捕われた神
天使が姿を現すとルシファーと対峙する。
「初めまして、わたくしガストロノミエルと申します」
現れた天使、ガストロノミエルは悠然と構えている。
「我が輩はルシファーなのだ」
負けじとルシファーが答える。
「戦闘とは醜いことをせず私達のルールで勝負いたしましょう」
「勝負というのは何なのだ」
「もちろん。料理です」
ん?料理?
歓声が上がり、コンテスト中の会場は盛り上がりをみせている。
今度は天使と悪魔が織りなす料理対決なのだと。
あれだけうまいものが食べれたのだ。皆、期待はマックスである。
ルシファーが頭をかきながら少しばかり困っている様子がみえる。
それもそのはずルシファーは食べる専門であった。
ルシファーが台所に立つと場が荒れるのだ。
立場というものである。
ルシファーが動くとパイモンが動きはじめるのだ。
それによりラバル、アバリム、バティンが援護に入り密度がすごいことになる。
今回の戦いは単騎決戦のようだ。
『あの天使、ガストロノミエルの中に何か得体が知れないものがいるようです』
天地万有の声が聞こえルシファーに共有する。
『ルシファー、ガストロノミエルの中の波動を感じ取れるか』
『もちろん分かるのだ。あれは神の気配がするのだ。捕われているみたいだから料理で感動すると波動が大きくなるかもしれないのだ』
『ルシファー、今度は俺がお前をサポートする番だ』
『なつき……任せたのだ』
『ジョブチェンジ level5 デモンズエンペラー』
ルシファーと波動を同調し動き出す。
ルシファーが魔法袋に入っている米を取り出し研ぎはじめる。
このジョブチェンジの行動でルシファーと同調し、動きをトレースする。
作る料理はおにぎりだ。
『俺の動きに続いてくれルシファー』
『うむ。任せるのだ』
つぎはウインドストーム!海苔を乾かして適度な大きさに切り分けていく。
プチフレイム!クイーンサーモンを焼いてほぐす。
次は釜の火をいれ米を炊いていくぞ。
二人の動きが完全に重なり、ルシファーの背後に夏樹の残像が巨大な魔神のように浮かび上がる。
その巨大な手が、繊細に一粒の米を慈しむように研いでいく。
「ルシファーが行動しているのを見るとなんだか夏樹のまわりでも何もない空間に食材がみえるようね」
香りは少ないが見たことのない調理風景に皆、息を呑んでじっとみている。
ところで天使ガストロノミエルは何を作っているんだろうか。
鍋で何か煮込んでいるようだがよく見えない。
『どうやら素材の旨味だけを抽出してるようなのだ』
なんだか考える事は一緒のようだ。
流石は天使だ。
ただ俺たちはお前が知らないものを知っている。
炊きあがった米は神々しいくらい輝きをしている。
さあ奥の手で用意したルシファーの魔力を込めた塩を米に振りかけおにぎりを握り始める。
もうすぐ完成だ。
天使の一切無駄がないがどこか冷たい完璧なスープと手塩にかけた俺たちのおむすびの対決になる。




