零細事業者の叫び
「うちは普段の取引相手しか対象にしておりません」
……これで三件目だ。新たな打診の意欲が削がれる。
これが新規開拓の営業だというのなら「たかが三件でなにを甘えたことを言ってるんだ」ということになるだろうが、私が行っているのは、国が野放図に行うコロナ対策のせいで、事業が明日をも知れないほどに打撃を受けたことに対する救済措置の申請だ。
その名も『中小法人・個人事業者のための一時支援金。緊急事態宣言の影響緩和』。去年やおととしの収入に対して1~3月の収入が50%を割り込んだ時、対象となる。
ただし、それを受け取るには非常に煩雑な手続きがいる。特に不正受給を防ぐためか知らないが、今回手続きの目玉として金融機関や商工会、税理士などの「登録確認機関」から確定申告書や売り上げ台帳などの事前確認を受けるよう申請者に義務付けしている。
これを国(中小企業庁)は「一件当たり1000円くらいでやってもらえるだろう」と試算し、彼ら(金融機関や商工会、税理士など)に協力を依頼したらしい。
ところが実際、普段1000円など便所紙くらいしか使ってない彼らがそんな額で動くはずもなく、確認機関として登録したにもかかわらず、
「自分のところの顧客が困った時のために登録し、アドバイスできる体制を整えただけで、一般の方は対象としておりません」
と、当たり前のように突っぱねるのが現状だ。
なかには"手数料"として、数万円をぼったくる事務所もあるそうだから、ただ断るところはまだ良心があるんじゃないかと思ってしまう。実際は思いっきり錯覚であり、確認機関として登録したのなら仕事はすべきだと思うのだが。
なお、商工会という公共機関ですら取引相手しか対象にしないらしい。
給付条件が整っていても、そんなわけで支援していただける目処が立ちそうにもない。
……それは、アタリマエのことですか?
一般の人たち、この支援金を受け取らない人たちにしてみれば、
「当たり前だろ。お前だけ得しようとするんじゃない」
と思うかもしれないが、事業で生活を立ててきた者にとって、今回のコロナ政策の影響は、コロナ中、緊急事態宣言中にとどまらない。
顧客が戻ってくる保証などは一つもないのだ。
「それは努力次第だ」などと、対岸から涼しい顔をして言っている人間たちに、こんな支援の申請に煩わされなければならない事業者の気持ちなどは分かるまい。
たとえ、その数十万を受け取らなければ、今すぐ死ぬわけでなくとも、とりあえずの直近数ヶ月分の運転資金を確保できるなら、と考えざるを得ない状況にある。
ところがふたを開けてみればこれだ。国は支援する気があるのか疑わしい。
「面倒だからやめておこう」と言う心理を誘発する形をわざととっているのかとすら思える。
そもそも"支援"なのだ。そのために多大な時間と手間を費やされたのでは"支援"にならない。
今回、いけないのは事前確認機関なのか。事前確認機関などという阿呆な仕組みが慈善事業をしてくれると試算した中小企業庁なのか。
不正受給をことさらに心配するが、実際、これらのシステムを正確に理解できるのも、それを善用にせよ悪用にせよ、円滑に利用できるのも、プロがついて指導できる立場の人間(事業者)だけなのだ。逆に言えば、プロがついていればちょろまかすことは簡単だということでもある。
そんな「プロ以外お断り」のシステムを作り、これを持って「手厚い支援」などと思っているのなら笑わせる。
本当に困っているのは、こういう時に冷や飯しか食えない素人事業者たちなのに。
取引機関すらないほどギリギリでやってるんだから、打撃が深刻となるのに……。
国を相手に手続きをすると時間ばっかり煩わされてまったく実入りがないのは分かってるから実際、今回の支援だって期待するのはやめようと考えている。
だけど、これをもって国に
「私たちはコロナ渦であえぐ事業者にも手厚く支援をしました」
などと言われるのはシャクでしかない。
その税金でメシ食ってる政治家たちにドヤ顔されるのは、シャクでしかない。
つい、こんな、隙が多そうなことを記事にしてしまいたいくらい、国がやってることが如何にピント外れかを訴えておきたい。




