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私の行く道

 イリアナ→フィリップ(イリアナのお父様)の視点です。

 頭が真っ白白。訳が分からない。院長先生とこの女の人の間では話が繋がっていても私には突飛な発言なんですけど…。

 ポカーンと府抜けた顔をしている自覚はある。でもまだ思考が再始動していないからどうすることもできない。


「イリアナさん…?…ああ、わたくしの紹介をしておりませんでしたね。改めまして、わたくしはシェヘラザード王国のシックザント公爵が妻、グロリア・シックザントですわ。夫であるチャーチルとわたくしは、魔力を持った子供を養子にしようと考えていますの。イリアナさん、来てくださらない?」


 さらりと凄いことをカミングアウトされたよ。公爵家って。段々頭が働いてきた。公爵家、公爵家…。どこかで聞いたことがあるような無いような…。あ!シェヘラザード王国の公爵家と言えば四大公爵家があるって、お父様が言ってたはず。権力的には確か王家の一つ下だったような。そっか。この人凄い人だ。でも…


「養子を、ということはその…。」


 言葉を濁してあるところに目をやる。察してもらえたみたい。グロリア──さん?公爵夫人だからグロリア様か──グロリア様は困ったように笑って言葉にする。


「その通りですの。だからわたくしたちには養子になれる子供を探しているのですわ。」


「えっと…、親族から、とはお考えには?」


 あの大戦の前に人間界にいた人から聞いたことがある。人間の貴族は子供ができなかったら血族である分家から養子にとることがあると。公爵家なら分家は沢山あるだろうからそこから養子にとれるはずなのに。


「その方法もあるのですけれど、詳しいことは教えられませんの。ただ、養子は貴族ではない者からとることにしていますわ。だから、どうかしら?」


 多分、理由は政治的なものなんだろうな。それよりそろそろ返事をしないとこれ以上追及してしまったら怪しまれるよね。どうしよう。私がこの人間界に来た目的は人間が信用に値するか確認するため。でも魔人族は恐れられていることが分かったし、歴史が正しく残っていない可能性が出てきた。今はその歴史がどう伝わっているのか探るのが私のすべきこと。もし私がここで養子になったらそれはやり易くなるかな…?

 頭の中で素早く養子になった場合とならなかった場合の利害を考えて比較する。考えた結果養子になる方が利が大きい。もし歴史が本当に正しく残っていなかった場合、公爵家の養女としての立場があれば正しい歴史を伝えやすくなる。それにかつての大戦の原因は王だった。公爵家の養女であれば、もうあんなことが起きないように国王を近くで見ることができるし、次期国王を見定めることもできる。良いことずくしだ。


「分かりました。お受けします。ただし、一つだけお願いがあります…。」


 私が養子を受けることが決まってからは早かった。グロリア様は帰っていき、次の日に迎えを出すと言われて急いで私物を纏めにかかった。私物って言っても小さな籠に入る程しかない。私が持っている服はトゥーリにあげた。衣服類は一切持っていかない。自分が着ているものだけ。籠にはウィルから貰った髪飾りと孤児院の皆から貰った手作りのペンダント。そして院長先生から貰った羽ペン。籠の中を見て私は笑みがこぼれた。だって全部貰い物。人間界に来てから貰った物だけ。嬉しくなるのは自然なことだった。




◇◈◆◈◇◈◆




 皆が寝静まり外は闇に包まれ、唯一の明かりが細い三日月だけになった頃。私は共同のベッドを抜け出して外に出た。防音、認識阻害の結界を張り通信用の魔術具を取り出す。これを使うのは何ヵ月ぶりだろう。何ヵ月ぶり、じゃないな。一年は経っている。

 魔術具に魔力を流して起動する。


「おと「リーナ!」」


 お父様の映像が目の前に現れた瞬間、私の言葉を遮ってお父様は心底嬉しそうに破顔した。私から話しかけたかったのに。でもお父様がこんなに喜んでくれるのは私も嬉しい。今すぐ抱きつきたくなる。私の目の前には映像しかないのが残念だ。


「どうして今まで連絡してくれなかったんだ。」


「そんなこと言われても…。連絡すべきことだけを連絡するようにって言ったのはお父様じゃない。」


 するとお父様は頭を抱えて何か唸りだした。


「あ、いや、そうは言ったが。う~ん。でも…。」


 このままじゃ埒があかなくなっちゃうから話進めてもいいよね。


「あのねお父様。私この国の貴族に、養女としてなることになったの。」


「…。は?」


 あら、流石のお父様でも驚くみたい。そりゃそうだよね。一年ぶりに会話した娘の口から『私貴族なります』だもん。戸惑うよね。

 

