住みたい街
矢久の住む街は、住みたい街NO.1に選ばれた。
去年かおととしだから、今年もそうなのか分からない。とりあえず選ばれたことを誇らしげに喧伝し、そのおかげか、現在街は建設ラッシュ、な気がする。
古い街であり、古くからいる人間は、この街がまるで滝廉太郎『荒城の月』のような栄枯盛衰の歴史をたどってきていることを知っている。
~むかしの光 いまいずこ~
……嗚呼、わびさびの世界だ。(笑)
ついでに、このたび駅前は、大都市にありがちがな二層構造となった。あの、アレね。二階を人が通って一階を車が通ってみたいな感じ。
駅から伸びる歩行者用デッキ、そのデッキを降りることなくそのまま居住区に入れる今年完成のマンションは、たとえ下界が大雨でも一つも濡れることなく入ることができる。
わぁ素敵。これで東京の駅並みにおしゃれだね!
……と言いたいところだが、駅ビルや鉄道会社と折り合いがつかなかったのか、その歩行者デッキは駅と直通しているわけではなく、正確に言えば駅ビルとさえつながってない。
駅からデッキを利用するなら、一度二階にあるホームから一階に降りて、さらに一度駅を出て専用のエスカレーターに乗らなければならない。
普通はそういう場所はおしゃれな店に繋がっていそうなものだが、デッキにつながっているのはさっき言ったマンションしかない。
おかげで、高い金払ってマンション購入した人以外はそのデッキ自体が必要ないという謎仕様。
嗚呼形だけ。言わばただの巨大な歩道橋。
景観だけは都会っぽい"モドキ"な構造物が、駅出口の新しいシンボルとなった。……なってしまった。
そういう、なんとなく垢抜けない街……。
昔「自分の街紹介コンテスト」みたいなものに参加した時にも散々書き連ねてしまったが、とにかくいつもどこかザンネンな街が、矢久の住む街である。
ついでにイナカ行政丸出しで、既得権益にすがる人間の腰が非常に重い。……まぁ、子育て支援は非常に充実していることは書いておかないとフェアじゃないかな。
そんな街が住みたい街No.1だそうだ。……え、待てよ。
いったいそれ、誰が決めたんだ……?
……いや、だってね。少なくとも市民である私に、何らかのアンケートが回ってきたためしはない。それが無作為に選ばれた一万人くらいを対象にアンケートが行われたとしても、それってアレか。
「今の自分の街に満足していますか」ランキングが一位だったということか。
いやいや、"住みたい街"なのだから、外部アンケートなんだろうか。
例えば東京駅からの距離や、その距離に対する家賃の割合、さっき言った子育て支援の内容、などを、他の街の誰かが見て、
「この街に住みたい!!」
と、投票したものなのだろうか。
いやいや、住んでない人間にこの街の何が分かるというのだ。
この、謎の基準で選ばれた全国一位のおかげで、現在やたら都市開発が進められているようだが、区画整理もまともにできない古い街に建ち並ぶ高層マンション郡と旧メインストリートのシャッター商店街を見るにつけ、
「本当に、なにを見比べて日本一なんだろう」
と思う。
逆に言えば、日本には、これ以上の街は存在しないということなのか。
いやもう、だとしたら、国内旅行行く気も削がれる悲惨な事実だぞそれ。
まぁ、とはいえ、矢久はこの街の守護神(笑)(←同エッセイ、『見えないものを信じる強さ』を参照すれば分かるかな……不思議なご縁でこの街にいる)なので、この街を離れることはないし、この街が気に入っている。大嫌いな部分もあるけど、やはりこの街が一番いい。
日本一住みたい街ね……。ふーん……。




