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2話 本能

部屋と言ってもはたからみればペットの小屋と大差はないのである。大きさの話ではないぞ?中には数個ばかりの毛布と冷たい照明の明かりだけしかなく一部屋に13人ほど押し込まれて飼われている。こんな感じの部屋がこの研究所?には300ほどあるらしい。飯?そりゃもちろんあるよ。毎日パンと水が出てくるが他の同居人に食われたらお終いだ。そんな日々を続けて飽きないのかって?確かにここには自由はないし娯楽も何もない。

だが全てを奪われた人間にとっては十分ではないか。しかも薬物まで頂けるんだ。毎日理性と人間を捨てているだけで生きることを許される!戦争に負けてよかった!薬物で喉が潰れた甲斐があったのだ!

あゝ何て惨めなのか!今もこうやって誰かに食われないか心配で寝ているふりをしている自分がとても悔しい。おまけに足首には耳付きだよ。また明日になれば今日なんてただの昨日でしかない。


腹が減った。まだ実験のための薬物が来ない。

腹が減った。部屋にいる自分と数人かは空腹の限界らしい。どうしたものか。空腹というものは簡単に言えばすごい。自分の理性が研ぎ澄まされている感覚になる。理性があるということはまだ自分が人間であることの証明かもしれない。定義の存在しない証明には興味はないが。しかし理性の覚醒状態も長くは続かない。さっきまでは流暢に心の中でどうとかこうとか呟いていたが今では{空腹}の文字しかない。

そういえば昨日人を食っていたやつを見ていたのを思い出した。

うまいのだろうか

こんなことは考えてはいけない。

久しぶりの肉だ

どんなに追い込まれていようとも私は耐え続けるとここの研究所に連行されているときも姉と約束したはずだ。

視界の端にまだ眠っている十代後半であろう女性を見つけた。自分と同じ空腹であろう仲間と目が合う。

久しぶりに意思の疎通ができた気がした。アイコンタクトではあったが内心うれしかった。

一人が女性の腹にかみついた。皮膚をかみちぎると血があふれあまりの痛さで女性も目が覚め泣き叫んでいる。私達も続いて噛みつく。私は足にかみついた。人は硬い、そして暴れる。鬱陶しい。足の肉を食いちぎるごとに血があふれて食べにくい。途中糸みたいなのがあったがあれが血管なのだろうか。ただ骨の近くの肉はうまかった。骨に歯が当たるたびに暴れて食べにくかったが。食事中には騒がないでほしい。礼儀というものを親や学校から学んでいないのだろうか。

上手かった。生肉だったが大丈夫だろう。

私が理性を取り戻す前に薬が来てくれることを祈ろう。後悔をしないためにも。自分自身に絶望しないためにも。

あの食人は空腹から来た本能だ。人は過去に何度もあった飢餓もこうして乗り越えてきただろう?

人は何かを考えて対応できる、なんてすばらしいことではないか!

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