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ボクはボクっ娘 魔族の娘  作者: 風鈴P
第2章 旅立ち編
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第18話 城塞都市ロクロワ(2)


「こちらが我が町の冒険者ギルドです。」

ロクロワの衛兵隊長“エクトル”の案内で、ボク達はまず冒険者ギルドを訪れた。

どの町でも、冒険者ギルドと言うのは似た雰囲気である。

冒険者にはそれぞれ多種多様な目的があるのだろうが、どの者も危険を冒して依頼(クエスト)をこなしていくというのは共通している。

そう言う者達が集まる場であるから、必然的に雰囲気はそうなるものだ。



「エクトルの旦那、随分久しぶりで。」

「ああ。お前も相変わらずの様だな?」

エクトルは入り口付近に立っていた冒険者と何か会話していた。


「そろそろ誰かのコバンザメみたいなのはやめて、真面目に依頼(クエスト)をこなしたらどうなんだ?」

「へっへ。あっしみたいなのは小銭さえ稼げれば良いんでさ。また今度お願いしますよ?」

「フン。考えてはやるが、期待しない事だ。」

エクトルはその冒険者の肩をポンポンと叩いた。


「おっと、失礼しました。実は私も冒険者登録をしておりまして、こいつは私と数日違いに冒険者になった男でしてな。言わば同期なのですが、真面目に依頼(クエスト)をやらない奴でして…。まぁ、リディ殿には関係のない事ですが…」

エクトルにそう言われた冒険者は大げさに肩をすくめていた。

「そう言う旦那は珍しいお連れ様と一緒ですな。…あっしは面倒には巻き込まれたくないのでこれで失礼致しやす。」

その冒険者は下品な笑いを浮かべ、冒険者ギルドを出て行った。


「・・・」

あの男、実力を隠しているような感じがするな。


「リディ殿。まずは受付にお出で下さい。」

エクトルに促され、ボク達は受付の前に立った。


「冒険者カードをお出しください。」

受付の女性に言われ、ボクは自分のカードを出した。

女性はカードを受け取るとチラッとボクの顔を見た。

恐らく、魔力検知の能力(スキル)を使っているのだろう。

冒険者ギルドの受付をする者は、魔力検知の能力(スキル)を持つ者が多い。

何故なら大した実力の無い者が冒険者になったら直ぐに命を落とす。

そう言ったものを弾く、言わばフィルターになるからだ。

まぁ、今は見て見ぬふりをする者もいるようだが。



「・・・!?」

女性の表情が僅かに歪んだ。

ボクが魔族だと分かったのだろう。

ボクの冒険者カードを前に置いた水晶にかざすと思い直したように表情を戻し、ボクに話し掛けて来た。

「リディ・ベルナデット・ウイユヴェール様、冒険者カードに更新がございます。ランクがCからB+に昇級していますね。」

あれ、いつの間にランクが上がっていたのだろう?

「マルゴワールの冒険者ギルドからの依頼(クエスト)の『バイゼル城奪還作戦』がクリア判定をされております。」

なるほど…。

そう言えば、あの忌わしき戦争は確かに冒険者ギルドからの依頼(クエスト)だった。

「報酬は受け取り期限が過ぎておりますので支払いできませんが、経験値は認められますのでカードを更新しておきます。」

そう言うとボクのカードが発光した。

魔法によるカード情報の書き換えが行われているのだ。


「リディ殿のランクはB+でいらしたのか。私はBランクなのですが、我が町の冒険者ギルドにはAランクがギルドマスターしかおりませんので、2番手を取られてしまいましたな。」

エクトルが感心したような表情で頷いていた。


「リディ様、お待たせ致しました。カードをお返し致します。」

ボクは女性からカードを受け取った。

「ありがとう。」

ボクはフードを脱いで、女性に礼を言った。

女性は少し表情を和らげてくれた。

「あと…、ボクの仲間も冒険者登録をしたいのだが。」

「畏まりました。こちらの用紙に必要事項を記入してください。」

女性はヒスイとリシャールに申込書を渡した。

リシャールは教養が元々あるからか、スラスラと記入していった。

「ねえ、リディ。これはどうやって書けばいいの?」

ヒスイはやっぱり分からないようだ。

「えっとこれはね、ここに名前を書いて…」

ボクは一つ一つ説明した。

何だか、ボクが冒険者登録した頃を思い出すな。


「えっとー、名前はフルネームで…」

ヒスイがあまり上手とは言えない文字で名前を書き始めた。


ヒスイ・クザン

ん? クザン…?

