いざ実食
天使のスープと俺たちのおむすび。さあいざ実食だ。審査員たちと天使の前にそっと差し出す。
「これは『おむすび』。バラバラになった心と、忘れられた温もりを結びつけるための食べ物なのだ」
俺たちが作る料理ギルドと美食ギルドと神の結びの絆を現す料理。
天使のスープが完璧な氷のように透き通っているのに対し、ルシファーたちの握ったおむすびからは、柔らかな湯気と炊きた
ての米の甘い香りが立ち昇っている。
「では天使様の料理から頂こう」
「透き通るスープは何重にも味が染み渡るようです」
「この無駄がないスープ。旨すぎますな。何杯でも飲めそうですぞ。さて次は……」
審査員達がおむすびを手に取るとおむすびのぬくもりが手から心臓へと伝わっていく。
「ああ。これはなんということだ。このようなものが世の中にあったのか……」
「なんという味。旨味、素晴らしい」
「これほど旨いものは初めてだ」
『ランキングランクが上昇しました』
美食ギルドのギルド長は涙まで流しているな。
審査員の反応に天使ガストロノミエルが動揺している。
「馬鹿な。わたくしの料理がこのような……」
天使ガストロノミエルがおむすびに手が触れるとそのぬくもりに神の鼓動が反応する。
「これは!!」
天使ガストロノミエルが発光し心臓の鼓動が大きくなる。
どくん。⋯⋯どくん。
大きな鼓動とともに神が現れたようだ。
『磐鹿六雁命が顕現しました』
「おおっ神が現れたのだ」
『ふぅ~とても旨い料理は久々じゃ』
磐鹿六雁命の反応に周囲はざわついた。
「セッカ様を呼ばねば」
飽食のセッカか⋯⋯。
ベルサイズの女王ジーンエスターが言っていた王の名前だ。
『セッカか久しいのぅ⋯⋯どれあの子童の様子はどう変わったかの』
飽食のセッカを小童と言うあたり神が昔からいた事がうかがえる。
「待て!セッカ様まで来てしまうと私の立場が⋯⋯」
そう叫んでいる美食ギルド長がかなり焦りだした。
「あなたがしているのはもはや料理の冒涜だ。作る楽しみや料理の愛情をないがしろにしている」
『うむ。周りを見よ。あの笑顔は無くしてはならんもんじゃぞ』
「⋯⋯ああ」
少しの間、美食ギルド長が目を閉じると考えるように腕を組んでいる。
「わかった。美食ギルドは解散する」
「美食ギルド長!?」
「料理とは素材を美味しく安全に取り込む行為でそこに美食が生まれる。美食は五感で楽しむ、至福の食体験なのだ。作られなければ美食も味わえない。我々は食べることだけに集中しすぎたのだ。よってこれからは料理ギルドと連携して料理アカデミーを設立する」
『うむ。それは良い考えじゃ』
「そういえば天使はどうなったんでしょう」
シェールの声でルシファーが反応を見せる。
「天界に送り返してやったのだ」
どうやら騒ぎの時にルシファーが天界へと天使を送り返したようだった。
「感謝するぞ。如月夏樹一行」
「セッカが現れたわよ」
「あれが飽食のセッカか」
「ふふん。やっとおでましなのだ」
黄色と緑の整えられた服にこの世界には似つかないくらい顔立ちが整っている。まさに王たる所以である。
「料理アカデミーを認めよう。ではさっそく料理を始めよう」
「勝負ってこと?」
「いや皆に振る舞いたい。如月夏樹一行手伝って貰えるだろうか?」
「もちろん」
「さあ皆始めようか!」
「はい!師匠!」
「やれやれね」
「いきますわよ」
「ん⋯⋯頑張る」




