↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異聞録:東京異譚  作者: 小礒岳人
人の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/243

前編 其の十

己の中の意志に頭を悩ます黒い男―

歩みは止まること無く上階を目指していた―

十



―夜11時16分―


―港区芝、私立御厨中高等学校一階階段―

挿絵(By みてみん)



黒い男「…ッくっ…! っがッ…!!」


足取りは非常に重く、右手で手摺(てすり)を掴みながら、左手で顔を覆っている。


頭の中で色々な感情が綯い交ぜとなってぶり返し、声が響く。


―滅せ―


―邪妖を―


―魔を―


―全てを―


―滅せ―


その重い言葉と記憶があの時のことを思い出させる。


黒い男「違っ…!う…! オレは…!」


―オレの敵は魔だ―


―魔は全て滅せ―


―ヒトは護らなきゃ―


―ヒトが罪を犯す―


―もう二度とあんな事を起こさない為に―


―根源を絶て―


―オレが救う―


―何だってやってやる―


―その時の決意が蘇る。


それが、頭の中に渦巻く過去の迷いを振り払う。


黒い男「っ…! そうだ…! オレがやるんだ…!」


そう言って頭を振るい、前を向いた。



―夜11時19分―


―港区芝、私立御厨中高等学校四階廊下―

挿絵(By みてみん)



四階までの階段を登り切り、廊下を左右見渡す。


四階一番端のクラスから風の音が聞こえる。


カーテンがバタバタと音を立てており、それは3―5からだった。


この学校は高台に建造されており、必然的に上階は風が強い。


この時間に窓が全開な事自体が有り得ないことであり、警戒心を上げさせた。


コート腰裏に隠してある銃を一丁ずつ引き抜き、弾の残存数を確認すると、両手に持つ。


そして足音も無くゆっくりと教室のドアに近付き張り付くと、一息吐いてから、銃を構え勢い良く教室の中に入る。


其処に居たのは、月明かりに照らされ、全開で風が入り込む窓の傍に立つ屋本の姿だった。

挿絵(By みてみん)


その前には、誰かが俯(うつむ)き様に立ち竦(すく)む。


屋本「やあ…差し詰め"黒い男"さんとでも言っておこうか? 遅かったね…君のお陰で僕(・)等(・)も大分減ってしまった…僕(・)と(・)、こ(・)の(・)コ(・)以外はね…」


黒い男「!…何?」


その言葉に引っかかり、眼を凝らすと、その前に立ち竦んでいるのは、先(・)程(・)救(・)っ(・)た(・)ふくよかなコだった。


変わらず半裸で微動だにせず、ポニーテールが窓からの風で靡(なび)いている。


一目でまともでは無い事は解った。


屋本「これで僕等の目的はなっt…」


その言葉が終わる前に、右手の銃からは弾丸が発射され、屋本の左頭部に命中した。


黒い男「…そのコに何をした?」


冷たく威圧的に述べると、屋本は衝撃で仰け反った頭を元に戻す。


屋本「…せっかかかか…ちだ…だだぁなぁ…ヒ…ヒ人の話は…き…き聴いた方が…良…いいい」


その前を向いた頭の傷からは百足がはみ出し蠢いている。


黒い男「質問に答えろ」


それでも無視して続ける。


屋本「や…やれ…やややれ…こ…これで僕等の目的は…なな成った…"生膚断(いきはだたち)"、"昆虫(はうむし)の災"、"畜犯(ちくおか)せる罪"で…この地…を穢(けが)し、き気脈…を乱せた…これで…で幸徳様の目的…は果たせ…せる」