「ヒスイ、クザンって姓だけど…」

「あ、これ? 土鬼族は姓を持たないんだけどさ。俺に剣を教えてくれた木こりの人が、テオドール・クザンって言って、弟子にした証拠にくれたんだよ。」


ああ…、ヒスイに剣を教えた“自称・木こり”と言うのはテオドール・クザンだったんだ。

テオドール・クザンと言うのはボクの故郷であるノワールコンティナンで出会ったAランク冒険者で、当時の一行(パーティ)と一時行動を共にした人物である。

Aランクに相応する実力の持ち主で様々な戦闘技術を習得していて、特に剣の腕は相当なものだった。

そのテオドールに剣を教わったから、ヒスイは人鬼(ホブゴブリン)の時からあれ程の剣を使えたのか。


「書き終わったよ!」

そう言ってヒスイは受付に紙を出した。

リシャールは既に書き終わり、提出した後だった。

「受付致しました。お二人は登録したばかりなのでEランクからのスタートになりますが…」

「この二人はボクとの一行(パーティ)登録をしておいてくれ。そうすればB+まで依頼(クエスト)を受けられるだろう。二人の実力の方は問題無い。」

この二人は最上位人鬼(ガルブデガック)高位黒妖精族(ハイ・ダークエルフ)だ。

特に問題も無いだろう。

「畏まりました。その様に登録致します。」


少しして二人のカードが出来がった。

「ふむ。これが冒険者カードか。」

リシャールが自分のカードを見つめた。

「うん。これがあれば冒険者ギルドから依頼(クエスト)を受けることが出来るし、ギルドが提供するサービスが受けられる。まぁ、今日の所は登録だけで良いだろう。」

カードを受け取ってはしゃぐヒスイを抑えながら、ボクは振り返ろうとした。


「何だぁ? こいつら人間じゃねえな。」

数人の冒険者がボク達に絡んできた。

「魔族に、黒妖精族(ダークエルフ)人鬼(ホブゴブリン)だぞ? 何で魔物共がここにいるんだよ。」

下品で、ボク達を見下した様な表情だ。

「おい、お前達、やめないか。彼女達は同じ冒険者だ。ここにいる権利がある。」

エクトルが間に入ろうとした。

「け! 衛兵のエクトルか。町を守る衛兵なら、こんな奴等つまみ出せよ。」

他にも色んな事を言っている。

典型的な罵詈雑言であるから、ここは割愛させて頂こう。


どうしようも無い奴等だ。

自分達の実力に過大な自信があるのだろうが、こう言う輩はどこにも居るものだな。


「ねえ、リディ。こいつら斬って良い?」

「私が罵詈雑言を言われるだけなら耐えられるが、仲間に対してのものはであれば許されんな。」

二人は戦闘態勢に入りそうだ。

さすがに登録したばかりでそれはマズい!


ボクはずいっと二人の前に立った。

「ボクはこの一行(パーティ)のリーダーをしているリディ・ベルナデット・ウイユヴェールと言う。貴方方が言うようにボクは魔族だが、別に人間とコトを構えたいわけでは無い。でももし一戦戦いたいと言うのであれば、一行(パーティ)を代表してボクが相手になるぞ?」

ボクは魔眼を発動させ、冒険者の首に鋭い爪を当てた。

「…動けるものならばな?」

ボクは耳元で囁いた。

勿論、魔眼を抵抗(レジスト)出来ない彼等は動ける筈が無かった。

ま、強めに掛けてやったから、魔眼解除後も数分は動けないだろう。


「わー、リディ! かっこいい!」

「うむ。流石は我が友である。」

ボクの仲間達はうんうんと頷いていた。


ボク達は動けず固まっている冒険者をしり目に、冒険者ギルドを後にした。


「ふむ。あれは…、かなりの者だな…」

エクトルはそう呟くと、小走りに後を追いかけた。

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