もう一つの転写方法 16
何処ともなくゲートが開き、長身長髪の美しい男性達がハニエル様の部屋にできた光の扉から出てきた。
「これはこれは、アルフレッド王太子殿下」
恭しく頭を下げて挨拶をした男性。良く見ると、彼に皆が従っている。
「当主自らお出ましか。ここは魔法士団の研究所。無断で入って来られては困りますね」
「我々はハチ精霊様の救難信号とも言える結界術が発動されたので、やって来たまで。他意はありませんが、この状況は‥‥」
美人が凄むと怖いと言うけれど、ロードライ公爵の一門は皆が美しい顔立ちのため、凄みがあってグレン様が僅かに震えている。
「グレンよ、お前の髪は治されたと聞いたが、偽りだったか」
「リリアンヌよ、何故そなたが此処に居る?」
一番先頭にいた年配者と当主と呼ばれた公爵がグレン様の髪を見下ろしている。ロードライ公爵は、眉間に皺を寄せて厳しい鋭い視線を向けているけど、実の息子に何故そんな態度をとるのか不思議に思った。
リリアンヌ様にまで叱責が飛び火している。
どうしよう、このままだとグレン様がまた髪を切られてしまうかもしれない!そう思ったら‥‥。
ブーン、ブーン
「ハチ精霊様の羽音?」
グレン様の頭から無属性のハチ精霊様が飛び出して、彼の頭の上を飛び回った。魔法が解けるように蘇る髪と瞳の輝きに、ロードライ公爵と御付きの人たちは声を上げて驚いている。
「ハチ精霊様は貴方方が行った髪を焼き切る刑を無効にされました。グレンは初めから、ハチ精霊様の為に動かれて、精霊様を庇って耳を負傷したのです。このハニエル・ウェスティが保証します」
「では、その髪を癒した者がいる筈。何方がなさったのか?」
詰め寄るロードライ公爵の静かな圧が広がった。
「やめよ、エマニュエル。それより、アルフレッド王太子殿下、あれに至る原因を教えて頂けぬか?」
「グラン・ロードライ元公爵、それは私が聞きたいくらいですよ。あの中に居るのは、私の大切な婚約者なのだから」
現当主を一喝して抑え込んだ元ロードライ公爵の圧の方が半端なかった。それなのに、そんな圧をもろともせず、優雅な顔で睨みを利かせたまま爆弾発言をしてしまうアルフレッド殿下。
しばらくの沈黙の後、元当主のグラン様が深い溜息を吐いた。
「ここには、精霊の嫌う邪な気があったようですな」
杖で、私が封印した箱を指示した。
「この部屋で何が起こったのか、聞いても?」
全員がアルフレッド殿下を見たのは、研究内容が秘密裏に動いている状況だったために、仕方のないことかもしれない。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




