ウクライナがんばれ6
ウクライナ情勢を語ってると、たまにロシアびいきの人もいる。
不思議なことに、ロシアびいきな人に限って、一段上からモノを見ている言い方をする。
いわく、
『日本では~~のように語られているが、真実はそうではない。実は正義はロシア側にあり、ゼレンスキーは実は~~で……』
と、誇らしげに語り、「あなた方も真実を知るべきだ。日本の報道がすべてだとは思わないほうがいい」と、ふわりと上から包み込むような警告をしてくる。
そういう人間と幾人か話したが、共通して、真実を知っているのは自分だけだと思っているような口ぶりになるのはなぜなのだろう。
その昔、日本は、白人社会と中国からしてみれば侵略戦争を起こした。
しかし日本には日本の正義があった。いわば、アジアの独立のための闘争だったし、実際に、日本が仕掛け、滅亡しかけるまで追い込まれた戦争を経て、世界の白人社会は帝国主義を改めなくてはならなくなった。大昔のコラムに書いたが、今でこそずいぶん偉そうに持論を展開する中国だが、彼らが今、欧米と対等に話ができるのはどういう歴史的事実があったからなのか。肝に銘じるべきだ。
しかし、侵略戦争と定義した方から見れば、日本は悪の枢軸だったわけだ。
欧米列強は日本を悪し様にいい続け、時に情報を捏造し、戦争が終わっても、日本がどれだけ狂気と過ちに満ちていたかを世界中に喧伝した。
たとえ日本に一分の正義があろうが、同情的な情報を流すわけにはいかなかった。人が人を殺すのだ。それは本来なら究極に大それたことであり、よほどのモチベーションがいることには間違いない。
だから、『当方には絶対の正義がある』ことを示さなければならないし、それが、少なくともすべての味方に浸透しなければならない。
戦時の情報などというものは、そういうものなのだろう。
今のロシアを昔の日本(枢軸国側)とするならば、今の日本は連合国側にいることになる。
当然、欧米のプロパガンダが情報として入ってくるし、それらの情報がウクライナ側を慮るものばかりになるのは、ある意味で当然なことだ。
そういう情報に対して、「真実はそこにはない」と言われれば、なるほど情報は偏っているのも間違いない。
だけど、俺はね、それで真実が違ったとしても、たとえロシアに正義があるとしても、今回、そんなことは瑣末なことだと思っている。
事実として、ロシアが一方的にウクライナを攻め、民間人に死傷者が出ていることは間違いないのだ。それだけではない。
民間人に死傷者が出ているのは、ウクライナ側だけなのである。そのアンフェアが、何よりもの問題ではないのか。
核をちらつかせ、自分の家は決して痛い目を見ないように周囲を威嚇しながら、"弱いものいじめ"をしている大国ロシアの威信ってやつが問題なのだ。
プーチンは悪者、ゼレンスキーは悪者……それぞれにそう言うだろう。前回も述べたように戦争というものは子供の屁理屈がそのまま適用できるようだから、どちらが真実かなど、分かったものではない。
でもな。それでプーチンとゼレンスキーが殴りあうなら分かる。しかし、実際に一方的に殴っているのはロシアのほうだけであり、昨日までこういう駄文を書いていた、その喧嘩とはなんら関係のない部外者が死んでいるという、、その部分が問題なのだ。
ここで、真実、正義を語る人間、特にそれを持って鬼の首を取ったかのように鼻を高くしている部外者は、この部分についてどう語るつもりか。
まさか、
『日本で語られていることはすべて嘘で、実はウクライナ人に被害者などはいない』とでもいうか。
こんなことを言い出せば、『侵略戦争を起こした日本の人間が、偉そうなことをいえるのか』という話にもなるだろう。俺はちょっと違うと思うが、違わない側面もあるとも思う。だから、これは俺が戦争世代でないにしても、言う人はいつまでも言うだろうと思われる。
だから、ロシアは負けたほうがいいのだ。クリミア半島ぶんどったり、今回も制圧したところは、満州国みたいな親ロシア派の政権を立てたりするんだろう。そんな昔の日本のマネゴトをするロシアは、一度負けることによって目覚めた方がいい。
今の日本人はヘイワボケで申し訳ないが、アナタ方もちょっとヘイワにボケた方がいい。
北方領土で軍事演習なんてする気もおきなくなるだろうから。偉そうに正義を語ることもなくなるだろうから。
え?アメリカ?……うん。アメリカもそうですね。
俺は昔、『破戒の海』という作品を描いた。
この物語のテーマは『正義とは。"正しい"とは』いったいなんなのかと問いかける内容だった。正義のために、世界が語る"正しさ"のために、普通に生きたいだけの少女が、世界を敵に回す話だった。
この少女に罪があるとすれば、世界の正義に合致しないということだけだった。
『正義』って何さ。
真実が立場によって隠されていて、正義のあり方がうやむやになっている。
それが、いったい何なのさ。ただの少女がそんなお題目のために、何ゆえここまで苦しまなければならないのさ。
……って思うんだよ……。




