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捨てられた令嬢は、嵐の魔力で自由を謳歌する  作者: たま


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1話 辺境の至宝

数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。

拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。

1話 辺境の至宝

父に捨てられた六歳のあの日、私が連れて行かれたのは「何もない田舎」ではなかった。

大陸最強の私兵団を抱え、魔物の闊歩する北域を統べる――辺境伯アイゼンガルド家。そこが母様の生家であり、私の新しい家だった。

「ケイト、見ていなさい。風は自由、水は変幻自在。お前の中には、その両方が眠っている」

祖父は厳格だったが、私を「役立たず」とは呼ばなかった。

魔力測定で判明したのは、希少な水と風の二重適性。

母様が静かに息を引き取った後、私はその悲しみを魔法の修練にぶつけた。辺境の猛吹雪を鎮め、荒野を癒やす。いつしか私は、領民から「辺境の小さな聖女」と呼ばれるようになっていた。

一方、父の元に残った兄・ディーンには、水と土の適性がある。

かつて泥遊びで、私に水の冠を作ってくれたあの優しい魔力。けれど、父の歪んだ英才教育がそれをどう変えたのか、私は知る由もなかった。


王都で凍てつく再会をする。

十二歳の春の事でした。

私は、辺境伯家の象徴である「銀狼」の紋章を刻んだ馬車で、王都の学園へと乗り込んだ。

辺境育ちを侮る中央貴族の視線を、纏った風の結界で涼やかに受け流す。

豪華絢爛な講堂。新入生の列に並ぶ私の前に、上級生の代表としてその男が現れた。

「……ディーン」

二歳年上の兄は、学園の最高権力者である生徒会長として君臨していた。

かつての柔和な面影は削ぎ落とされ、その瞳は彼が操る土魔法のように堅固で、水魔法を凍らせた氷のように冷徹だった。

私は一歩踏み出し、辺境伯家としての礼を執る。

「お久しぶりです、お兄様。ケイト・アイゼンガルド、ただいま着任いたしました」

あえて「父の姓」ではなく「母方の姓」を名乗った私を、ディーンは冷酷に射抜いた。

「アイゼンガルドの姓を盾にすれば、許されると思ったか。……不愉快だ。中央の土を汚すな」

彼が指先をわずかに動かす。

その瞬間、私の足元の石床が歪み、鋭い土の槍が突き出そうとした。生徒たちが悲鳴を上げる。

だが、私は動じない。

「――凪ぎなさい」

私が小さく呟くと同時に、周囲に不可視の風の刃が渦巻いた。

突き出した土の槍を粉々に粉砕し、砂塵さえも水魔法の霧で封じ込める。一歩も引かず、私は兄の氷のような瞳を見つめ返した。

「ご挨拶が激しいですね。ですがお兄様、今の私には……あなたの魔法、少しばかり『重すぎる』ようですわ」

ディーンの眉が、わずかに動いた。

驚きか、それとも嫌悪か。

「……ふん。小賢しい真似を。学園は実力主義だ。無能な身内など、私には必要ない」

彼は背を向け、翻ったマントが冷たい風を呼ぶ。

彼が操る氷(水+土)と、私が操る嵐(水+風)。

かつて一つの家族だった二人の魔力が、学園の空気を震わせた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

誤字脱字のご連絡ありがとうございます。

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