複合魔法と魔力映写魔法 10
「概ね、私も男性の皆様と同じ見解です。ハチ精霊様とグレンのどす黒い呪いに変貌した感情は、どちらも同じ者の様ですね。ただ、これだけ直情的に分かりやすいのに、二種類の異なる波動があります」
考え込んでいたハニエル様がグレン様に、自分の体内の感覚を見るように言っている。
「ああ、2人だ。一つは意識の無い魔力。もう一つは悪意の塊だ」
「私の光属性と無属性の視点から見ると、悪意の魔力が無意識の魔力を盾にして認識阻害をしている」
エドワード殿下の視点は重要な手がかりだった。全員が驚いた様に殿下を見ている。
王族だけが持つ光属性と無属性の観点から感じてもらうのは、見えない犯人の犯行を浮き彫りにしたから。そして、言葉通り受け取れば、犯人は犯行時に誰かの魔力を纏っていたことになる。
「エドワード殿下、ありがとうございます。殿下のお陰で見えない輪郭がハッキリしてきました」
「参考になったのなら良かったよ。それと皆に、私から約束事を1つ良いかな」
良かったと言っていた声色が、約束事を持ち出した途端に厳しい感じに変わったため、その場の全員がエドワード殿下の言葉を待った。
「今、皆が感じた魔力の者に会ったとしても、決して手出ししないこと。これは、アルフレッド兄上の命令だからね。下手に手出ししてリーナ嬢が狙われる事も、ハチ精霊様に何かあってもいけない」
王太子殿下が動かぬ証拠を突き付けて捕まえるまでは、個人で動いてはいけないのだとルール決めされた。
「歯がゆいわね。これだけ分かる悪意の魔力なのに、立証しないとダメだなんて。」
「リュー、目の前に犯人が現れても無視だぞ。気取られない事が肝心で、王太子殿下が我々に求められている事だ。政治的な判断も含めて、捕まえれば良いわけじゃない」
「フェン殿の言う通り。もし、誰かが接触して何かが起こったら、此方の情報も相手に渡るかも知れないってことだから慎重にならざるを得ない。この場合、エドワード殿下とリーナ様は死守だからね」
「分かっているわ、フェン、レイン殿」
膨れっ面のリュー様を、周囲にいないタイプでもあったので可愛い女性だと思った。末っ子の様な気質の彼女は憎めない愛嬌がある。
「リューもだけど、グレンも、だよ。再確認としてまとめようか。ハニエル頼める?」
「はい。レイモンド・パステル、スティーブン・ライリール、エルヴィス・サンディスタ、その従弟のケリー・サンディスタと、グレン・ロードライの5人が“腕試し”に参加。
レイモンドは雷属性と風属性を持ち合わせていないのと、グレンからの証言で剣技を試していただけとあります。グレンは先ほどリーナ嬢のお陰でハチ精霊様から無実だと証明されています」
殿下に頼まれたハニエル様が今までの経緯を説明しているけど、とても分かりやすく把握しやすい。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




