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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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207/228

随筆:ネットでの付き合い

 『ちょっときいて』がちょっと聞いてほしいことを書くコーナーだとしたら、今日は別に聞いてほしいことではないのだが、他に書くところもないのでここにでも書こうかと思う。


 俺は、ネットでの付き合いというものが嫌いだ。

 が、なにがそれほどに嫌いかという部分で、具体的な部分を語ることができなかった。それが今日、とあるやりとりのおかげで、その正体に少し気づくことができた。

 今から書くのは、そのやりとりへのあてつけではない。物を描く者として、感情を文章化できる状況にあるなら、どこかに記録しておきたいのだ。公開するような内容でもないが、メモ帳だとどこにいったか分からなくなるから、こういうところは便利である。


 昨今、インターネットはコミュニケーションツールとして、もはや現実での付き合いよりも主流となった。SNSと聞いて、どのツールにも触れていない人なんて、今やほとんどいないだろう。

 コロナ渦でさらにその機会は増え、仕事のスタイルも変わってきている。確証はもてないけど、インターネットの普及が、巡りめぐって結婚率……強いては出生率の低下にもつながっているんじゃないかなと思う。

 まぁそれを語り始めたら、それで一文章書けてしまうだろうが、今日はそういうことではないので置いておいて……。


 しかし、ネットの付き合いというのは、実際の付き合いと、似て非なるものだ。

 こういう話はあるところ、いじめとか体罰とか各種差別とかの問題と似るので、十把一絡げにしてはいけない話なのだが、傾向として、そういうケースが多いと、個人的には思う。

 そのことをずっと前から思っていた俺だったが、実際になにが違うかという点において……そして自分自身がどういう部分が嫌いかという点において……ずいぶんと長い間、漠然としていた。


 ちなみに、ネットの付き合いそれ自体を否定するつもりはない。

 人間と人間がやりとりをしていることには変わらないし、触れない、顔も知らない相手だとしても、想いの強さ、大きさは人間の等身大として伝わってくる。

 現に、もう長い間作家になることを目指し、いまだに何も実現できていない俺を支えてくれているのは、小説投稿サイトで知り合ったとある男のサポートであることで間違いない。

「俺がまだ、あきらめずに続けていられるのは、アナタがいるおかげかもしれないな……」と、つぶやいたこともあるくらい、俺自身、ネットの付き合いに支えられている。


 が、その上で、俺はネットの付き合いの希薄さが嫌いだ。

 決して希薄ではないのに、希薄に感じるところが嫌いなんだ。

 ネットは趣味が合う者を選り分けして付き合いが始まるから話が弾みやすい。たとえば親密さを五段階であらわすとすれば、二段階目に移行できる速度が、現実での付き合いよりも早い気がする。だから、単純な俺は親しくなったと"カンチガイ"する。

 一方で、ネットというのは勝手に関係を断ち切ることができる。そのコミュニケーションツールに顔を出さなくなれば、言葉を投げても返さなければ、簡単に相手をシャットアウトできる。

 現実よりも簡単に関係を操作できるし、その気軽さこそ、SNSの爆発的な普及に繋がったのだと思うから、悪いことばかりではないのだろう。

 でも俺はここが嫌い。


 ミナサマ、ネットの付き合いというものを心得ていらっしゃる。

 二段階に移行しやすいネットの付き合いでも、簡単に、そして一方的に関係を断ち切り、いなくなる。そのことに平然としているし、今時分、「それが当たり前」なんだよね。

 その程度の付き合いは吐いて捨てるほどできてしまうから、黙って消えることなど「当たり前」。

 ネットでの付き合いは、多少でも親しくなった人間が、さよならも言わずにさよならになるから嫌いだ。


 まぁ、俺なんざ癖のある人間だから、あるいは嫌われて敬遠されることも多々あるだろう。それならそれでも構わないのだが、でもさ、"ネットでの付き合い"ってそういうものじゃないんだよな?

 特に"嫌いだから"という理由によらなくても、現実なら必要な手続きを負わずに関係を断ち切ってゆくことは多々ある。

 そして、別に嫌悪して関係を断ち切ったわけでもない(あるいは断ち切ったつもりもない)から始末が悪い。

 たとえばこのサイトで、矢久にも"ファン"がいた。その"ファン"は消えた。

 でも、その人に聞けば、きっと「今も応援している」というだろう。言ってくれるだろう。

 こちらはそう言われれば、いつでも「ありがとう」と言う他はない。

 まったく……始末が悪い。


 まぁ行きつけのバーでの付き合いみたいなものなのかもしれんね。

 バーテンとしては、客が店にこなくなれば、どれほどに親しくなっても関係を継続することはできない。そういう意味では、現実の付き合いもネットも変わらないのだろう。

 でも、そういう付き合いをしない俺は、やはりネットでの付き合いが苦手だ。

 ネットでの付き合いは、まるで雲を追って掴むようで、嫌いだ。

 そういうことが、現実での付き合いより圧倒的に多いから……(以下略)。


「はぁ、なんて面倒な奴……」

 と思う人間と、俺は付き合いを持ちたくはない。

 ネット時代に逆行してるんだと思うけど、俺がしたい付き合いって、狭くてもいいから深い付き合いなんだ。

 人間として付き合うのなら、ちゃんと、さよならの時はさよならと言いあえる仲でありたい。


 偏屈親父の頑固でしかないけど、"義理と人情"って日本の美徳が希薄になった世の中で、そんな言葉を残してみる。

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