「シックザント公爵家。お父様がいつか言っていたよね。人間の国王が魔界を訪ねてきたとき名前を出してたって。協定を結ぶのに尽力してるとか何とか言ってたって。その家なの。どうやら子宝に恵まれないみたいなの。」


 ここで一度言葉を切る。お父様なら私がこの家に養女として入ることのメリットは言葉にしなくても分かるはず。案の定お父様はそういうことか、と頷いてくれた。


「でもな、リーナ。君は辛くないのかい?リーナが魔神王からの命を忠実にこなしてくれるのは凄く助かるよ。でも、リーナの好きなこともしていいんだからね?人間の貴族は私たち四大魔神の一族と似て非なるものだと聞いている。私たちはその立場があっても自由に周りの者と変わらない身の振り方ができる。でも人間の貴族はそうはいかないらしい。それでもいいのかい?」


 私は黙りこんでしまった。正直その事は考えた。でもそれは仕方ないかなって思っていた。だって私が人間界に来れたのは魔神王が私に命を下してくれたから。それに報いなきゃって気持ちが大きい。勿論自分のしたいこともあるけどそれは二の次だよね…?じゃあ、もし私がここに来た目的のことを考えなくていいとして、今の状況だったとする。そうしたらどうだろう。孤児院の皆は好き。でもここでは知ることのできることが少なすぎる。貴族の令嬢になったら?視野は凄く広がるんじゃないかな。それが例え偏っていたとしても。それに偏っていたならば偏らないようにすればいいだけ。私はそうする術を持っているから。それに…。


「お父様。それでもいいよ。約束したんだ。」


「約束…?」


「そう。約束。でもお父様には秘密だよ!」


 ふふっと笑って誤魔化す。お父様は苦笑しながらも誤魔化されてくれた。

 久々に親子でこんな会話が出来たのは凄く嬉しい。もういつまでも話していたい。でもそれは叶わない願いで。時間は無情にも刻々と過ぎていく。流石にもう寝ないいと明日がきつい。明日から忙しくなるのは分かりきった事。だからもう会話を終えないといけない。


「ねえ、お父様。私明日から親が出来るんだよ。人間界での親。私のお父様はお父様だけど、こっちでのお義父様はどんな人かな。お義母様ってどんななんだろうね。わたしお母様のこと全然覚えていないから本当のお母様みたいに感じちゃう。仲良くやれるかな。」


「大丈夫。リーナなら出来るよ。お父様が保証する。だってリーナはお父様の子だからね。いっぱい新しい体験をしておいで。じゃあそろそろかな。お休み。私の可愛い愛しのリーナ。良い夢を。」


「うん。お休みなさい。私の大好きなお父様。」


 そう言うと通信が途切れる。私の心の中はもうこれ以上ないくらいに満たされた。


────明日から頑張ろう。


 そう決意して皆の寝るベッドへと帰った。




◇◈◆◈◇◈◆




 『私お母様のこと全然覚えていないから』か…。


 リーナが産まれて間もなく、私の最愛の妻でありリーナの母親であるシエルマリーは、生まれつき体が弱かったのが祟って100年の年も生きずして他界してしまった。今までリーナはおくびにも出さなかったが、母親がいなかったことが寂しかったのかもしれない。あのリーナの事だから私を気遣って口に出さなかったのかもしれない。

 そう考えると思わず溜め息を漏らしてしまう。リーナがこの家から居なくなって一年以上たっても未だに立ち直れない。勿論仕事に支障は出さないようにしている。クロノスが煩いからな。こうして離れて気付くことは沢山あった。今回のこともそうだ。


 しかしだな。リーナとの連絡を制限されたのは本当に耐え難い。リーナからの連絡しか駄目で尚且つこちらに伝えるべき情報がある時だけなんて…。カミエラ様は本当に酷なことをなさる。カミエラ様は前四大魔神。カッサンドラの一族で今では弟に地位を譲っているけれど、発言力は未だ衰えることを知らない。そのカミエラ様が制限すべきだと言ったせいでこんなことになっているのだぞ。本人を前にしては言えないのだがな…。

 もう時間も遅い。明日に備えて休息をとることにしよう。


「お休み。我が愛しのマリー、リーナ。」

 閑話を挟んでから二章に入りたいと思います。

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