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依頼

 アレンが王宮に出仕し、謁見という名の指導を受けてから、2週間ほど経ったとき、アインベルク家に来客があった。


 来客者は3人、セオドア=スペイラ、クライブ=ジース、リー=カッフェンとそれぞれ名乗った。3人とも近衛騎士団の所属しているという話だった。セオドアは近衛騎士団の第四大隊の隊長であり、爵位も伯爵というエリート中のエリートのようだ。年齢は34歳でその鍛えられた体躯からは一切の妥協という者が感じられない。いかにもエリート軍人といった風貌だ。

 クライブ、リーの二人はセオドアより若く20代後半といった感じだ。また、二人もエリート軍人といった風貌だ。

 いずれにせよ、近衛騎士となるのだから、実力的にも家柄的にも申し分ないのだろう。


 いずれにせよ、用があるから来客したのだから、客室で要件を伺うことにする。キャサリンにお茶の用意を頼むと客室に案内する。

 普通貴族は、客を主人自ら案内することはありえない。あいにく、今は、ロムが所用のために出かけており、キャサリンにお茶の用意を頼んでしまった以上、他に案内する者がいない以上アレンが案内するのは当然だった。



 客室に通し、着席を促す、しばらくしてキャサリンがお茶の用意を終える。キャサリンが退出すると、セオドアが口を開く。


「今日は、アインベルク卿に頼みがありまして、伺いました」

「どのような事でしょうか」


 セオドアの口調にも視線にも、アレンへの嘲り、蔑みは感じられない。また、クライブとリーの視線も同様だ。いや、むしろ敬意すら感じる。


「実は、我が隊の若手をアインベルク卿の墓地管理の仕事に同行させていただきたいのです」

「同行ですか?それは構わないのですが、理由をお伺いしたいのですが・・・」


 予想外の申出にアレンは困惑する。近衛騎士のようなエリート中のエリートが、墓地の見回りに参加するというのは、不可解であったのだ。


「ご存じの通り、近衛騎士は一握りの者しか入団は許されません。」

「はい、存じております」

「新しく入団したものの中には、自分は選ばれた人間と妙に他者を見下すような者がいるのです」


 クライブもリーもセオドアの言葉に頷く。


「特に、今回の入団者の幾人に、その意識の顕著な者がおります。そこで、アインベル卿の仕事に同行させるのです」


 あれ?状況を整理しよう、要するに近衛騎士の鼻っ柱を折ってくれということなんだろうけど、なんで墓地の見回り?


「不思議にお思いでしょうが、これは、私達の経験から来ることなのです」


 アレンの困惑の表情を見て、リーが告げる。残りの二人も頷く。


「実はお恥ずかしながら、私も入団したばかりの頃は、有頂天になっておりました。自分の力に自惚れており他の騎士団や兵士達を見下していたのです」


 リーは己の若かりし(今の十分に若いが)頃の失敗を思い出したようである。


「そこで、お父上のユーノス様の見回りへの同行に上司から命じられました、最初はたかが墓守ごときとユーノス様を侮っておりましたが、同行してみて、その力量に感嘆しました」

「ああ、俺も見惚れた・・・」

「あそこまで、実力差があると嫉妬の念も起きなかったな」

「むしろ、嫉妬出来るぐらいの実力があればと思ったものです」


 三人は、かつて見た父ユーノスの実力を思いだし、憧れの表情を浮かべる。それから、三人は心を入れ替え、ユーノスに少しでも近づくために必死に研鑽を積んだらしい。そして、いつの間にか近衛騎士団の中でも指折りの実力者となったとのことだ。


「自分よりも遥かに上の世界を見せつけることが、何よりも必要なのです」

「どうぞ、よろしくお願いします」

「本来であれば、騎士団が行うべき事ですが、圧倒的という言葉すら生ぬるい程の上の世界を見せられるのは、アインベルク家の方しかいないのです」


 さすがに、ここまで年上の騎士達に、丁寧に申し込まれると、アレンも嫌とは言えない。


「分かりました。そのような事情があるのでしたら、喜んでやらせていただきましょう」


 アレンの了承の言葉に三者ともほっとした様子であった。


 同行日は3日後に決まった。


 こうしてアレンの日課の墓地の見回りに、3日後に同行者が付いてくることが決まった。


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