第二十二話 キリエVSガルメラ
(俺の爪は貫く力が強いということで、破壊のレギオンに選ばれたんだ。いくら俺がその中で順位が低かろうが、こんなことはありえない! ありえるわけがないんだ! なのに、なぜ……。一体、どんな能力を使ってやがる! あの野郎……!)
そんなことをガルメラはキリエに警戒しつつ、考えていた。
重要なのは、どういった能力なのかということ。
「クソ……!」
その悪態はおそらく、眼前の恐怖に対してだろう。
ガルメラにはレギオンに所属できる程の実力があるとはいえ、敗北することが皆無であるということはない。
恐怖を感じることも、また然り。
だが、それに負けるような者ではない。ガルメラはなんとしても打開策を見つけなければならない。
そうしなければ、おそらく彼を待つのは死だけだから。
故に、ガルメラは命を賭して闘う。
ランツァではなく、キリエと。
「おおおおおおおおおおおお!!」
残り五本となった爪で、ガルメラはキリエに挑んだ。
「威勢のいい奴ね」
一メートル程までガルメラは接近し、五本の爪を縦に振りおろした。
にも拘らず、キリエは指一つ動かさなかった。
(今度こそ、勝った……)
そう思えたのも束の間、やはりガルメラの刃はキリエにとっては、無力の刃でしかなかった。
「なぜだ……!?」
距離を取りながら、当然の疑問をガルメラは口にする。
「滑稽ね……」
キリエは苦笑しつつ、そう呟いた。
「私の能力が如何なるものか、解せないのでしょう?」
「…………」
「……一つ、ヒントを教えてやってもいいけど」
ガルメラはその言葉に思わず期待してしまった。
だが、すぐにそれには頼らないと、意を決する。そうしたのはプライドが許さなかったからか。
しかし、キリエはそれを無視して話を続ける。
「ヒントというよりアドバイスに近いかもしれないけど、あなたが私を殺そうと思っても、私を殺す事はできない」
? と、ガルメラの脳内にさらに疑問が浮かぶ。
それは仕方ないことなのかもしれない。なぜなら、キリエはわざとわかりにくいように言ったのだから。
「理解できないのなら、それでもいい。たとえ理解できたとしても、どの道、私に勝つことなどありえない事だしね」
「ほざけ!」
キリエには、負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。
そして、彼女は言い放った。
「私はキリエ・フォーテュンよ。この名が何を意味するのか、レギオンに所属できる程の者なら知っているでしょう?」
はっ、とガルメラが息を呑んだのを確かに見た。
片隅に倒れているランツァは、当然この意味を知る由もない。
「あり……えない……」
ガルメラはあまりの驚きに、途切れ途切れの震える声でそう言った。
「てめえは……本当に……化け物なのか?」
「化け物か……。確かにあなたから見れば、そう映るのかもしれないわね。だけど、化け物なのはあなたもじゃないの?」
直後、周囲の建物が爆発したような気がした。
いや、本当に爆発しているようだった。
そのすさまじい爆風は、負傷者のランツァを遠慮なく襲う。
「ぐ……」
もちろん、それらは跡形もなく崩壊していた。
「やっぱりね……」
キリエは今起こったことを見て、確信した。
「やっぱりあなたは力を隠していた。不思議に思っていたのよ。あの程度の力では、絶対にレギオンには入れない。それ故、レギオンのことは口実かと一瞬思ったけど、口調からしてどうしてもそうは考えられなかった。なら、実力を隠しているとしか思えない。この私のように、ね」
「ちっ……。感が鋭すぎて、嫌になっちまうぜ」
ガルメラの爪に特に変化はない。なら、他に何か変化があるのだろうか。
キリエはどんな些細な変化も見逃すまいと凝視するが、結局、変化は見当たらない。
どうやら、外見には全く変化がないようだ。
「確かに、俺は力を隠していた。だがよぉ、そんなこと知ったところで、別にてめえが勝てるようになったわけじゃあねえよなあ!!」
先程までとは、完全に異にしているセリフ。
「なんだ……。やっぱり演技だったのね……。まったく、あなた達悪魔はどうしてこんなに楽しませてくれるの?」
軽く皮肉の混じったセリフと同時に、大地に亀裂が走る。
両者が大地を蹴ったため。
そして、天使と悪魔が衝突する。




