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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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ウクライナがんばれ、ではあるけれど。

 ドイツで、ロシア人が不当に差別されていることを不服として、ロシア人がデモを起こしたらしい。

 皆さん、これをどう思う?

 俺は、とんでもないことだと思う。どっちが?……世界が、だ。

 なぜ差別をする?そんなことをされるいわれは、そのロシア人たちにはない。


 確かに今、ロシアはウクライナを"不当に"攻めている。

 俺はそれをアンフェアだと主張し、ウクライナが一つの不服もない条件でこの戦争が終結することを祈っている。いやマジで。俺自身は部外者だが、ロシアのこの行いは、決して許されるべきではないと、主張してやまない。

 ……しかしだ。しかし。

 それと、一般のロシア人が第三国で嫌がらせを受けることはまた別の次元の話だ。

 前項でも述べた通り、ロシアとロシア人は違う。例えば日本という国に不備があってイギリスに損害与えてしまった時、アナタ個人は「イギリス人ゴメンナサイ。俺のことを殴っても結構です」といえるのか?


 しかし、一般的にはこういう考えが当たり前に跋扈していることが俺には理解できない。

 例えば韓国。日本に敵対的な政策をとりがちなこの国をよく思わない日本人は多い。

 しかし、だからとてアナタと顔を合わせる韓国人すべてが日本大嫌いとは限らないのだ。

 さらに例えば、サッカーはイギリス発祥だが、イギリスが嫌いになったらサッカーも嫌いにならなきゃ駄目か?逆に、サッカーが好きな人間はみなイギリスが好きでなければならないのか?お好み焼きが好きなら、大阪人に「ありがとう」を言わなきゃ駄目か?

 ……すべて、別次元の話じゃないか。これはロシアとロシア人にだって言えることなのだ。


 昔、俺は『破戒の海』という小説を描いた。以下はその登場人物、カツラという男が吐いた言葉だ。

「親が偉ければ、その子は偉いのか? 親が取るに足らない小者だったら、子も小者か? ……君たちの中には素性に恵まれない者たちもたくさんいるな。だが、素性が卑しければ君たちも卑しいのか? 『弓槻』の船員として、誇りを持って生きているだろう。人間は血で判断してはいけない。目で判断するものだ。彼女自身の目が暗く濁っているならそれを軽蔑すればいいが、ナティオラスの孫娘というだけで彼女を罪人にするのは誤りだ」

 ……こういうことではないのか。内容を知らん人に是非を問うことはできないかもしれないが、この男が部下たちに吐いた考え方に大きな誤りがあるなら是非聞かせてほしい。

 正しいなら……世界はどうして、そのように回っていけないのだ。


 今回、ロシアがやっていることはアンフェアだ。これは間違いない。

 どうアンフェアかって、ロシアがウクライナを一方的に攻め、ウクライナの一般民が一方的に殺されてることをもって俺はそう主張しているが、ならば第三国でロシア人に嫌がらせをしてもいいものか。

「ウクライナの一般民が傷ついているのだ。お前らが別の地で不当に傷つくのも仕方ないだろう」とでもいうつもりなのか。

 それは本当に愚かなことだと思う。

 なぜなら、今のロシアとウクライナのアンフェアな状態を、わざわざフェアな状態に近づけてしまう行為だし、それはつまり、ロシアは鬼畜だと鼻をつまみながら、内実は同じレベルに自分を落としていることと同義じゃないか。

 それを言い始めたら、ロシアへの輸出規制はロシア国内のロシア国民を傷つける行為だという者もいるだろう。しかしそれは国と国が行う行為であり、個人が個人を攻撃することとは次元が違うことだ。

 このアンフェアな状況を終わらせるための行為と、非建設的な誹謗中傷を混同してはならない。


 都合がいいか?……一方の側面ではそういわれても仕方ないとは思う。正直、議論を突き詰めていけば、俺も対極の意見を持つ人間を論破できる自信はない。だって、どう転んだって誰かが悲惨な状況になってることには変わりないのだから。

 しかし、なににしてもロシア人一人一人を嫌い、すべてを排除することは、間違っていると主張したい。

 カツラが言ったとおり、目を見て判断してみろ。人間というものは、民族という途方もないくくりで軽率に軽蔑や差別をするべきものじゃない。


 わたしは今も変わらず、ウクライナを応援している。しかし、だからとて、ロシア民族がすべて息絶えてほしいという話ではない。

 こんな状況だからこそ、程度の低い、軽率な行動は避けるべきだと思うが、どうか。

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