第二十一話 ガルメラの力
「クソったれが……!」
ガルメラは瓦礫の山から脱出しつつ、悪態をつく。
(何なんだ!? あの野郎の能力……。あれは、今まで遭った中でも特に異質な力だった……。一体、何者なんだ!?)
ガルメラは驚愕していた。キリエに対して。
一方で、キリエはガルメラが立ち上がったことに気付くと同時に、こう言い放った。
「さて、思い出したならその力を見せてみて」
「ああ」
その一言でランツァは答えた。
「クソが……! 力を見せつけるのは俺の方だ!」
距離は結構あったが、彼らのセリフは聞こえたようだ。
そして、ガルメラは十本の刃でランツァに襲いかかる。
ギイイィン! と、刃が交錯した音がした。
十本の刃を器用に扱うガルメラの攻撃を、ランツァはたった一つの剣で防ぐ。
何度も何度も。
「どうしたどうしたぁ? その程度か? てめえの力はよぉ!!」
バギィン! と、今までで最も強い交錯音がした。
やはり、ガルメラは倒せないのか……。
そんなことを思っていた。
先程までは。
だが、今は違う。ランツァは力の扱いを、あの時使った力を思い出したのだ。なら、ガルメラは絶対に倒せない敵ではない。
「う……おおおおおおおおおお!!」
遂に彼はあの時の力を発揮する。
十メートル程まで巨大化した剣は、真横に振るわれた。
それをガルメラはまた、片腕で受け止めようとする。
まるで、ランツァを侮辱するように。
だが、厳然たる事実はガルメラの思惑とは異なっていた。
片腕は、いとも簡単に切断されようとしていた。
しかし、ガルメラはそれをただ驚いて見ているような悪魔ではない。
ガルメラは瞬時に最も相応しい行動を見つけ出し、実行する。
それは、もう片方の手にある長い爪でランツァの剣を止めること。
ランツァも、ガルメラの思考を悟り、さらに力を加える。
だが、間に合わない。
ガルメラの方がランツァよりも速く、攻撃を止めたのだ。
「ぐ……」
ランツァは身の危険を感じた。だから、即座に距離を取ろうとするが、それをガルメラは許さなかった。
「ふっ……」
苦笑。
ガルメラはこれを好機と思った。ただし、言うまでもないがランツァはそんなことを知る由もない。
「俺の力は、ただ敵を斬り裂く爪だけじゃねえ」
「…………!」
真実か否かどうかはわからないが、意外な言葉にランツァは思わず驚愕していた。
「俺はディレ・ディオスの所属だ。破壊を称するレギオンに入れる俺が、何の能力ももっていないとでも思ったのか?」
「…………」
何一つ、言葉が浮かんでこない。
「いいことを教えてやる。レギオンには、それぞれの分野で特化した者だけが集まる。要は、弱え奴は入れねえってことだ。で、俺は破壊の分野で優れている。つまり、俺の力がその辺の奴と一緒だったら、おかしいんだよ」
「まさか……そんなことが……」
やっと思い出したおかげで勝機が見えてきたと思ったら、またも崩されてしまった。
「まあ、俺の能力を死に土産に教えてやる。俺の能力は……」
ガルメラは結局、能力を言わなかった。なぜなら、それをランツァに見せつけたからだった。
瞬時に両手の爪が短くなり、腕を斬っている剣を強引に腕で弾き飛ばし、爪をランツァに向ける。
直後、ランツァの腹を五本の爪が深々と突き刺さる。
そう。再び爪が伸び、長くなったためだ。
そして、それが抜けた瞬間、赤い液体が大量に噴き出す。
「がはっ……」
「ランツァ!!」
キリエが反射的にランツァを助けようとする。
勝てないと悟ったが故に。
だが、ガルメラはキリエを近づけまいと、爪を向け、一気に伸ばす。
その長さは先ほどまでの倍はあった。
しかし、その爪が彼女を貫いたかというと……。
答えは否。
逆に、ガルメラの爪が折れてしまったのだ。彼女の体の強度に負けて。
「ばっ……!!」
(俺の爪で貫けないだと!?)
罠。
その隙をキリエは決して見逃さない。
一瞬で近づき、回し蹴りをお見舞いする。
そして、またもガルメラは派手に飛ばされた。
「大丈夫?」
キリエは倒れているランツァを抱えて、そう言った。
「大……丈夫……」
大丈夫にはどうしても見えなかった。だが、今すぐ死にそうにも見えなかった。
おそらく、心配させたくないだけだろうと、彼女は思った。
「はぁ……。じゃあ、さっさとあいつを捕まえて休憩しよう」
彼女はそう言い、遂にガルメラと闘うことになった。




