでも泣くことしか出来なかった。


それが、梁本沙耶という人間だった。


??「やあ」


突然声を掛けられ、声をした方向を振り向く。


その声の主は、沙耶からは思ってもいなかった存在だった。

苦しみながらも屋本を追い、上階へと向かう黒い男―

その胸中とは…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