そう言うと、眼前の沙耶が痙攣を始め、腹部がボコボコと音を立て膨らむ。


そして、沙耶の目や口から血が溢れ、思い切り膨らんだ腹は勢い良く裂け、壊れた人形の様に沙耶は床に倒れ込む。


そして、裂けた腹部の中からは、大量の百足が這い出してきた。


その光景を視た途端、心臓がどくんと三度(みたび)大きく跳ね上がった。


助けられなかった記憶が再び苛(さいな)む。


―山羊頭は**を抱き、上空に飛び立つ。


黒い男「!待てよッ…!」


無駄だと解りながらも、その後を追う。


黒い男「彼女を離せよッ!」


届かないと解っていても、必死に地を蹴り、前へ前へと足を動かす。


息が上がりながら、右手で地面を叩き付ける。


悔しさで―


無力さで―


怒りで―


―あの、手が届かなかった―


―助けられなかった記憶が―


そう感じた途端、銃を仕舞い刀を抜き、屋本に斬り掛かっていた。


その余りの速さで生まれる衝撃によって、周囲の机が吹き飛ぶ。


瞬速で左肩から右下の脇まで、袈裟斬りで真っ二つに屋本を斬り裂いた。


ゆっくりと重力に従い斜め下にズリ落ち…なかった。


屋本「いいいやァ~速ァ~…! スススごいネぇエ~…!」


斜めにズレた後、下体と分かれた上体が浮き、屋本はケタケタと気楽に感想を述べた。


その切り口からは複数の百足が蠢き肉体を繋ぎ止め、その中心を巨大な百足が身体を上下に貫いている。


刃を持つ手を捻り、真下から脳天へと縦に斬り裂く。


縦真っ二つの切り口からは百足が蠢いて飛び出し、切り口を繋ぎ止める。


四つに裂かれた身体は蠢く百足によって紡がれている。


屋本「おッ…! ほォオぉぉ~! ほントにスごイ! コの力…! どコカら…!? そノ紅(・)イ(・)瞳(・)の(・)セ(・)イ(・)か…ナ?!」


…紅?


言葉が煩わしく、ジグザグに刃を斬り降ろす。


屋本「えガッ…?!! そそそレは…! キキっ…くねぇェ~!!」


上から斬られた頭部、右頭部の脳の部分から、巨大な百足の頭部が現れる。


黒い男「ふッ…!」


一呼吸置くと、丹田に力を込めて、流れる様に右後ろ回し蹴りを思い切り屋本の腹部へと食らわし、吹き飛ばす。


その衝撃で背部の窓硝子を勢い良く突き破った。


そして、蹴り飛ばした体勢から少し屈んで足に力を込めて、吹き飛ばした屋本を跳躍して追う。

挿絵(By みてみん)


月明かりの元に飛び出し、屋本に追い付くと、縦一回転して右の踵を、百足が飛び出た頭部に再(・)び(・)思(・)い(・)切(・)り(・)叩き付ける。


屋本「げぉッ…!」


その衝撃で右目が飛び出し、上からの衝撃で下顎の歯が割れ、中空に飛ぶ。


続けて真下へと急直下し、屋本は百(・)足(・)の(・)頭(・)部(・)か(・)ら(・)グラウンド中央の地面に叩き付けられた。


衝撃でグラウンドのコンクリが放射状にヒビ割れる。


屋本「アがっ…! そエあッ…ラえあぁッ…」


手足が衝撃で、壊れたマリオネットの様な歪み方をしていた。


これではもうまともに立つどころか動けないし、そもそも生命活動も行えないほどに身体が損壊している。


屋本「げホァっ…!」


肺に折れたアバラが刺さったのか、苦しそうに泡を吹くんだ血を吐き出す。


その真上から思い切り全体重を掛けた"閻魔"を胸部に突き立てた。


屋本「ぅごォォォあァァァァ!!?」


その衝撃で、更に屋本の下のアスファルトが凹む。


そして思い切り屋本の身体を、逆手で突き立てた刃で、滅茶苦茶に抉(えぐ)る。


屋本「をッ…!ヲッ…! ヲをっっ…?!!!」


屋本が全身をビクビクと痙攣させながら声に成らない嗚咽(おえつ)を漏らす。


それを無視して一頻り抉りたおすと、右手で思い切り上部に斬り裂きながら無言で"閻魔"を引き抜いた。


その時振り回した刃から、扇状に血が飛び散った。


そのまま"閻魔"を背中の鞘に仕舞う。


痙攣し、死を待つだけの屋本の肉体に眼を遣る。


黒い男「…」


その屋本の身体を見下ろす眼は冷たく、息も絶え絶え、正に死に向かう姿を、まるで害虫でも視る様な眼で見下ろす。


そしてゆっくりと屋本の身体は生命活動を中止していった。

屋本を斃す黒い男―

しかし黒い男はこう言い放つ―

早く出てこいよ―と

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。