複合魔法と魔力映写魔法 7
「木属性のロードライ公爵家の方々は、精霊契約を修める方々が多いと聞きました。そのロードライ家の方が精霊様に無体を強いることは無いと思っています」
アルフレッド王太子殿下もグレン様を危険視するような言動はしていなかった。
「もしかして、次兄レイモンドが起こした“腕試し”の守り人に奇襲の件で、犯人がハチ精霊様に危害を加えた事に気が付いて、真相を見極めようとなさったのではありませんか?」
驚きに目を見開いて、私を見つめる彼の視線が真実だと告げている気がした。
「怪我とは、どのような怪我を?」
「何も」
そっぽを向くように顔をハニエル様の方へ向けてしまうグレン様は、心が悲しんでいる様に見えた。
「心と体の怪我ですよね。ロードライ家はとても精霊信仰に敬虔なのです」
「おい、やめろ!」
ハニエル様に掴みかかろうとした手は払われて、頭ごと押さえつけられている。ハニエル様が強すぎるのか、グレン様が弱すぎるのか、先ほどの違和感が浮上した。
「グレン様、失礼します」
一言だけ断って、彼を視た。
「っ!」
口元を抑え、かろうじて悲鳴を上げずに済んだけど、彼の魔力回路はズタズタに引き裂かれた様な酷い有様だった。特に耳と髪の毛先に種類は違えど、どす黒い魔力を感じる。
六公爵の歴史を本で読んだ時に、ロードライ公爵家は外部との交流が少なく精霊信仰を重んじる一族で、髪にその神聖が宿ると言われて一族の者は長髪だと書かれていた。
しかし、目の前のグレン様は短髪で、その髪には焼き切られた見えない刑罰の痕があった。
「グレンは犯行に気が付き、ハチ精霊様を庇って耳に怪我をした。彼が寝込んでいる間に、ロードライの一族の中に良からぬ噂が立った。彼も犯人と共謀したのだと。そして、彼は一族の手によって美しい髪を失い、片方の聴力を失った」
ああ、だからなのかと、彼の座り方や仕草に違和感があったことを思い出した。
「もう、いいだろう。正義感で止めに入ってやられて、仲間にも見捨てられた愚か者の話なんて」
「良くありません!」
無性に腹が立った。
何故、ハチ精霊様を助けたグレン様が酷い仕打ちを受けたのか、悪意が彼を貶めたのだと気付いてしまったから、余計に許せない気持ちに火が付いた。
「何処まで愚劣なの‥‥ハチ精霊様もグレン様も、正しい事しかしていないのに」
目頭が熱くなり、心が鷲掴みされたような苦しさが駆け巡った。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




